-15- 懐(ふところ)具合
-15- 懐具合
懐具合を心配しながら買い物するというのは実に侘しい。逆に、懐具合にゆとりがあれば買い物する楽しみが生じ、両者の間にはプラスマイナスによる倍以上の違いが起きる。侘しい気分と楽しい気分とでは大差があるということだ。
高桑は、とあるデパートで買い物をしていた。高桑の懐具合はビミョ~な額で、ゆとりがある訳でもなく、かといって心配するほどでもない・・という手持ち額だったのである。高桑が欲しかった物は自分に合うネクタイだった。
「これなんかお似合いだと思いますが…」
美人の女性にそう言われれば、気分が悪かろうはずがない。
「そうかい…」
ニヤけて差し出されたネクタイを手に取ると、価格が¥6,500と出ていた。高桑の目利きで踏んだ価格は¥3,000がいいところだった。高桑は思わず、おいっ! 半値だろっ! と言いそうになり、慌てて口を噤んで侘しい気分になった。
「ははは…僕には派手過ぎるよ、君」
「そうでございますか…。では、これなどは?」
どれどれ…と高桑が手に取ると、価格は¥7,500だった。高桑の懐具合とすれば、買ったあと、レストランで食事をしたかったから、ゆとりはなかった。買うとしても、せいぜい¥3,000のネクタイがいいところで、とてもそれ以上は無理に思えた。この年で…と、高桑はまた侘しくなった。価格の心配をしないで買い物がしたい…と刹那、高桑は思った。
「あっ! アレがいいよっ!」
バーゲン特価¥2,000の展示棚の一本を高桑は指さした。
「アチラでございますか…。売れ残り品でございますよ」
女店員は暗い顔でトーンを下げた。
「いや、アレがいい! アレにするよっ!」
「そうですか…」
女店員は納得し切れない様子で展示棚のネクタイを手にし、レジ台前のテブルで包装し始めた。お客様がそう言うんだったら、まあ仕方ないわ…という表情に高桑には見て取れた。こうして高桑は侘しい買い物を終えた。
懐具合を気にせず買い物できる、侘しい思いにならない生活がしてみたいものですよね。^^
完




