第24話 メイド参上
2人して武道祭会場前で途方に暮れていた。
エリスは俺に付いて行くと言ってくれたが、正直なところ、どこに何をしに行くのだと頭の中で繰り返し考えを巡らせていた。
俺はグラファに負けた。何も出来ずに負けたんだ。全てを否定されたような感覚に陥ったが、エリスの言葉に助けられた。何もかもを捨ててしまいたいとも考えたが、寸前のところで救われたのだ。
絶望の後の感謝と……。
言葉では言い表すことの出来ないほどのたくさんの感情がまだ残っている。
そしてまたグラファと会うことになるのだろう。グラファからは俺に対しての憎悪が、言葉と表情から見てとれた。そしてまた俺を消しにくる。巨大な敵となって。なぜなら、この世界をも味方につけたのだから。俺はこの世界からはじき出されたようなものだ。会場の印象からそんな気がしていた。
「この黒いモヤみたいなものなんでしょう?」
エリスが俺に話しかけてくれている。心配して話題を振っているんだ。正直どうでもいい話に違いない。だけどこの明るさが疲れきった心と体に染みてくる。
「ありがとう……」
「いえいえ。……じゃなくて、ここ! なんか変なんですっ!」
エリスは大声でツッコんだ。ありがとうツッコミ。
心に染みますわ。
ん、ツッコミ?
何かツッコまれるようなこと言ったかとエリスの顔を見ると、地面を指さしながら不思議そうにのぞき込む仕草をした。
2人の目の前、約1,5mぐらいだろうか、円のように黒い霧に包まれて地面が見えない。
まるで底が抜けたような、これは確か……。
「ジン様、どうなされたのですか?」
見覚えのあるボブカットに垂れ目、ルナだ。
「いや、ちょっと……。あ、なんでもない。どうした?」
「急に戻ってきてしまい申し訳ありません。お話ししたいことが……」
ルナは傷だらけの格好を見て心配そうに話した。
俺は首を縦に何度も大きく振り、話してみろ、そして心配ないと答えてみせた。
「実は、勇者ベルトが小さな村にいることを突き止めました。女神は継続してエレナが探しています。どうしても気になってしまって……。ジン様へご相談に来てしまいました」
予想もしていなかった答えに、俺は言葉が出なかった。
「ベルトって……。あのベルト様ですか?」
エリスが俺とルナの会話に入り込む。
「あの……、あなたは?」
「あっ私はエリス、よろしく!」
「あなたが魔女エリス様でしたかっ。名乗るのが遅くなり、申し訳ございません。私はメイドのルナです。よろしくお願いします」
ルナ様よろしくと言った後、エリスはルナにハグをした。ルナは照れくさそうにハグの後丁寧にお辞儀をした。
「私の事はルナと御呼びください。ジン様にもそう呼ばれておりますので」
「んー。じゃあルナちゃんと呼びますね!」
ルナはまた照れくさそうに顔を赤くした。
「エリスはステリアでベルトに会ったんだよな」
「えっ? 会ってませんよ?」
「俺はてっきり2人は会ったと思っていた。エリスがステリアにいることもベルトに聞いたんだ」
一体どういうことだろう。ベルトは確かにエリスの居場所を教えてくれた。そして言われた場所でエリスに会った。働かない頭をどうにか動かしてみたが、答えにはたどり着きそうにもない。
「ベルト様にもう一度会ってみるのはどうでしょうか?」
確かにそれが手っ取り早い。しかし危険ではないか。一度会っているとはいえ、入れ替わった相手だ。何を考えているかわからない。含みを持たせて去っていったのも気になるし。
「ルナちゃん、ベルト様のいるところは近いの?」
「距離はありますが、魔道の力で転送を行えば数秒で目的地付近には辿りつけます」
「じゃあお願い!」
「では私の傍へ。初動にも時間はかかりませんので」
「善は急げですねっ! ほら、ジン様も行きますよ」
霧の現れたところまでエリスに引っ張られる。
「ちょ、心の準備が……」
「ジン様、エリス様。少し揺れますので目を閉じていてください」




