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ラッキー祥子ちゃん 外伝 マジックじゃなくてミラクルなの

作者: 真黒豆2

小山田教諭は椅子に座ったまま翔太の持ってきたマジック同好会設立願いを見ながら言った。


「とりあえず俺が顧問になる。部に昇格するには会員が5人以上で一年以上活動実績が必要だぞ。それまでは予算も部室も無しだぞ。活動は放課後化学実験室でな」


 ガラガラと職員室の扉を開けて翔太、ひろし、義則の三人が出てきた。


「今日は道具を持ってきてないから、実際の活動は明日からだ。それと部へ昇格するためにあと2人集めよう。誰か良い奴いないか?」


「絶対女子入れようぜ」


「正式な部に昇格するには5人集まれば良いんだから男子で良いんだ」


「俺がマジック始めたのは女の子にもてるためだよ。男だけの部活動とか勘弁してくれよ」


「そう言うならひろしが誰か勧誘しろ。いや、やっぱりいい。お前の勧誘はただのナンパだ」


「義則は誰か心当たりないのか?」


「僕は女子の知り合いなんかいないから……」


「義則は双子の妹がいただろ。妹さんの友達とか……本人でもいいぞ」


「妹も友達あんまりいないと思う……」


「そうか。女子でも男子でもとにかく後2人勧誘しよう」


 そんな事を言いながら3人は校門に向った。


「そう言えば、前にこの辺で交換留学生インタビュー事件ってあったよね」


「なんだその交換留学生インタビュー事件って」


「ひろしは知らないのか?校門で例の交換留学生がTVのインタビュー受けてて、側にいた女の子がピカって光ったってやつ。俺は直接見て無いけど。」


「僕はあれってマジックなんじゃないかと思うんだ」


「俺も見て無いけど、そうかも知れないな」


「それでね、インタビュー受けてたのが交換留学生のモトワニさんで、ピカッと光った子が吉さん。両方とも夕菜と同じ一組の子だよ」


「つまり、その吉さんはマジックやってるかもしれないって事だな。勧誘してみるか」


「ところで吉さんってかわいい?」


「知らないよ」


「妹の同級生だろ。チェックしとけって」


「おいよせ。かわいいかどうかはこの際問題じゃないだろう。それと義則、お前もうちょっと大きな声出してくれ。マジシャンには喋りも必要だぜ。じゃあ明日の昼休みにその吉さんを勧誘してみよう」


翔太が自宅のマンションまで帰ってくるとエレベータで隣の部屋の伊藤さんと一緒になった。


「こんにちは。今日はお早いですね。」


「早いわけじゃなくて、夜勤上がりなんだよ」


「大変ですね 。そう言えば伊藤さん、擁護施設勤務でしたっけ」


「そうだよ」


「そうだ、この前高校でマジック同好会を結成したんですが、伊藤さんの所で子供達にマジック披露することって出来ないですか? やっぱり実際に見てもらえる場がないと場慣れしないですから」


「そうだね。子供達も喜ぶと思うし良いと思うよ。園長に言ってみるけど多分大丈夫だと思う。詳しい事はまた」


 翌日の昼食後、3人は一年一組の教室に向った。教室の後ろの扉をガラガラと開けると、昼食が終って教室に数人ずつ固まってお喋りに興じてる生徒達がいる。


 義則が入口の側に一人で席に座ってる女の子の所へ行って女の子が右手を伸ばして窓側に座って喋ってる3人の女の子の方を指差した。


「あの3人の真ん中の子が吉さんだって」


「相変わらずお前たち双子は声が小さいな。本当に喋ってるのか?」


「そんな事よりあの子結構かわいくね?是非とも我がマジック同好会に」


「ひろし、俺が話するからお前は黙ってろ。ナンパじゃないんだぞ」


 翔太達が近づくと彼女達の話し声が聞こえた。


「そしたら金貨が……」


「どうしたの?」


「こんな感じに。」


 そう言って開いた女子生徒の手の中に金色のものが見えた。すると噂の交換留学生とおぼしき女子生徒が立ち上がって彼女の所に行くと何かを言って戻って行った。


 翔太達が女子生徒3人の所に行くと、翔太が声を掛ける前に女子生徒の一人が義則に声を掛けた。


「あら、義則クン、何の用。」と右端の女の子。


「僕は……」


「霧子ちゃんの知り合い? そう言えば黒金さんにそっくりだけど」と左端の女の子。


「彼は三組の黒金義則クン。黒金さんの双子のお兄さんだよ」


「えー、黒金さんに双子のお兄さんがいたの?」と真ん中の女の子。彼女が吉さんだ。


「ホント顔はそっくりだね、さすが双子」と左端の女の子。


「ところでさっきのあれ、手品?」


 ひろしがそう言うと3人の女子生徒達は顔を見合わせた。


「そ、そう。手品だよ、手品。手品だから……」


「僕ら3人でマジック同好会を結成したんです。手品をされるんでしたら、是非我が同好会に入りませんか?」


「えー、マジック同好会?」


「実は昨日出来たんだよ」


「私は美術部だから」


「うちの店の手伝いで忙しいから無理」


「私は……」


「そうだ。夏休みの間に市内の児童擁護施設で慰問マジックをやるんですが、それだけでも参加してみませんか?」


「ちょっと待った。初めて聞くぞ、その話」


「俺の家の隣に児童擁護施設の職員が住んでて、是非にと頼まれたんだよ。実践の場が出来て良かったよな」


「(それに児童擁護施設って言っても上は18歳までいるし、出会いがあるかもよ。)」


「(まあそれなら)」


「何二人でごちゃごちゃ言ってるの?」と左端の女の子。


「どうです? かわいそうな子供達の心をマジックで勇気付けてやろうと思いませんか?」


「……その日だけなら」と吉さんは答えた。


 そうこうしてる間に昼休み終了の予鈴がなって3人は1組の教室から立ち去った。


 「ところで翔太、その児童擁護施設の話って何時出たんだよ」


「昨日、家に帰った時、児童擁護施設の職員してるお隣の伊藤さんとエレベーターで一緒になってさ。伊藤さんは園長さんに話すけど、多分大丈夫って言ってた」


 翔太がふと義則を見ると顔が青ざめていた。


「ちょっと義則、顔青いぞ。慰問マジック自信ないか?」


「そんな事は無いよ。」


 そう言うと義則は自分の教室に入っていった。


 8月4日に児童擁護施設前に集合したのはマジック同好会のメンバーと吉さんだけでは無かった。アシスタントだと言う義則の双子の妹の夕菜ちゃんは兎も角、吉さんの友人の最上 霧子さんとこの暑いのにスーツを着た太った外人(インド人?)の男性とさらに後ろに秘書っぽい女性。この三人は吉さんのマジックを見に来たのだと言う。


 最初の出演したのは翔太。児童擁護施設に着いてから着替えたタキシード姿で演目はロープを使ったマジックと定番のシルクハットからハトを出すマジック。翔太の衣装は自前でハトはレンタルらしい。真面目にプロを目指していると言うだけあって見事な腕前を見せた。


 次に出たのはひろし。白い布を引いたテーブルの向こう側の椅子に座って、カードマジックを見せた。相手が必要なものについては手を上げた観客の子供たちからひろしが指名したが当然のように年長の女の子なのがあざとすぎた。


 三番目の義則は「読心術」。これは観客の子供の数名にボードを渡して、好きな動物などの題で書かれたものを壇上の義則が同じくボードに書くというもの。翔太は観客の後ろに立った夕菜ちゃんが書いてる内容を見て壇上の義則に何らかの方法で伝えてるのだと推察したが、字の形までそっくりなのはどうやってるんだろうかと思った。


 最後に吉さんの番になった。テーブルの向こう側に立った吉さんはまず両手を広げて何もない事を見せた。吉さんは半袖の制服で隠すところがあまり無い。


「こうやって握ると」と言うと上に伸ばした右手を握り締めて真っ直ぐテーブルの上に降ろした。


「金貨が」と言いながらこぶしを開くとテーブルの上に金色の小さなコインが落ちた。


「えい」と言ってこんどは左手を上げて握り締め、テーブルの上に同じく金色のコインが落ちる。


「えい、えい……」と言いながら吉さんは手をぐるぐる回し、その度にテーブルの上のコインが増えていった。


 まるでクロールみたいだなと翔太は思った。気づくと吉さんと一緒に来た外人さん達は目を丸くして驚いている。


 最後に吉さんは手を開いてテーブルの上に載せると「えーい」と言う掛け声と共にジャラジャラとコインが一気にテーブルの上に落ちてきた。


「以上です」


 マジックショーが終って翔太達は片付け始めた。テーブルの上のコインの山を見た翔太は吉さんに声を掛けた。


「これどこに仕舞うの?大体こんな量どうやって持って来たの?」


「持ってきてないよ。それこの施設に寄付できないかな?」


「え、どう言うこと?」


吉さんの後ろにいた最上さんが代わりに答えた。


「そのコインは多分本物の金貨。祥子ちゃんがやったのはマジックじゃなくてミラクルなの」

実はエブリスタの「三行から参加できる 超・妄想コンテスト 金」用に考えたのですが、

よく考えると「ラッキー祥子ちゃん」本編を読んでいる事が前提では応募出来ないですね。


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