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人魚王子登場
カンカンカンッ……
その時、金属を叩く音がした。
「マーマンの強襲よ!リサ、隠れるわよ!」
「こっちへ!私の家に!」
訳も分からず私は人魚の一人に引っ張られて貝殻の家に入った。
「…ねぇ…マーマンって?」
家の中からこっそりと外を窺いながら聞く。
「私達マーメイドの男性種よ。
とても野蛮で…でも!マーライズ様が追い払ってくれるわ」
その時、外を蛍光灯のように明るい髪の毛をした青い人魚が通った。
「!!」
ドクンッ
私の心臓が跳ね上がった。
あまりにも美し過ぎる…その人魚。蛍光灯のように発光する白い髪、サファイアのような輝きを放つ鱗……そしてこの世の者とは思えない美しい顔立ち。
「あ…」
白い髪の人魚が此方を向いた。
「……」
たったの数秒。でも私には永遠に感じる程長かった…。
「セルシア、どうした?」
男の人の声がし、その人魚はそちらを振り返って
「今行く…」
と、美しいアルトの声で答えた。
(セルシア…)
セルシアと呼ばれた人魚はもう一度私の方を向いてからサッと泳ぎ出した。