-45- スケジュール
ああして、…で、こうして…と、スケジュールを考えておくのはいいことです。しかし、ああして…こうして…のつもりが、ああも出来ず…こうも出来ず…となれば、侘しい憂さに駆られることになります。世の中は自分の都合どおりには動かないのです。大河ドラマじゃありませんが、そのときどうするっ! ということになりますが、結論を言えば、そこはそれ、どうもしないのがいいようだです。^^ 世の中の流れをスィ~~っと躱せばいいだけの話なんです。皆さんも意固地にならず、スィ~~っと躱しながら生きていきましょう。楽ですよっ!^^
今日も壺入は、勤めの帰りにとあるスナックで憂さを晴らしていた。どういう訳か、この店に入った途端、勤めの侘しい憂さがスゥ~~っと消え去るのだった。その訳がどうしてか、壺入には分からなかった。
「壺入さん、今日もお決まりの時間ですね…」
店のマスターがシェーカーを振りながら、ニンマリした顔で囁くように言った。
「ああ、まあそうだね…」
「今年もそろそろ異動の季節ですが…」
「ああ、まあそうだね…」
壺入は同じ言葉を繰り返した。
「そろそろ、ですよ…」
「なにがっ?」
「スケジュール…」
マスターは哂いながらショット・グラスにシェーカーのジン・ライムを注ぎ入れた。そして、軽く指で上を指した。壺入にはマスターの上に向けた指が出世を意味することが、なぜかよく分かった。課長の上は次長である。しばらく飲んだあと、ほろ酔い気分で店を出た壺入に侘しい心は消え去っていた。
その二日後、人事異動の内示が伝えられた。めでたく壺入は、とある町役場の次長に昇格したのだった。
よかった、よかった!^^
完




