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-21- 秋

 秋が深まれば、なんとなく(なぜ)しい気分になるのは何故だろう? 同じような陽気なのに春の場合は、どこかホッコリする楽しさが心の中に起こるのである。夏の場合は、そんな悠長なことを感じている暇はなく、朝から強まる熱気にフゥ~フゥ~…とイラついて水をグビグビ飲むようなことになり、侘しさなどという感情は据え置かれるのである。冬は冬で夏とは違う強まる寒さに打ち震えながら、『今日も寒いなぁ~。どれ、ひと風呂浴びるか…』などと身体の暖を思うぐらいで、侘しい気分より体の寒さを思うくらいのことになる。結局、夏の暑さも去り、いい風が漫ろ流れる秋が、侘しい気分を誘う最大の季節だということになるだろう。

 横川はチリリ~~ン! と鳴る風鈴の音を聴きながら風呂上がりのビールを飲んでいた。企業間の競合もあるから、どこのメーカーかは、敢えて記さない。^^ 心地よい夕暮れの風が風呂上がりの肌を冷やして通り過ぎる。なんとも言えないいい風情だ。すると、妙なもので、横川の心に、なんとも説明がつかない侘しさが、『コンチワッ!』と、突然やってきた。

「…」

 木志田としては訪れた気分を無碍に無視するのも憚られた。そこでその侘しい気分に付き合うことにした。

『人事では先を越されましたね…』

 侘しい気分は春の辞令で木志田が日向より先に支店長になった人事を思い出させた。

「それが、どうしたっ!」

 誰もいないのに木志田はビールをグビッ! と、ひと口飲み、独り言ちた。そして木志田は、『俺もいずれは支店長になってみせるぞっ!』と決意し、今日の夕飯は何だろう…と侘しい気分を遠ざける反撃の狼煙(のろし)を挙げた。すると、いつの間にか侘しい気分は居心地が悪くなり遠ざかっていた。

 侘しいときは夕飯の料理を考えればいいようです。^^


                   完

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