第20話 正真正銘の力
魔王……だと?
俺は旅人として参加していたはず。魔王と名乗ったのは、メイド達と、エリス。
そうか……。
城にいた時の訪問者には魔王と名乗っていたか……。しかし、グラファという名に聞き覚えもないし、見覚えもない。噂を聞きつけた、ということなのか。
「俺は旅人だ。魔王、なんだそれは?」
俺は精一杯の言い訳をしてみた。
「”偽物”は、嘘も得意というわけか」
グラファのくどい言い回しに、そろそろ付き合いきれなくなってきた。
「なんなんだよ。はっきり言ったらどうなんだ」
「はっきり言っても、いいんだな?」
大きな歓声を切り裂くように、グラファは剣を天に向ける。
剣の先から、閃光が放たれた。
綺麗な白の直線が空まで繋がり、そして閉じるように消えた。
何が起こったんだ?
ここにいるグラファ以外はみんなこの気持ちだろう。
声も出ない。静かに消えていったこの光の行方を見るのに夢中になった。
「さあ、みんな俺の話を静かに聞く準備は出来ているか?」
『うおおおおおお!』
グラファは大きな声で観客を煽る。
会場はうねりを伴い、一瞬で静まり返る。
何が起こるんだ、と期待しているのがわかる。
グラファは観客を味方につけて、何を始める気なのだろうか?
「さあ、旅人ジン。いや魔王ジンよ、お前はどこから来たんだ?」
グラファはわざとらしく笑った。
「……ステリアだ」
俺は状況が読み込めなかった。
自分の声も小さく聞こえる。観客には届いていないだろう。
「おいおいステリアだぁ? 冗談はよしてくれよ。どこの”世界”から来たかってことだよ!」
どこの世界?
何を言っているんだこいつは……。
……いや、まさか。そんなはずはない。
グラファは考える暇を与えず、大声で続ける。
パフォーマンスは続いていた。
「俺もお前と同じく、その口だからなぁ。魔王さんよぁ」
お前と同じく?
グラファもこの世界に来た者?
いやいや、この話を知っているのは、”5人”だけのはずだ。
入れ替わった4人と創造主のみ。
グラファはその誰でもないはずなのに……。
「あんた、その話、どこで聞いた?」
「だから、俺も来たんだって、この世界に。お前を探しにな!」
「俺を……探しに?」
「お前を探しに創造主アトラスに転移させてもらった。そうさ、俺が正真正銘の勇者なんだよ!」
グラファは叫ぶように、続けた。
「みんな聞いてくれ。こいつは、勇者であると偽って、違う世界からこの国に”魔王”として転移してきた異端児。こいつは全てを偽る悪党だ。本物の勇者の俺になりきってだ。勇者を偽り、そして今も、”魔王”としてみんなを騙そうとしている。こんな嘘まみれのやつをみんなは信じれるか?」
全てが本当に聞こえる。
俺に向けた声ではないが、心に響き反響している。そんな気がした。
そうだ。
俺は”勇者”だったわけでもなければ、”魔王”でもない。
グラファの言っていることは正しい。
創造主が俺と勘違いした相手。それが勇者グラファだったのだ。
レビューが嬉しくて1日2話更新です(笑)
こんな日があってもいいですよね!?
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