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-14- 片思い

 銀座にある高級バー乙姫のホステス、千代に惚れ込んだ浦島は、今日も又、亀ではなくお抱え運転手が運転する高級外車の送り迎えで銀座へと足を運んでいた。財界では、浦島ホールディングスと聞けば、競合相手がその取引から必ず撤退するという大財閥である。そこの三代目の浦島は、次の人事で副社長に昇格しようという矢先だった。将来は浦島ホールディングスの総帥になる人物と誰もが見ていたが、当の浦島も内心ではそう自負していたから、どうしても行動が上目線に終始した。その浦島が入れ込んだ千代は、浦島をただの上客としか見ていなかったから、これはもう完全に浦島の片思いと言っても過言ではなかった。

「部長さん、今日も来て下さったの…」

 美人ホステスに色目と猫声でニャ~ニャ~と(ささや)かれれば、(ほだ)されない方が(おか)しいというものである。浦島もその例外ではなかった。

「ああ、君がいるなら一年中でも来るよ。どうだい、来週あたり熱海で富士を眺めるってのは…」

「あら嬉しいっ! でも生憎(あいにく)、週末から海外旅行なの…」

 ()れない返事に、浦島は思わず(わび)しい思いにさせられた。こうして、浦島は今宵もまた、美人の千代をチラ見しながら侘しい片思いのグラスを傾けるのであった。

 実に侘しいお話ですよねぇ~。浦島さん、玉手箱は開けない方がいいですよ。^^


                   完

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