最後に─
今まで冷静だったカーネルが吠えた。
「フフフッ………」
カーネルの言葉が面白かったのかジャンヌが珍しく笑った。
「何がおかしいっ!」
「いや、大陸に戦争と武器をバラまく『死の商人』に悪魔と呼ばれるのがおかしくてな。それで?大陸の秩序が乱れてどうなるって?」
ふてぶてしい態度のジャンヌにカーネルも、だんだんと冷静さを失っていった。
「貴様が行おうとしているのは、大陸全てを戦乱に巻き込もうとする行動だぞ!貴様が、危惧している難民も多くでるだろう。それをわかっているのかっ!」
「今まで戦乱を広げていた貴公の言葉とは思えんな。だからなんだ?良心に訴えれば、行動を止めるとでも思っているのか?くだらん。さっきも言ったが、すでに覚悟を決めている。貴様がこれから話すのは、今までの悪事についてと、隠している【裏】の繋がりについてだ」
!?
驚いた顔でジャンヌを見るカーネルに、ジャンヌは簡潔に言った。
「貴様、人身売買を行っているな?戦乱に巻き込まれた難民を、息の掛かった教会に住まわせ、順番に『出荷』していった。元々難民だ。仕事が見つかったからなどと言って居なくなっても、誰も気にしない。…………本当に、私を悪魔と言うなら貴様は死の商人と言う呼びなすら生温い!貴様こそ邪神の眷属の所業ではないかっ!」
ここにいる商人達は多少なりとも、議長のカーネルの仕事に手を貸していた者達だ。驚く者はいなかった。
「私が許せないのは、労働力や娼館に売るならまだしも、邪教徒に売り渡し、【生贄】にされていた事だ!」
!?
この事実は他の商人もカーネルに驚きの目を向けた。
「貴様、どこでそれを!?」
「腐った者は腐った者が良く知っていると言う事だ。前聖王が調べて証拠を残していた。貴様をゆするネタの為にな」
「クソッ!あの強欲ジジィが!」
忌々しそうに悪態を付くカーネルにジャンヌは手を上げた。
「傭兵達よ。この場にいる商人達を皆殺しにしろ」
!?
「なっ──!?」
ジャンヌの言葉に商人達は声を上げた。
「ま、待ってくれ!私は知らなかったんだ!」
「じ、自分もだ!?命は助けてくれ!」
まさか神炎騎士団が虐殺するとは思ってもいなかったので、慌てて命乞いをする。
そう、商人達は命までは取られないと思っていたのだ。このナニワにある本店の商品や金品は没収されるのは痛いが、他国や他の街に支店が多く存在するため、そちらの軍資金で再起をはかるつもりだった。
それすらも見越してジャンヌは主要な商人達を処分するつもりだったのだ。
「我々に宣戦布告をしたと言う事は命を掛けると言う事だ。もう遅い!後は貴様らの店や自宅を家宅捜索して証拠を探すだけだ。無論、貴様らが居なくても家族を拷問して吐かせる」
!?
何度目かの驚きの顔をして初めて商人達は、誰にケンカを売ったのか思い知ったのだった。
「そ、そんな事がまかり通ると思っているのか!」
「そうだ!民衆が黙っていないぞ!」
恐怖の余りなりふり構っていられなくなった商人達が声を上げる。
「ここにくるまで、誰も我々の進軍を止めなかった民衆に何ができる?ここの民は誰がトップになっても構わないようだぞ?貴様らが贔屓していた店以外のライバル店を優遇すれば、文句は出まい。それに───」
ジャンヌは周囲を見渡していった。
「この虐殺は暴走した傭兵がやったのだ。我々は関与していない」
!?
「なっ───」
パクパクと口を動かす商人にジャンヌは続けた。
「我々がここにくる前に傭兵団が議会堂に押し入ったのは、多くの民が見ている。そして、ここにいる者しか真実は知らない。どうとでも言い訳できるだろう。お前たちがいつもやっている事だろう?」
平気で他者を貶める商人達に死刑判決を下す。
「カーネル以外殺せ。ああ、最後に重要な機密情報を吐けば命を───助けはしないが苦しまず死なせてやろう」
ニヤリッと邪悪な笑みを浮かべ、商人達に絶望を与えると、議会堂はあっという間に血で染まるのだった。




