第2話 メイドの実力
「エレナ、ルナ、久しぶりにお前らの力を見せてはくれないか?」
『承知しました!』
まずは、2人のメイドがどんな能力を持っているのか、確認をしてみることにした。
この子達がどのようなスキルを持ち合わせているかで、俺自身の可能性もある程度わかるだろう。
「私がやります!」
「エレナ、私にやらして」
どちらでもいいが……。
よし、ルナにやってもらうか。さっきは間違えてしまったしな。
「よし、ルナよ。この世界で、手始めに何を見せてくれるのだ?」
ルナはボブカットの髪をゆらゆらと揺らし、周りを確認する。
本当に、この少女達に魔王に仕える程の力があるのか?
ルナはトコトコと歩き出したと思うと、割れたガラス窓の前で止まり、外を指さした。
「魔道の力で、ここから見えるあの村を消しましょう」
俺もガラス窓まで歩いていき、指さした方を見る。
来た時に見た、いくつかある中の一つの、小さな村だ。
「うむ。さあ、お前の力を見せてくれ、ルナよ」
「はい!」
ルナは片手を村の方へ向け、目を閉じる。
暫くすると、黒いモヤがルナの手のひらを包み始めた。
【闇炎 】
ルナは魔道の力とやらを使った、技の名を発した。
ところが、村の方も見てみても変わった様子が見当たらない。
唯一変わった点はというと、横にいるルナの手のひらがモヤモヤっとしていることだけだ。
「失敗か?」
「いいえ、ジン様。村の方を」
やっぱり何もないじゃないかと言おうとした時、突然、黒い炎が現れた。
みるみるうちに大きくなり、燃え盛る黒い炎は村を覆い隠そうとしている。
やばいやばい。これはやばい。
ちょっとした技を見ようと思っていたが、こんな規模になるとは……。
消すって言っている時に気付けばよかった。
いかん、早く止めなくては!
「ル、ルナ。よくやった。もう消していいぞ」
「え? ジン様、まだ村は消して――」
「あ、あまり悪目立ちしてはいけないからな!!」
「す、すみません!」
急いで手のひらを対象から外すと、モヤが無くなり、村を囲む炎も消えた。
これがメイドに使えるということは、俺にも同じように使えるということか。
「……魔力を込め過ぎましたか?」
ルナは困惑したような顔をしている。
「いや、よくやってくれた。さすがはルナだ」
「お褒めいただきありがとうございます、ジン様」
困ったような顔は、途端に笑顔へと変わっていく。
そうだ、ひらめいた!
このメイド達に色々と技を使ってもらい、見ながら覚えていこう。
「エレナが言った通り、俺はここにきてから少し疲れがあるようだ。魔道の力もあまり使えない。すまないが、少しの間、世話をしてもらいたい」
『かしこまりました! 魔王ジン様』
*
そうして第一発目に、ルナとエレナの力を借りて、この廃墟のような城を住みやすく、かつ魔王の城っぽくしてみた。
魔道の力とは便利なものだ。割れたガラスを元通りにし、そこにある素材からソファーやら明かりやらを生み出す。夜になると森に囲まれたこの城は、暗く不気味に見えるが、それもまた本物の魔王になったような気分にさせてくれた。
時間が経つにつれて、この世界がどんなものなのか気になっていた。
そして、俺と同じく召喚された他の3人についても。
ベルト、エリス、リダ。
誰が誰と入れ替わっているか。どんな能力を使い、世界の頂点を極めたのか。
創造主に選ばれた者達。ただの学生だった俺なんかよりずっと賢く、そして強い。
けれど、ここで生き抜くためには、まず自分を知ることが第一だ。争うことになってしまう、その前に。
*
エレナとルナの技を見よう見まねでやってみて早1週間。
雷が見たい、だとか、氷を出してくれ、だとか。わがままだと思われていないか心配だ。
魔道の力には得意分野があるらしく、エレナは氷を扱うこと、ルナは火を扱うことを得意としている。
俺はほぼすべての魔道の力を扱えるため、魔王と呼ばれているらしい。
*
「ジン様、この城に気配が迫っています」
「なに!?」
エレナに返してみたが、俺も何となく感じていた。すごいぞ魔道の力!
「2人……いや3人です!」
集中してみる。
姿はわからないけれど、ぼやけた3つの白い玉がこの城に向かってきている。
城の中にいるはずなのに、城のてっぺんから見ているような感覚。
3人……。嫌な予感がする。
俺を見つけ出して、殺しにでも来たのか?
綺麗に生まれ変わった城の扉を開き、3階のこの部屋へ。
部屋の扉が音を立てる。
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