-34- 酒
酒は百薬の長とも言われ、飲み過ぎなければ疲れを取り、健康増進に貢献する。まあ、そうは言うものの、飲み過ぎれば依存症になるから、飲み方によって身体を害する毒ともなり、考えものだ。医学的に考えれば、脳神経を一時的に麻痺させることで、人を陽気にさせたり侘しい思いにさせ、泣かせたりする曲者となる。後者の侘しい思いにさせて泣かせる、所謂泣き上戸の主人公が今日のお話の話題である。^^
月鉾は一人の女性に惚れていた。ところが、その思いを相手の女性にどうしても告白することが出来ない。どうすれば…と、思うにつけ、その侘しい想いは酒へと月鉾を誘った。
「…月鉾さん、もうその辺になさったらいかがです?」
カウンターで飲んでは泣き、泣いては飲む月鉾を、見かねた店主が鯔背な白着物に白の襷姿で酒の肴にする魚を調理しながら月鉾をチラ見し、止めようと声をかけた。
「ぅぅぅ…どうしたらいいんです、私ゃ?」
「何を、です?」
「い、いや、も、もういい。もういいんです、ぅぅぅ…」
「はあ…」
店主は月鉾が言う意味が分からず、まったく要領を得ない。
「私でよけりゃ、相談に乗りますが…」
「い、いや、いいんです。泣かせて下さい、ぅぅぅ…」
それを聞いた店主は、この人、泣き上戸だな、可哀そうに…と侘しく思った。
酒は飲む人を侘しい思いにするだけでなく、身近にいる人も侘しい思いにさせるのです。^^
完




