5話:勇者と聖剣
鑑定が進んでいく。
ある者は斧戦士と言う能力を開花させ、斧を使った戦闘が得意な様だ。また、ある者は炎魔術師と言う、火魔法の上位魔法が使える能力を開花させた。
「そろそろ、俺の番かな。」
国英に先を越されてから、少し後ろで様子を見ていた祐樹が鑑定石の前へ出る。先人達と同じく鑑定石に手を乗せ、右手に紋様を付ける。
「力を示せ」
祐樹の発するキーワードに反応して、手首が光る。
そして、表示されたステータスをサビエロと共に確認する。今までの生徒達と同じ流れだ。
「な、なんとっ!」
しかし、サビエロによって、今までの流れが変わってしまう。
「国王様っ!出ました。勇者ですっ!この者、祐樹殿が此度の助け人である勇者でしたっ!」
サビエロが明らかに興奮した様子でキースベルに報告する。
そう、祐樹のステータスには、こう記載されていた。
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『勇者』
能力
聖剣を創造し、自在に扱える。神聖なる力により、全てに耐性を持ち、常人より早い熟練と無限の成長を得る。
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……チートである。
能力を翻訳すると、聖剣はともかく、全デバフ耐性と、経験値アップと限界突破だ。
一切状態以上にならないと言うだけでもチートである。更に、経験値アップで、他者よりペースでスペックアップが可能。更に更に、他者がレベル100までしか成長出来ないのにも関わらず、1000でも10000000でもレベルを上げ続ける事ができる。
この世界の救いである部分は、いかに勇者と言えども、努力は必要と言うところだ。ラノベや漫画、アニメのように、ベクトルを操ったり、スーパー◯イ◯人になったり、全知全能などと言った能力ではない。なんでも出来る、なんでも倒せると言うわけではなく、強くなれると言う能力なため、勇者でも、寝て過ごせばニートと同じ、無職でも努力すればニート勇者を倒せる。こう言ったところが現実っぽい。
「そなたが、勇者であったか。あれをここに!」
キースベルの言葉に後ろに控えていた兵士の数人が動く。
「お持ちしました!」
数分して、ガラガラと布を被せた大きな台車を押してきた。
「こ、これは?」
祐樹がキースベルに確認する。
「布を。」
「はっ!」
キースベルの命で兵士により布が捲られた。
そこには、純白の剣が一振り乗せられていた。
「これは、かつての助け人であった勇者が創造した聖剣である。これを扱えるのは勇者のみだ。そなたも聖剣を創造出来るだろうが、すでに一度大厄災を退けた聖剣はその熟練度がケタ違い。これを使う方がそなたの為となるだろう。」
キースベルが純白の剣について説明する。
これが聖剣なのか。とクラスメイトも剣の雰囲気に飲まれている。
「ありがとうございます。」
祐樹はキースベルに礼を言うと、恐る恐る聖剣に手を伸ばす。
祐樹が剣に触れた瞬間、その場にいた者全員が大きな鼓動が部屋に響くのを感じたのだった。