-68- ドンチャン騒ぎ
先々に心配ごとがあり侘しいときはドンチャン騒ぎをするにかぎる。^^ ドンチャン騒ぎをすることで心の憂さが晴れ、忘れられる・・と、まあ話はこうなる。^^
下木はとある町役場の係長として、日々、勤務に励んでいた。取り分けて部長の田織から「励めよっ!」と言われた訳ではない。^^
年が明けた初春、人事異動を前に内示が始まっていた。下木は内心で、『俺もそろそろ管理職だな…』と誰もいないトイレの鏡でニンマリと哂う自分の姿を見ながら前髪を櫛で撫でつけた。だが、今か今か…と待っても、いっこう内示がない。他の同僚職員に内示が下りた噂話を耳にするにつけ、少しづつ下木は侘しい気分になっていった。
「係長、課長がお呼びです…」
部下の内山が下木のデスクに近づき、小さく呟いた。木下は、来たかっ! と小躍りして席を立った。
「ああ、下木君、すまんが明日から、出張でね…。いない間、何かあったら頼むよ」
「はい…」
なんだ、そんなことか…と侘しさを復活させ、下木はデスクへと戻った。
結局、内示は出ず、下木は来年度も係長の末席を汚すことになった。いや、ドンチャン騒ぎで憂さを晴らす日々の本人はそう思っていた。ところが、である。三月の月初め、内示された職員がバタバタし始める人事異動発令の直前、課長が息を切らせて下木のデスクに走ってきた。
「木下君、すまん、すまんっ!! 妻にブランドもののネックレスをせがまれてね。金の算段で頭が一杯になっててさ。内示伝えるのを、うっかり忘れてたよっ!」
かくして下木は、晴れて管理職の課長補佐へと昇格したのである。下木の侘しい気分が吹っ飛んだのは申すまでもない。
下木さん、よかったですねっ! お祝いのドンチャン騒ぎをっ!^^
完




