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第25話 転送

『うわあああああ』


 地面に落ちてから目的地に向かって吸い込まれていく感覚に思わず声が出た。時空の歪みに引き込まれるように体を手招きする。立っているような感覚がないため、抵抗もできない、そんな時間だった。


「到着しました。御二人とも目を開けてください」


 着いたときには痛みなどなく、気が付くと両手で地面に手を着き、四つん這いになっていた。スルッと地面の上に召喚されたようなものだろうか。創造主に転送された時のそれとも違う、不思議な感覚だった。


「少し離れたところに転送しました。少し歩けば古い一軒家があります。そこに……」


 辺りを見渡してみるが、ぽつりぽつりと一軒家が見えるのみ。

 ゆっくりと時間が流れているような田舎の風景に、昔聞いたことのあるカントリーミュージックが頭の中で流れた。重かった体が少し軽くなったような気がした。

 時より、気持ちのいい風が緩く続いた緑の丘から降りてくる。汗の染みた体に触れてひんやりと心地が良かった。


 エリスに半ば強制的にここに連れられてきたが、ベルトの情報は皆無だ。

 俺は大きく一つ深呼吸をして、ルナに訪ねてみた。


「ベルトはここで何をしているんだ?」


「何やら、一軒家でひっそりと身を潜めているらしいのです。何をしているかまでは……」


「不気味だな……」


 なんでも、リダを探している最中にここに立ち寄り、村人から情報を得たのだと。ここは小さな村だったため、見慣れない顔のベルトは格好から何から目立っていた。空き家になっていた古い一軒家を譲り受け、生活を始めたというわけだ。


 旅人も来ることがほとんどないこの村が、城に近いイベラザークの南に位置していることははっきりしているのだが、いかんせん俺にはこの世界の文字に馴染みがない。ルナや、それこそエリスに地図のどこらへんに位置しているか確認することはできたのだが、それほど大切なことではないだろうと聞かずにおいた。


「ベルトに会ったところで……なんだよな」


 もちろん会う前に緊張はする。何をされるかわからない。けれど、殺されることはないだろうと心の中で思っている自分がいるのも確かだ。力量については、城の中で対面した時にわかっている。格好は違えど、元の俺自身だからな。剣を振ろうが、盾で防ごうが、魔王に勝てるはずがないのだ。


「何かのきっかけになるかもしれませんよ?」


 エリスがニコッと笑った。


 ここに来た意味を少しでも考えてみたほうが良さそうだと自分に言い聞かし、ルナの案内に従った。

 エリスの言動や行動は、いつも俺に転機をくれている。自分では決めきれない、決めても行動に移せない俺の背中を、そっと優しく押してくれるように感じていた。


 丘の方から離れていく。久しぶりの休息がなくなってしまいそうで不思議な気持ちになった。


 体は痛む。だけど肩を借りて歩くことはせず、2人が一歩先を歩いていくのを付いて行った。情けなさが一番だったからだ。肩を借りるなんて、映画なんかで何かを成し遂げた後なら映えるかもしれないが、思い返してみると負けて傷だらけで、それで……。


 ――情けないわ

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