第18話 真相はアンダーグラウンド
グライドは俯き、黙ったまま話を聞く。
顔を窺い知ることはできない。
「ナロ様は大切な人を、その得体の知れないもののせいで……」
「エリス様、もういいんです。ダグラさんの気持ちがわかっただけで……」
ナロはエリスの顔を見て、優しく話しかけた。
控室は時計の音が響き、時間だけが過ぎた。誰も話し出すこと出来ない状況が続いた。
*
暫くすると、ナロはすみませんと、控室を後にした。
これ以上聞くのは限界だったのかもしれない。ここに立っていることも。
ダグラの優しさから来た結果。それを受け止めるのに時間がかかるのか、それとも……。
グライドがそっと話し出した。
「私は、彼らだけじゃなく、旅人や商人、色々な人々に同じような謳い文句で渡した。ゴブリンにもね。この都市のアンダーグラウンドでは知っている人も多いはずだ。私もそこで生きてきたようなものだからね。君達がもし、詳しく知りたいならばそこに行くといいだろう。教えてくれる人はいるはずだ。そのときは、この都市の真実を知ることになるだろう」
ダグラだけではなく、旅の途中で会ったゴブリンもそのカプセルの仕業というわけか。
同じように我を失い、目の前の者を襲う。今思えば確かに共通点は多い。
それが一体何なのか。どういう理由で広がっているのか。
グライドに聞いても、答えは返ってこないだろう。
答えを知らないが正解かもしれない。
正直な話、ナロがここにいなくて良かったと思っている。
彼女の前から手がかりがここで途切れたこと。それが良いことだったと願いたい。
「君達は使わないとは思うが、もし答えを見つけたいと願うならば、これが手助けをしてくれるだろう」
俺は、グライドからカプセルが数粒入った袋をもらい、ポケットにしまった。
これが手助けをしてくれる、か……。
そんなことを思いながら、俺はエリスと、グライドの話を聞き終え踵を返す。
エリスは試合が終わった後なので、関係者席に行かなければいけない。ナロも先に行っているだろう。
控室に戻ろうと廊下に出ると、一人の男に会った。
確か、参加者の中の一人。
「”偽物”……ねぇ」
男はそれだけ言うと、俺達と別の方向へ。
大きな声を出してしまったので廊下まで響いていたのか、と少し動揺してしまった。
俺を待っていたのか、偶然聞こえてきたのかわからないが、その一言がすごく耳に残っていた。
*
武道祭は順調に進み、終盤に差し掛かった。1回戦のグライドとの試合は予想外な幕切れだったが、第2回戦では難なく勝ち上がり、観客の関心を引くことが出来た。その他の試合も終わり、残りは決勝戦のみとなった。控室に関係者が呼びに来て、決勝の舞台へ向かった。
グライドの言った事や、カプセルの事、それらが頭の中をグルグルと駆け回る。
武道祭での目標は一つ達成したんだ。
もう一つも優勝すれば手に入る。もうすぐだ。
目の前にいるのは、そんな事は知らずに盛り上がる観客。
会場の熱気は最高潮になっている。
とりあえず、今俺にできることをやろう。
「さあ、武道祭も残すところ、この試合のみとなりました。頂点に立つのはどちらか――」
アナウンスが鳴り響く。
「決勝戦、旅人ジン対勇者グラファ――」
勇者グラファ――廊下で会った男との試合が始まる。
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