第12話 出発進行っ
スッキリと晴れた空。
眩しい。
朝の光が、塞ぎ気味の瞼に”いいから開けろ”と言っているみたいだ。
まさに旅日和!
昨日はもう一度、おいでやすのおばさんの所へ行き、泊めてもらった。
オオヨロイの揚げ物を御裾分けしたら、タダで泊めてくれた。
ありがとう、”お姉さん”!
よしっ! 忘れ物はないよなっと。
アザゼムまで歩いて2、3日って言っていたな。どのくらいの距離があるんだろう。バスや電車に慣れていて時間と距離の関係が曖昧になる。歩いてと言われると途端に頭の回転が鈍くなる。
「まずは、ここを目指しましょう」
今はというと、荷物係は不備がないかの最終確認中。
ナロは俺とエリスに地図を見せ、指を指す。
「イラスという村ですね」
「はい。その後は、ここトートです。1日目にイラスへ。2日目はトート。3日目にアザゼム到着の流れです」
「了解ですっ! イラスもトートも、文字だけしか載ってませんねぇ」
「そうですね、小さな村なので。でも、どちらにも宿もあるみたいですので、心配ないかと」
「そうですか! 安心しましたっ!」
「それと、宿泊等のお金は気にしないでくださいね。私もわがままを言ってしまったので」
「ナロさまああ」
会話に入れないので、エリスがナロに抱き着いて離れるという一連の流れをボーと見ていた。
そもそも、この国の名前ってなんなんだろう。……怪しまれるからやめておこう。
「そうだ、ナロ様。そもそも、この国はなんて名前の国なんですかっ!?」
エリスの口が動く。
心の中が読まれたかと思った。というよりも読まれた!?
「エリス様もジン様も、他国から来たようですものね。ここはイベラザークという国です」
「ふむふむっ」
「ここステリアが、イベラザークの南に位置していて、北東に進んでいくと、アザゼム、ということになります」
地図上の丸い国の中を、指があっちこっち、行ったり来たりする。
アザゼムまで3日と考えると、イベラザークは随分と小さい国のようだ。
「では、行きましょうか」
ナロの出発の合図で旅が始まった。
*
ステリアは森に囲まれた町だ。まずは、その森を抜けなければならない。夕方には森を抜けて第1地点、イラスに着く予定だが、念のため、ランタンを1つ持ってきた。そう、こいつのせいで荷物がかさばっているのだ。
「おいおい、まだ出発したばかりだぞ。少しはペースを考えろよ」
エリスは一人でスンスンと歩いていく。
俺とナロはゆっくりとペースを合わせて後を追う。
「体が勝手に動くんですっ!」
エリスが振り向いてニコニコしながら大声を出す。驚いたように、小鳥が飛び立つ音が聞こえた。
「ジン様は、エリス様と古い友人なのですか?」
「……腐れ縁ってやつかな。あまり親しいってわけじゃないけど」
なるほど、とナロが頷いた。
この森の中は、たくさんの人が歩き、一つの道が出来ている。固くなった土の上に枯葉が覆い被さり、周囲とは明らかに違う様が、目的地へと手招きをしてくれている。
サクサクと気持ちいい音を立ててくれるので、あまり疲れや飽きも感じない。俺は、まだ誰も踏んでないであろう枯葉の感触を独り占めできるため、道の端を歩いて進んでいた。
*
「わあ! あれがイラスですかねぇ?」
エリスが森の中から見える、集落を指さした。
「もうすぐ、到着ですね」
「少し早く着いたかもな」
俺はナロの横を歩きながら、答えた。
まだ、日は落ちていない。
エリスのハイペースのおかげで、自然と早く歩いていたのかもしれないな。
「私が一番乗りですねー!」
エリスはそう言うと、小走りで進んでいく。
「あいつ、またっ! あんまり遠くまで行くなよ」
「エリス様、楽しそうですね」
ナロがクスッと笑った。
ふええええん、と転んで泣いているエリスを見つけたのは、その直後だった。
いつもありがとうございます!




