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第23話 調査団

「早くしろ、ジン」


「ちょっと待ってくれ。今行く」


 外からの声に、急いで荷物を詰め込んで答えた。

 片足を地面に蹴りつけるせっかちな音が玄関まで聞こえた。


「ったく。あいつはどうしている?」


「エリスは……。まだ寝てるんじゃないか?」


 なんとなくだけど想像はできる。


「あの天然魔女め。出発は夜がいいとあれだけ言っておいたはずだが……」


「わかったわかった。俺が起こしに行ってくるよ」

 


 エリス部屋は正面から右手にある。ドアから6畳程奥へと広がっていて、一人部屋としては十分な規模だ。

 男2人は防犯対策として、玄関と仕切りのない部屋を使っているのだが、エリスには別部屋使ってもらっている。防犯といっても辺りには建物などないのだけれど。


 女性の部屋に入るのはあまり乗り気はしないが、今回は緊急事態と自分に言い聞かせてみる。

 ドアと開けると、綺麗に整理された部屋の中に花が飾られていた。


 そのエリスはというと、枕を抱えながらすやすやと寝ている。

 やっぱりな……。

 

「おいっ! 今日出発って言っただろ。何聞いてたんだよ。俺が怒られるんだよ!」


 ふにゃふにゃと音を立てながら、邪魔しないでくれと手で払ってきた。


「は・や・く・し・ろ!」


 毛布を奪い取り、ベットを思いっきり揺さぶる。


 ここまでされても慌てる素振りは無し。

 まあ悪態をつかれるよりはましなのだが……。


「ううっ。……もう朝ですか?」


「出発だ!」


「しゅっぱつ?」


 エリスは初めて聞いたような声を出し、ベットの上から俺の目をのぞき込んだ。

 そんな変な数秒が続いた後、家の外から俺とエリスに急かすよう低い声が響く。

 

 エリスはやっと事態を把握したのか、ドタバタと身支度を始めた。


 外で待っているからとエリスに告げて、俺はドアを閉めた。

 また寝てしまうかもしれないと少し心配もしたが、外からもドタバタが聞こえてきたので安心して自分の荷物を確認する。





 月明りが淡く照らしている。

 今日は月が大きいせいか、いつもより星の光が小さく感じる。


「ジン、俺達の目的は?」


「女神、勇者との接触。アザゼム及び、この世界の調査……かな」


「うむ、OKだ」


「この格好は必要なんですかっ?」


 眠そうな目をこすりながら、エリスは質問した。


「あまり目立ってはいけないからな。夜の行動はこの黒マントに限る」


 ベルト、あんたの趣味なだけだろ。


「趣味もあるが、何でも格好からというだろ?」


 俺は思わず口にだしていたようだ。

 

「さあ行こうか」


 ベルトの声で家を後にしようとする。

 俺は準備に時間のかかったエリスが心配になっていた。

 何か忘れ物していないだろうか。


「エリス、ちゃんと準備はできているのか?」


「はい、準備バッチリですよ。着替え、食べ物、飲み物……後は」


 何かもっと重要な……。

 杖! そう杖がない。


『杖!』


 俺とエリスは思わずシンクロした。


「ったく、どうしてお前はいつもそうなんだ!」


 ベルトがエリスをギロッと睨んだ。


「取ってきますっ!!」


 エリスは逃げるように部屋に戻っていった。


「初日にこれじゃあ……」


 大きくため息をつくベルトを必死になだめた。




 お人よしの天然魔女に、勇者に敗北したできそこないの魔王

 そして、装備は一丁前なポンコツ勇者


 3人から新しい旅が始まる。

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