罠
何処からとも無く飛んできたナイフをレグルスと数名の仲間達は叩き落した。
「全員警戒態勢!」
レグルスの言葉に一糸乱れぬ動きで誘拐犯を取り囲むように円陣を組んだ。その様子をみたフェンリーとエルミアも仲間に呼びかけ、周囲を警戒した。
エルミアとフェンリーはお互いに目でコンタクトを取り周囲を警戒しつつも脳内で思案した。
『この動きはなんだ?女神の勇者であるレグルスならわかるが、仲間達の動きも素早かった』
『どういう事なの?この流れるような動き、まるで予想していたような?』
この場には誰が敵かわからない為、二人の仲間は少人数のみ同行を許されており少ない人数であった。
!?
「これは予想外だったな」
レグルスの呟きに気配の方向に目をやると──
「お見事です。まさか数日でこの誘拐の手口に気付き捕まえるとはね」
人の良さそうな笑顔のエルフがゆっくり歩いてきた。
「まさか本当にネットなのか?しかし、人を操れるスキル持ちなど聞いた事がないぞ!」
エルミアと親交のあったネットが言った。
「ええ、私のスキルそのような大層なものではありませんので。どんなスキルも使いようと言うことですよ」
ネットは手を挙げると、後ろから多くの兵士が雪崩れ込んできた。
「そ、そんな!?」
「何故だ!?」
フェンリーとエルミアは兵士達の顔を見て驚きの声を上げた。
「知り合いか?」
「ええ、うちの近衛兵とも呼べる信頼における兵達です」
「こっちもだ」
二人が言うと同時にレグルスは素早く二人の仲間を峰打ちで昏倒させた。
「ほぅ?」
ネットは興味深そうにその行動を見ていたが、二人は声を上げた。
「何をする!」
「血迷ったか!?」
そんな抗議を無視してネットと向かい合った。
「素晴らしい!いったい何処まで『読んで』いるのですか!?」
ネットは最上級の玩具を見つけたような歓喜の声を上げながらレグルスを見つめた。
「身近な側近の兵士がそちら側にいるんだ。ならば連れてきた仲間も暗示に掛かっている可能性を考慮すべきだ。それに歯に毒が仕込まれてなくとも、家族を人質にされて従っているヤツもいるだろうしな」
レグルスの言葉に二人は目を開いて振り向いた。
「流石ですね。ただ残念ながら二人の供回りの仲間には1人しか潜り込ませれませんでした」
そうは言うが1人でも間者がいれば疑心暗鬼になり、背中を預ける事ができなくなる。
レグルスの行動に救われたのだと二人はようやく気付いたのだった。
「それで、お前が出てきた目的はなんだ?」
レグルスの問にネットは迷わず答えた。
「無論、我々の邪魔になる貴方を消す為ですよ。それに、戦力を削る意味もありますがね」
ネットの周りにいるのは元々はエルフと獣人の仲間達だ。確かに倒せば戦力は低下するだろう。だが、倒さなければ自分が殺されるのだ。全員を峰打ちで倒す事はできない。
まさに絶体絶命の危機である。




