交渉
レグルスはバルドの休んでいるテントに足を運んだ。
「傷の具合はどうですか?」
「フッ、自分で付けた癖にどういうつもりできた?」
バルドはまだ寝たきりだったが、目に力が漲っており、もう命の心配は無さそうだった。
「貴方にお話があってきました。僕には記憶が無いのです。誰かに言われて行動してきましたが、貴方の話を聞きたいと思って」
「記憶ないだと?」
「はい。女神様は僕が召喚される時に邪神の邪魔が入り記憶を失ったと言われました」
「邪神か………」
バルドは目を閉じて呟いた。
「確かに邪神と呼ばれる者は存在する。しかし、今は大陸で起こっている争いについて知っているか?」
レグルスは首を振った。
「そうか。なら俺達の起こした戦争について話そう。事の発端は、少し話したが、力を付けてきた俺達に対して、鉱石の取引を止めてきた事に起因する。まだまだ大陸から食料を輸入しなければ国民全員を食わすことが出来ない状態だからな」
それは戦いの最中に聞いた。
問題はその後だ。
「聖王の要求により、俺達は断腸の思いで民を奴隷として送り出した。しかし、同胞がなぶり殺しに合っていると知って我慢出来なかった。だからこそ、俺達の同胞を仲介していた村や町を襲った」
!?
「奴隷を仲介!?」
「ああ、聖王も馬鹿ではない。直接王都へ運ばず、辺境の村などに手の者をやって、奴隷の欲しがっているクズ貴族や金持ちに運んでいたんだ。だから、俺達はその加担した村や町を襲った。俺達を奴隷として扱うのなら、自分達も奴隷となり、殺される覚悟をしろっと言う警告のつもりでな。その村のヤツらを虐殺した事について弁解はしない。ただの復讐だからな」
バルドは喋り疲れたのか、一息入れた。
「ああ、そうだ。神炎騎士団は関与していない。奴隷の売買は聖王の近衛兵か、直属の配下である枢機卿が関与していたな」
ああ、女神様の神託を聞けなかったクズ聖職者達か。
「俺の話はこれで終わりだ。まだ聞きたい事はあるか?」
「いえ、バルドさん今回はお願いがあってきたんです」
うん?
バルドは疑問に思いながら聞いた。
「一時的で良いので神炎騎士団に着いてきてくれませんか?」
!?
「俺を監禁して本国のヤツらが反乱を起こせないようにするつもりか?」
「いいえ、僕は記憶がない為に、何が真実で何が嘘なのかわかりません。だから、神炎騎士団以外の人物の相談相手が欲しいのです」
「レグルス、それは我々を信用出来ないと言うことか?」
一緒に来ていたジャンヌは不愉快そうな顔をした。
「ジャンヌ団長の事は信用しています。しかし、知らされていない情報があったのも事実です。今回の争いについては、事情を知っていれば、僕は蛮族の方に加勢していてもおかしくありませんでしたから」
レグルスの言葉にバルドは目を開いた。
「本気で言っているのか?」
「はい。どう考えても、1番悪いのは聖王ですから」
むう………と、腕を組んで唸った。
そこに予期せぬ出来事が起こった。




