-48- 楽しみ
楽しみにしていたコトが何らかの都合でダメになったときほど侘しいものはない。それは、心のどこかでそのコトに密かな期待をしているからだ。その楽しみには、取るに足らない小さなコトから大きなコトまで千差万別である。
芋山は近々、届くであろう故郷からの小荷物を楽しみにしていた。毎年、秋になると収穫されたリンゴ箱が送られてきたからだ。だが、それから二週間過ぎても小荷物は届かなかった。心のどこかで当てにしている自分に思わず哂ったが、やはりどこか気になった。芋山は故郷の実家に電話をかけていた。
『掘男かい? 今年は生憎、不作でほとんど採れねがっただ。出荷も少すになってまってね』
「なんだ、そうだったの…。毎年、楽すみにすてあったはんでな…」
『そうがい。そら、すまねがったね。来年は多めに送るはんでね』
「そいだば、元気でな。皆によろすく。まだ盆さ帰るはんでな」
『分がった。おめもな…』
母親からの電話は切れた。芋山の心に、なぜか侘しさが残った。
楽しみにしていた食べ物が食べられないと、なぜか侘しい気分になりますよね。^^
完




