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-51- 一線

 一線を越えるか越えないか? で、結果は自ずと変わる。結果が良ければ越えてよかった…と、ニンマリ(わら)えるが、悪ければ(わび)しい思いに打ち沈むことになる。

 ここは戦国時代のとある陣中である。

「…ならば、秀次。そち一手の差配にて見事、家康の陣を攻め崩してみいっ! 攻め崩したならば、褒めてとらす。…ただし、負け(いくさ)の申し開きは聞かぬゆえにのう、心せいっ!」

 羽柴筑前守秀吉は膝まづく甥の秀次を見下し、珍しく声を荒げながら出陣を許した。

「ははっ! 必ずやご期待に沿うてみせまするっ!」

 そう言い残すと、羽柴秀次は陣をあとにした。一線を越え、出撃したのである。しかし、すでにその動きは徳川軍の知るところで、秀次陣の森長可、池田勝入などの武将は大敗を喫し、討ち取られたのだった。一線を越えて出撃したまではいいが、味方の大敗に侘しい思いで秀次は撤収する他はなかった。

『さて、どうしたものか…』

 腹を切らず、怒られもせずに済むいい手立ては…? と秀次は一人、思い悩むのであった。

 まあ、昔も今も、一線を越えた結果が吉と出るケースは少ないようです。皆さん、くれぐれも慎重な行動をっ!^^


                   完

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