始まりの日
ごはんはどこから来るのだろう。
ママに尋ねても悲しい顔をして黙るだけなのだ
これはわたしの役目だ。
お家の奥の光が刺すところまで行ってみた。
少し暑い。やっぱり戻ろう。
いつも食べ物を受け取る位置に戻り、様子を見る。
石を積み上げて遊んでいると、ふいに気配がした。
そしてわたしに向かって食べ物を滑らせてくる。
おいしそうだなぁ
でも行くなら今だ!!
その光の先に向かって精一杯駆け出した。
怒った時のママを真似て大きな声を出す。
相手が臆病なら手を出してこないはずだ。
声色に警戒を滲ませながら値踏みしてやるつもりであたりを見渡す。
眩しい。
全くもって前がみえない。
生まれて初めての立ちくらみを経験しながらも、
ママとは違う気配を感じる。
ネズミやトカゲとも違う。
自分よりも大きい何かだ。
『あいうあいえ。あうう。いいあああいおおおあ。あおいいおおおいおう。おいえうおああいおあうおあお。』
不思議な声だ。複雑でいてどこか暖かい声だ。
だんだんと目が慣れてくるのを感じながら、
その楽しげな音色に惹かれ、
今までママとわたしに食べ物をくれたのは
この不思議な存在に違いないと直感した。
『あーーい』
わたしは美味しかったという思いで声をだす。
眩しい空に透き通った空気。
彩どり鮮やかな植物達。
どれもこれも新鮮で期待を胸に思考を巡らせた。