長い名前をつけられました
「そういえばリサはどうやって精霊王にあったのじゃ?」
「私は…小さい時にゴミ捨て場で拾った鏡に環って名付けて話しかけていました。そしたら段々自分で答えていた声が男の人の声に聞こえてきて……ちょうど今日でした。急に真っ暗なところに引き込まれて、そこに環がいたんです」
今思えばこれは夢ではないのかと不安になる。目が覚めるとまた辛い現実、いじめられ、みじめなリアルが始まるんじゃないかと…。
「成程のぉ。そして、精霊王はシーディアにお主を連れて来たと。お主の世界はなんという名前なのじゃ?」
「はい。地球という星で、私の住んでいた国は日本という国です」
「ふむ。その、ニホンという国にはマーメイドはいるか?」
昔話には人魚が登場するものが多いが、実在はしないと思う。
「たぶん…いないと思います。人魚は空想の生物だと言われていました」
「ほぅ。やはり妾達の世界とは違うのだな…。
リサよ、もしもお主が自分の世界に帰れるとしたら帰りたいか?」
「いいえ」
私の即答にマーライズは驚いた顔をする。
「何故じゃ?お主を心配している親はおらぬのか?」
「……私には両親はいません。帰る場所もないんです…」
厳しい祖父母の元にいるよりも、私はこのシーディアで生きてみたい。
「そうか…」
マーライズはじっと目を閉じ、少し考え込んだ後、ゆっくりと開いた。
「ならば、妾の娘にならぬか?」
「えっ?」
「帰る場所もないのじゃろう。ならばずっと此処で妾の娘として暮らせばよい」
マーメイドの女王の娘に?!それって…お姫様になれってこと?
「そんな…私なんか」
「今日会ったばかりで、かもしれぬが。これは運命よ。妾はそう思う。
嫌か?」
嫌なわけない。それに、マーライズ程私を好意的に受け止めてくれる人はこの世界にはいないだろう。
「いいえ…本当に何から何まで。とても嬉しいです」
「よし、ならば決まりじゃ。今日からお主はリサ・ライズ・シーディアと名乗るがよい。
…まずは服をもっと華やかなものに着替えてもらおうかの」




