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遺伝子(DNA)に恋して  作者: エルミ田次(Hermitage)
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私の立ち位置

携えてきたケーキを二人で食べながら、ティーバッグの紅茶を飲み、陽子さんと話しをする。


昨晩の別れ話とはなんだったのか?

ケンカが原因なら、一時的な感情ではないのかな?

息子の(元)彼女なのでと我がに接しているような気持ちにもなる。


陽子さんは「わたしが悪いんです。」と言いながら、情けなさそうに笑うけれど、口元以外は、全部泣いているように見える。


「じつはお父さん・・」

と言われたものの、息子との交際をやめるのなら「お父さん」と呼ばれることにも、なにかが引っかかるようだ。

むしろ、年は離れているけれども、友人のような思いで、話しを聞いてあげたいが。


「そうだね。ちょっとだけ、お父さんと呼ばれるのは、今は気が引けるかな。」

「じゃぁ、なんて呼んだらいいです?」

彼女は素直に聞いてくれる。


「実際、お父さんくらいの年だから、難しいかもしれないけれど、お互いに名前で呼びあって、話しをするのはどうだろう。」


「わかりました。」


そしてうつむき、小さな声で、「祐一さん。」

「はい。」


私も緊張したのだろうか、親に名前を呼ばれたみたいな返事をしてしまった。


私たちの話しはゆっくりと進んでいく。夕食は宅配をオーダーして、言葉としては不謹慎だが、良くも悪くも、話しを楽しむことにする。

本来は、私は珈琲が好きなので、ちょっとだけ待っていてと言って、二人分の珈琲を淹れることにした。


付き合いのある料理屋の店主の話しでは、珈琲には軟水が良いというが、あいにく浄水器の水しかない。

豆は、すこし浅めの焙煎のイルガチェフェ。

私と同世代の友達であるご婦人のお薦めで、上手うまく淹れると、軽やかな酸味とフローラルな香りが楽しめる。

産地はエチオピアで、品種はモカに分類されるようだが、最近の珈琲豆の品種やブランドの分け方の細かさには、理解がついていけずにいる。


昔は、「ブラジルサントス」とか「モカマタリ」とか「コロンビア」「キリマンジャロ」「ブルーマウンテン」などと、わりとシンプルだった。

仲間内でも「平均的だが、五味のバランスが良いサントスが、ほくは好きだな。」などと、味の好みのことなど、分かりやすい話題がおもだった。


などと、一人暮らしからの癖か、誰と話せるでもない内容など考えたりしながら、500ccくらいのサーバーに4杯分程の珈琲を淹れる。


「お待たせしました。」

控えめな趣味の範疇で数種だけ買い集めたウエッジウッドのカップで提供する。


「あの。祐一さん。」

すこし間があって、「なんだか気恥ずかしいですね。お名前で呼ぶのって。」


「いいんですよ。陽子さん。」

なにも急がない、昨日の今日で、彼女らの交際がどのように変化するのかはわからない。

別れた彼氏の父親であっても、失恋の狭間はざまに、新しい相談相手か、ちょっと年上の友人が出来たと思えば良いのではと思う。

わたくしの家でありながら、わたくしの座る位置をはかりながら。

(正しい日本語としては「立ち位置」なのだけど)


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