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第5話 旅立ち

 この数日の間、考えを巡らせていた。


 ベルトはどこに行った? 

 なぜ笑っていたのだ? 


 魔女がいる、ステリアとは? 

 女神はどこに? 


 考えてみても、答えが出るわけもない。

 その間も、訪問者への対応は続いていた。





「外の世界に出てみようと思う」


「ジン様、私達もついて行きます、ね、ルナ?」


「ええ、もちろん。ジン様、お願いします」


「ダメだ。2人には頼み事をお願いしたいと思っている」


『何でしょうか?』


「うむ。この世界にいる、ある女を探してほしい」


 俺は、話を静かに聞いているメイド達に続けて言った。


「この世界に俺たちと同じ時期に来た女。”女神”と名乗っているはず」


「女神……ですか」


 ルナが聞き返す。


「そうだ、女神リダ。2人は、会ったことがなかったか……。古い知り合いでな。俺が魔道の力で転移してきた時に、同じように転移したはずなんだ」


 嘘が口から滑るように出る。詐欺師か、俺は。


「いつも、白の上下の服を着ている。容姿の特徴は……。そう、黒い艶のある長い髪と茶色い瞳。背は、俺と同じくらいといったところか。」


 女神だったエリスの服装と、魔女だったリダの容姿の特徴。

 覚えているのはこのくらいだ。


 メイド達にはリダを探してもらう。

 そして俺は、”魔女”となったエリスを探す。


 女神と魔女が入れ替わっているのだから、リダはエリスの服装になっている可能性が高い。ベルトが”魔女と会った”と言っていたが、これは入れ替わった後のエリスのことだろう。この城に来た第一声が、”やっと会えたな、魔王”だったからな。ベルトは、入れ替わった後を前提に話をしているはずだ。


 

 まあ、リダとエリスに一生会うことはない可能性だってある。


 だが、もしも俺を殺しに来たら?

 何かを企んでいたら? 


 会ってみないと、この不安からは解放されない。

 まあ、この世界を見てみたいしな。


「何か情報を得られたら、俺のところまで伝えに来てくれ」


『承知しました、魔王ジン様』


 城の外でメイド達に別れを告げ、森の中へと入る。

 上から見下ろしていた時は気が付かなかったが、この世界特有の植物が多い。


 虫も、動物も、見覚えのあるそれとは、少し異なっていた。


「これを持って地球に帰ったら、英雄扱いなんだろうな……」


 そんな、生物学者みたいなことを思いながら森を進む。

 すると、進路の奥の方に、倒れている人影が見えた。


 目の前にいる現れた女は、手足に傷やあざがあり、服も裂けている。


「おい、大丈夫か?」


「うっ……」


 上半身を起こし、水を与えると、何とか話が出来るようになった。


「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言っていいか。あなた様は?」


「ジン。ただの旅人だ」


 魔王ということは伏せておこう。


「何があった? 傷だらけだが」


「その……。盗賊から逃げてきました。必死だったので……」


「家は? 近くか?」


「はい。近くのステリアという町に」


 ステリア。俺の目的の町だ。


「俺もステリアに用事があったところだ。ちょうどいいし、家まで送り届けてやろう」


「何から何まで、本当にありがとうございます。」


 ボサボサにはねた長い髪と、疲れ切った顔が印象的なこの女は、ナロと名乗った。

 俺は背中にナロを乗せて、森を歩いた。


 もう本当に数日前までの俺ではないんだな……。

 人を背負って歩くという単純な動作が、俺にそう再確認させた。





 森を抜けて少しすると、ステリアに着いた。


「ありがとうございます。ここからは歩けます」


「そうか?」

 

 背中から降ろすと、ナロは歩き出す。一歩一歩足を引きずる素振りをしている。

 心配になったので、俺も横について歩いた。


 かなりの田舎町。人にはすれ違うが、町の活気はあまり感じない。


「ここです、ジン様。今日は本当にありがとうございました」


「じゃあな、ゆっくり休め」


「あの、中でお茶でもどうですか?」


「いや、俺は用事があってな……」


「あの、お礼もしたいので。……よろしければぜひ!」


「……ああ、すまない」


 町の中心から離れた、大きくはない木造の一軒家。家族と住んでいるのだろうか。

 ナロが片開きのドアを開け、中へと促す。


 俺が中へ入ると、ナロがドアをガチャンと閉めた。



「やあ、待ちくたびれたよナロ。今日2人目の獲物だ」

読んでいただきありがとうございました!

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