-43- 時の流れ
老いると、時の流れの速さに侘しい気分にさせられる。今し方、朝だったものが、気づけばもう昼前になっていて、慌てながら中食を摂りながら柱時計を見れば、すでに二時過ぎなのである。この時点で、いったい今日は何をしたんだ…と、また侘しい気分に陥るのである。
とある町役場に勤める課長補佐の蟷螂は、ふとパソコン画面の右下隅に表示された時計を見た。時間は昼前の11:40を示していた。
『チェッ! もう、こんな時間か…。今日はどうも仕事が捗らんなっ!!』
仕事の進捗の遅れを時間のせいにして、蟷螂は大欠伸を一つ打った。そこへ部長室から戻った課長の蟋蟀が現れた。
「ははは…蟷螂君、余裕だね。もう提出分をやってしまったのか。君は大したもんだ、次の異動で課長昇進も夢じゃないぞっ!」
そう言いながら、蟋蟀は蟷螂の肩を軽く片手で撫でた。
「はあ、有難うございます…」
そうは言ったものの、蟷螂の心中は穏やかではなかった。提出分の予算要求書付表が少しも出来ていなかったのである。去年並みに…と考えていたひと月前の考えが、社会情勢の変化により大幅に変更を余儀なくさせられたからだった。
『もう、どうなとなれだ…』
蟷螂がそう思ったとき、妙なもので新発想が大きく膨らみ始めたのである。そして、いつの間にか予算要求書付表は出来上がっていた。その間、わずかに数十分だった。
年老いても、時間の流れの速さに、そう侘しい思いをする必要はなさそうです。^^
完




