表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばけ  作者: 芳田文之介
1/1

お引越し中



つづきはwebで……。


よしだぶんぺい











だしぬけに、背後から肩を叩かれた。


も、もうダメ……ほとんど、ぼくは腰を抜かさんばかり。


「よ! カツユキ」


肩がピクン、思わず心臓がドキッ。


…………。


それは、ほんの一瞬のことだったかもしれない。でもぼくには、ずいぶんと長い時間に感じられた。


ややあって、ぼくはハッとわれに返る。


な、なんだ、イサムかあ。


緊張の糸が、ふっとゆるむ。ぼくは、ほっと胸をなでおろし、おもむろに振り返る。


「おどかすなよ、びっくりするじゃないか」


「へへ、わりいわりい。でも理科室に入る前から、こんなにビビってちゃ、勝負にならねえな」


「な、なに言ってんだ。こんな状況で、いきなり肩たたかれたら、だれだってびっくりするよ」


そう言って、ぼくはふてくされたように、両の頬をぷくりとふくらませる。


もう勝負なんてどうでもいいや。


そんな、半ば捨て鉢な気持ちになって……。


「それはさておき、よく逃げずにきたな、カツユキ」


低い声でささやくように、イサムが言う。


「だ、だって、しょうがないじゃん……」


あんなふうに脅されたら、ということば、途中で挫折した。


思わず洩れてくる、情けなさそうな息にさえぎられて。





「なんだよ、おまえ。さっきからつべこべうるさいなあ。そこまで言い切るなら、たしかめに行こうぜ。おまえの言ってることが正しいかどうか」


「え、どこに?」


「うちの学校の理科室にさ。そこに、でるらしいって噂だからな」


「い、今から?」


ぼくは、露骨に、嫌な顔をする。


「なに、馬鹿なこと言ってんだ。夜だよ、夜にきまってんだろう。それもさ、もっとも幽霊がでやすいとされる、丑三つ時にな」


はあ、丑三つ時に、学校の理科室? 


そっちこそ、バカ言ってんじゃないよ、とぼくは一笑に付して、学校に向かって歩きだそうとした。だが――。


「あっそ」


イサムはそう言うと、さもいじわるそうにニヤリ笑って、こうつづけた。


「なら、あれ、おまえの姉ちゃんにバラシちゃおうかなあ」


あれ――実はそれ、ぼくが拾った十円をうっかりネコババして、「うまい棒」を買って食べたという、あの案件。


絶対に、国民に、もとい、姉ちゃんにバレてはいけないという、あの国家的機密事項案件。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ