-62- 中止
予期していない場合、中止になれば唖然とする。そのコトに期待を寄せていればいるほど、その感は高まる。高まったあと、しばらくすると侘しい気持が、来なくてもいいのにコンチワッ! と心の隙間をノックする。そうなれば、唖然が呆然自失となる。むろん、そのコトに期待している場合に限るのだが…。
梅花は相思相愛の婚約者との結婚前夜、眠れないひと時を結婚式場近くのホテルで過ごしていた。すでに深夜の二時を回ったというのに全然、寝つけなかった。梅花はフロントへ内線電話した。
『はい、フロントでございますが…』
「ああ、318号室の梅花だけど眠れないんだ。メーカーはどこのでもいいからさ、ウイスキーのボトルを一本頼むよ…」
『分かりました。W・H・I・S・K・YとW・H・I・S・K・E・Yの2種類がございますが、どちらを…』
「寝られりゃいいんだからさっ、どっちでもいいよっ!!」
『分かりました…。2種類ともお部屋へお持ち致しますので、お好きな方を選んでくださいまし…』
「はいはいっ! 早くしてくれよっ!」
そうこうして、ボーイが運んできたウイスキーのボトルを適当に選び、梅花はようやく深い眠りに落ちた。ところがである。次の日の早朝、携帯が喧しく梅花を叩き起こした。
「はい… …なんなのっ? … それで… ええっ!!」
電話は母親からだで、今日、結婚するはずの婚約者が警察に捕まったという知らせだった。梅花の婚約者は、こともあろうに指名手配されていた前科十数犯の結婚詐欺師だったのである。当然ながら結婚式は中止となり、梅花はぅぅぅ…と侘しい涙を流さずにはおれなかった。
梅花さん、またいい女性が現れますよ。そうショボくならず、侘しい涙を捨てて明るく生きましょう!^^
完




