表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/26

第1話 初めての魔王

「うっ……」


 乗り物酔いような感覚。

 そっと目を開けると、見慣れない光景が広がっていた。

 人気のない薄暗い建物の中。少し肌寒い。

 冷たさのある壁に、古い絵画や鏡が貼りついている。まさに廃墟。城か。


 建物の中から外を見ると、森に囲まれて村がぽつぽつとある。

 どうやら転移は成功したようだ。異世界に”召喚”と言うべきか。


 魔王って体の感覚あるんだなと思いつつ、鏡に向かう。


 鏡に映る自分は、黒のマントのようなものを身に付けている。

 魔王ベルトが身に付けていたもの。鍛えぬいた体の魔王ベルトと、同じものを着ているとは思えない。

 

「顔や体形はそのままってことか……」


 顔や体形はそのままで、魔王として生まれ変わった。

 強制的に召喚されたため、いい気はしないが、まずはこの世界で生き抜いていかなければならない。


「さてと、何から始めるべきか……」

 

 今、魔王と入れ替わったと確認できるものは、この似合わない格好だけ。

 本当に成功しているのか、と疑問に思いながらもゆっくり考え始めてみる。

 

 出来ることは何だろう?

 技の種類や、スキルを確認するには?


 魔王といえば……。魔王っぽいもの……。


 ……配下を召喚!

 魔王といえば、たくさんの魔物を引き連れているイメージがある。

 

 そうだ。配下を召喚してみよう。


「どうやってやるか、なんだよな」


 幸運なことに周りには誰もいない。人目を気にせず、試すことができる。

 ベルト自身に配下がいたかどうかわからないが、なんとなくやってみるか。

 

「来い! 俺の配下達!」


 俺は中二病っぽく、低い声を出し、マントをひらりとしてみた。


 すると、床の一部が闇に包まれ、底が抜けたように見えた所から、2人の少女が現れた。


 うん、やはりやってみるものだな。

 心の中でボソッと言ってみた。


『魔王ベルト様、御呼びでしょうか』


「ルナ、一緒に言わないでってあれだけ言ったのに!」


「エレナ、一緒にじゃないよ。私の方が先に言った」


 一方は、黒のショートカットで耳が見える髪型。赤色の瞳に力がある。

 もう一方は、茶色ボブカットと垂れ目の青い瞳から、穏やかそうな印象を受けた。


 小柄な2人は、同じ黒のメイド服を着ている。


「ベルト様、お姿が……」


 しまった。そりゃあ、気が付くよな……。ベルト様って言ってるし。


「俺はジン。魔王ジンだ!」


『……』


 どうしよう。2人共すごく困ってる。


「まだ気づかないか。ここは異世界。俺達のいた世界とは違うのだ。この世界の者として生きるために姿かたちを変え、名前を変えた。単純なことさ」


 さあどうだ、と自信満々に言ってみた。

 ベルトがこんな口調だったかどうかは知らないが、少しは魔王っぽさを出してみたつもり。


「なるほど! さすが魔王ベル――」


「さすがです。魔王ジン様」


 ボブカットメイドがかぶせるように言った。


「エレナ、理解が早いな」


 よし。何とかいけたぞ。

 まずはセーフだ。ここで嘘とばれたらこの先、生きていくのは大変だったに違いない。


「ジン様……。ルナです……」


 やばっ!

 ボブカットメイドがルナで、ショートカットメイドがエレナか。


「ルナ! 魔王ベ……ジン様はここに来られたばかりでお疲れなの! ですよねジン様?」


「すまないな、ルナ。」


「い、いえ! とんでもございません!」


 エレナとルナの2人にも創造主アトラスとの契約は口にしてはいけないだろう。消滅なんてごめんだ。

 気づかれないように魔王として振る舞わなくてはいけない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ