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転生令嬢は特殊能力がお嫌い  作者: エビフライ
一章 天から二物貰ったらヤベーの混ざってた件
1/3

プロローグ

書きたかったジャンルにとうとう手を出しました。初の試みなので気楽に読んで頂ければ幸いです。

『お先に失礼します。お疲れ様でしたー。……はぁ、やっと終わった…イベント早く回らなきゃ…。』


 吾輩はゲーマーである。兼業ゲーマーで重度のオタクでもある。

 ジャンルはハマる漫画やゲームによって変わる為、知識幅の格差が酷いがオタクあるあるの範囲内だろう。個人的にはRPGとかホラーが好みである。


 中々ふざけた自己紹介だが『私』という人間を理解するのには手っ取り早い。ちなみに性別学上はメスである。


 現代で生まれ落ち無事すくすくオタクという『私』が育ち、社会人になる頃には定期的に同人誌を出せるレベルで趣味人を突っ走っていた。

 画力は如何程か?触れてはならぬ。断じて。女性が年齢を聞かれて目を据わらせるが如く趣味人にも地雷はある。



『ソシャゲ掛け持ちし過ぎたかな…でも全部面白いしね…帰ったらあのゲームと同時進行すれば行ける行ける…。


………えっ、あ、ヤバッ…。』



 『私』という人間は効率的に物事を行うのが大好きだった。

 理由は簡単。単に時間が足りないからである。



 社会人ならともかく学生の頃は暇??抜かしよる。片腹痛いわ。

 寧ろ時間が足りないと気づいたからこそ、効率化に走ったきっかけでもある。

 そう。私達には圧倒的に自分に使える時間が限られているのだ。自分の体調管理も兼ねてきっちり睡眠も取らないとならないのに、勉学に家事に仕事。フルスロットル。

 暇な人種なぞそれこそニート以外には存在しない。人類皆お疲れ様である。


 さて、ゲーマーでオタクで効率作業大好きな『私』だが、今現在階段の下に無様に転がっている。




 訂正、頭から血を流して駅の階段下で無様に倒れている。



 周りには人だかりができ、意識が辛うじてある虫の息の『私』を見て顔色を悪くしている人達が何人か居た。

 駅員さんらしき男性や勇気ある通行人が必死に『私』に呼びかけ励ますが、残念ながら無駄な努力と言えるだろう。



 本日、『私』は居るか居ないかも分からない神のみもとへ。

 もしくはあるかも分からない天国地獄のどちらかへ旅立つようだ。



 よくあるトリップには付き物の「事故死」だが、今回は完全に『私』が悪い。言い逃れ不可避。地獄に行かされる謂れは無いが、いい子では決して無い為に成仏させて貰えるのかも心配である。



 原因その一: 寝不足。理由はゲームによる夜更かし。効率を言い訳に睡眠時間を削った。ダメな大人だな。


 原因その二: 歩きスマホ。オート戦闘が可能なゲームな為、戦闘開始ボタンを押すだけのつもりだった。もっと言うなら移動中の時間も勿体無いと思って。


 原因その三: 連勤明けの帰宅途中。見事に疲れていた。体力ゲージがあったらおそらく赤になってただろう。



 上記三点の原因により足を見事に踏み外し、尚且つ咄嗟にバランスを取る事も手すりに捕まる事も出来ず、そのままゴロゴロと全身をくまなく使って『私』は階段を降りきった。


 さよなら現世。まだまだやりたいゲームがあったし、欲を言うなら部屋を掃除させてほしい。

 今すぐ家に積み上がっている同人誌やら自分の原稿やらをデリートしたい。いっそ誰か部屋ごと燃やして欲しい。辛い。


 死後に私の部屋を整理する誰か、どうか余計な事を漏らさずにいてくれ頼むから。

 走馬灯も特に無くくだらない事を思いながら、『私』は必死に声をかけてくれる人達を尻目にゆっくりと瞼を閉じた。



 齢二十と数年。以上、『私』が積み上げた時間の終わりの瞬間だった。




「とか思ってたらここ何処よ。何これ受付カウンター?ツッコミどころ満載過ぎでしょこれ。」



 目を開けたら異世界とか神様と対話とか一瞬気にしたが、全くそんな展開は無く視界に広がるのは白くだだっ広い空間。そして目の前にはカウンターテーブルと一枚の紙とペン。

 人っ子一人おらず生きた音は一切しない謎の場所だった。



「やっぱり神様みたいなお偉いさんが平民にいきなり話しかけるみたいな展開は無いか。フィクションだからこそ許されるよなーああ言う高待遇は。

まぁいいや、ええと……なになに…?」



 一人で納得しながらペンを持ち紙に書かれている文字に視線を落とす。

 ざっと見る限りさほど難しくはない質問が並んでいる。

 裏面にもそれが続き、最後に自分のサインで締めくくられるような形だ。



「質問が

『転生出来るとしたら次はどの生物になりたいですか』とか

『転生出来たらどのような環境がいいですか』とか、完全にアンケートじゃん!第三希望まで枠あるし!

知ってるぞ、これ第一希望じゃなくても文句言うなよってパターンだろ!

ていうか転生に関する質問事項しかないじゃん!半強制輪廻転生かい!」



 思わず一人ごちる。

 驚きの事実だ。天使悪魔がいないならともかく、死後直後に転生希望アンケートを取らされるなんて誰が思うか。


 しかも思いの外細かい。

 人間以外の生物に転生希望の場合はまず草食系か肉食系かをチェックする必要があるらしい。

 そんな詳細が必要ならいっそ大人しく面接してくれ。口頭の方が早いだろうに。



「希望を聞いてもらえるだけ有難いか…。とりあえず人間にチェックっと……。」



 色々な転生やトリップものを読んできたが、あまりに唐突過ぎて人外の何かに転生したりしてる主人公達はかなり見てきた。


 それが犬猫、竜とかならまだしも昆虫や圧倒的弱者の位置のモンスターとかになったらシャレにならない。

 ヘタしたら自分より大きい捕食者に捕まって、いただきまーす!からのモグモグムシャアペロリでご馳走様ENDである。選択肢がある以上それだけは断固阻止。



「希望家庭層…?…あぁ、裕福な家庭か一般家庭かどっちがいいかって事か。多分倍率高いだろうなぁ裕福な家は。

一般家庭も悪くないけど、転生先の時代によるし…。

家族構成とか気にしないしなぁ……。ええい、書くだけ書こう!南無三!」



 すらりと第1希望に『裕福な家庭(王族は却下)』と書く。


 夢見る乙女なら1度は夢見る「お姫様」。

 大人になった今なら分かるが、アレはヤバイ。なったりしたら人生が詰む。ある意味一番のトラップだ。


 私だって夢見なかったわけじゃ無いが、よくよく考えるなら王子ならばまだしも姫という立場は血筋、ひいては国と国の繋がりを作るのに最適なのだ。

そう。

 つまりは姫になった時点で政略結婚からは逃れられない。更には体のいい母体として利用されかねない。

 どこかの漫画のヒロインが言っていた台詞だが、『お姫様は何かを選べる程偉くない』のだ。ごめん私はちょっとは好きに生きたい。


 貴族も似たようなものだが、王族に比べれば責任や重圧は可愛いものだろう。「背負う者」と「支える者」では在り方が違い過ぎる。



「んで…次は……希望時代か……って言われてもなぁ。

そこそこ現代に近いのも中世っぽいのも悪くないし……。おまかせでいいか……。」



 石器時代みたいな原始的な世界でなければなんでもいい。発展文化はどうであれ人類が文明人として居るなら高望みはしない。


 とりあえず食事調達に『Let's ハンティング☆』みたいな流れで無ければいい。頼むから某狩りゲーみたいに現地調達は勘弁願いたい。人間卒業は全く目論んでません故。


 なるべく平和な世界が好ましいのだけれど、そうは簡単には行かせてくれないよなぁと思いつつ希望を書き込む。



「それで…次の項目は…。」



 流れるように次の文字を追うと、書かれていた内容に思わず目を見開いた。

 ドキドキと、先程まで無かった胸の高鳴りが徐々に増していく。


 そこに書かれていた項目はーーー



「希望容姿……だと…!…は?マジで?書いていいの?」



 なんと素晴らしい心遣いだろうか!!


 あっさりと人生終了させた悔いは一度置いておいて、とりあえず死んで良かった!本気でそう思った。


 …と言う歓喜もつかの間、よく見ると解答欄には他と違って第六希望まで用意されている。つまりこれも上記の質問達に漏れず、「希望が通るとは限らないけど宜しくね」と言う事である。そんなこったろうと思った。


 しかしチャンスがあるだけ上等。希望が通る確率が少しでもあるなら賭けるべきだろう。人生もガチャと一緒。なんでもやって見なければ結果は分からないものだ。

 案外上手くいくかも分からないのだから。



「よーーし張り切って書くぞー!しつこい位似たような希望書くぞ!

ぜーーったい通させて貰うからなァ!!!!」



 オラオラァとただでさえ少ない女性らしさをかなぐり捨てて、テンション爆上がりしたままの勢いでペンを走らせる。先程と違って手に力が入る。


 

 『私』には理想の女、もとい女キャラが居る。

 いつから惹かれていたのかはおぼろげだが、間違い無く幼少期からそういう女に惹かれていた。

 もっと言うならその色合いに近ければ男でも問答無用で惹かれていた。

 現実に居ようものなら絶対崇拝対象にしていただろう。


 我ながらキモいと思わないでもないが、実際『私』の好みを把握仕切っていた悪友達はそういうものを見つけ次第『私』に紹介し、いくら『私』が抗おうとも笑顔で背中から沼に向かって突き落とした。

 そして案の定ハマる。安定のテンプレである。流石に学んだとも。

 私はどう目を逸らそうとも、それが好きなのだ。




「黒髪で!青眼で!!出来ればバストサイズはD以上の美少女でお願いしたい!!!!

身長とか肌の色は問わないから!!!!もうこの際家庭事情が救いようの無い程ドロッドロでもいいから!!!


黒髪ロング青眼美少女に生まれ変わらせてぇえええ!!!!!!!!」




 誰もいないのを良い事に叫びながらガリガリと音を立てて第六希望までみっしり書き埋める。

 第一希望はブロンズ肌、第二希望は白人のような白い肌、第三希望は背は小さめなど細かな違いはあるがおおよそ希望は似通っている。

 当然『黒髪 青眼 美人』が前提条件だ。これだけは譲れない。



「ふ、ふふふ……ここまでしつこく書いたんだ…転生時に黒髪青眼じゃやかったら、転生した先の世界の神々を尽く批判しまくってやる…ぜぇえったい信仰なんかしないぞ…!!!」



 目を据わらせながら残りの質問事項を埋めていく。

 頭には理想の女の容姿になれるかでいっぱいではあったが、一応自分に有利になるような選択をしたつもりだ。


 魔術は使える方が良いか否かは当然「はい」

 運動神経は良いか否かも当然「はい」

 特集能力などの欄はさして気にも止めなかった為「どちらでも良い」を選んだ。

 色々とその後も確認事項があった為目を通したが、こんなものだろう。



「ラストはサインね…。……と、これで良いのかな?」



 仕上げに『私』の名前を書き込む。もう二度と使われない名だ。

 少し切ない気持ちになりながら紙から手を離すと、ゴトン!と重さのある荷物が落ちたかのような音が空間に響く。音源は背後だ。


 振り向くと数メートル先に木造りの扉があった。

 先程までは確実に無かった為、どう考えても「ご案内」用の扉だろう。思わず笑みがこぼれた。



「通れってか…。ハッ、いよいよらしい展開になってきたじゃんよ。」



 近づくと金属のドアノブ。現代でもよく見られるものだ。

 扉自体もシンプルなもので、おそるおそる触れてみても特に変わった様子は無い。

 こういうものは大体術式とか何かが書かれているのが創作では鉄則だと思っていたが、残念ながら目を凝らしても見当たらない。まったく、ここの管理者は現代人のロマンが分からないみたいだね。勉強し直せ。



「あーあ!あのゲームも全然手を付けて無かったし、アレなんかストーリークリアしたばっかでやっとやりこみ要素に手を付けれそうだったんだけどな~!しかもあのホラゲーなんか来年には新作発売決定だったのに…。

あのソシャゲはイベント中だったし…くそぅ…本当にこれで『終わり』か…。」



 散々アンケートにノリノリで答えていたが、いざその時が来ると少し感傷的になった。

 我ながら今世は楽しかったようだ。終わりの時が勿体ないと感じてしまう位には。

 ってかこれアンケートが完全に転生ノリだったから転生するの疑って無いけど、実はそれがフェイクでした!なんて事は無いよね?大丈夫なんだよね?



「…しょーがないよね。うん、うじうじすんのも嫌だし、行くだけ行こうか!」



 意を決して扉に手をかける。

 推せばいいのか引けばいいのか分からなかったが、とりあえず押して見ると意外と軽さが感じられた。

 ギィッと押し開ければ漏れる光が身を包む。あまりの光の強さに先を見る事が出来ない。

 眩しさに片手で目を庇いながら扉の先に有る空間に身を預けた。



「(あ…ねむ…)」



 扉の先に立てていた事から床はあるんだなと、とんちんかんな事を思いながらも歩を進めようとする。

 しかしそれは叶わず、あくびをする間もなく突如大波のように襲ってきた眠気に勝てず『私』はその場に倒れ、眠りに落ちた。



――――さようなら前世の『私』



『あらぁ、もう起きちゃったの?うふふ、おはよう私のレイチェル。』



――――おはよう今世の「私」



 あれから、どれくらいの時間が経ったのか。

 目を覚ましたらやたら美人の女性の胸に抱かれていた。

 そして―――。



「あぅあ~…(案の定のゼロスタート( はじめから)かよ~。)」



私は見事に赤ん坊になっていた。

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