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96日目 発展魔法陣製図:魔法自在継手の製図【2】

96日目


 ギルの舌に赤い目玉&口。人間は限界を超えられるのだと感覚で理解した。


 ギルを起こし、ちゃっぴぃを肩車しながら食堂へ。どうやらこの位置は敵への威嚇&俺への媚を売るのに最適らしく、ちゃっぴぃは頻繁に『ふーッ!』とすれ違う女子たちに威嚇をし、『きゅーっ♪』って俺のほっぺを触ったり胸を頭に押し付けたりしてきやがった。たいそう歩きにくくて辟易とする。


 昨日少し夜更かししたせいか、妙に眠気が残っていたため、朝食にてブラックコーヒーを飲む。あの何ともいえないオトナなほろ苦さが朝から実にエレガント。素晴らしい香りがゆっくりと体に染みわたっていって、なんだかとってもダンディな気分。


 『きゅ、きゅう……♪』って、ちゃっぴぃは飲めないくせに俺のカップを手に取って、間接キス……と、カップの縁の全周をぺろぺろしてきやがった。苦手な苦いものを口にしつつも上目づかいで俺への媚を売って来るとか、夢魔っていったいどれだけアレな種族なのだろう。


 ……なお、今日も今日とて『ふーッ!! ふーッ!!』ってちゃっぴぃにガチ威嚇されていたロザリィちゃんは、死んだ顔してブラックコーヒーを飲んでいた。というか、自分が飲んでいるものがブラックコーヒーであることにすら気づいていなかったのだろう。


 口の端からつっとコーヒーが垂れてきていたので、ちゃっぴぃをクーラスに預けたうえで、『ママは未だにおねむなのかな?』……と、優しく口元にキスをする。次の瞬間、結構本気でぎゅっと抱きしめられた。


 『……ごめん、このまま抱かせて。むしろ抱いて』って言われてもう、なんか心臓が破裂するんじゃあないかって思ったよね。もちろん、俺の全身全霊の愛をこめて抱き締めたとも。


 なお、俺たちがそんな風にハグしている間、ギルは今日も『うめえうめえ!』とジャガイモを貪っていた。今日はそんな気分だったのか、ポワレ、ロースト、マルヤキ、ソテー、グリル、ピカタ、エッグ婦人、ヴィヴィディナ(クモ形態)までもが同じ皿からジャガイモを突いていた。エッグ婦人とヒナたちはヘドバンしながら猛烈にジャガイモを突いていたし、ヴィヴィディナも全身の目玉をばちばちさせまくっていたっけ。


 『使い魔の食事に人が混じっているのか、人の食事に使い魔が混じっているのか。それがよくわからないからすごく怖い』って通りすがりのバルトラムイスのシャンテちゃんがコメントしていた。そんなの、言われなくても……いや、どっちだ?


 さて、今日の授業はシキラ先生の発展魔法陣製図。今日は普通に時間通りに始まった……というか、最初からシキラ先生が教室にいた。しかもなぜか教壇じゃなくて俺たちの席にいる。


 『先生が生徒の席にいると割とビビるだろ?』……なーんて雑談をしつつ、シキラ先生はちょこちょこと席を渡り歩いていく。誰かやって来たら別の席に移って、その席にも人が来たら別の席に移って……人が集まるにつれて、移れる席も減ってきた。


 で、一番最後に教室にやってきたポポル(たぶんギリギリまでデザートを楽しんでいたのだろう)を見るなり、『先生ーっ! 今日も授業よろしくお願いしまーすっ!』って煽りだした。


 『ほらよぉ、もう空いてるところなんて教壇しかねえぞ? じゃあ、お前の席は教壇だろ? でもって、教壇にいるってことはお前が先生ってことだろ?』……と、見事な三段論法により、ポポル先生が爆誕する。


 『なんか教えてくれよ先生よぉ!』ってシキラ先生渾身の煽りにより、ポポル先生は大変おどおどしながらも、『じゃ、じゃあ……美味しくクッキーを食べる秘訣を……』って言われるがままにチョークを握った。


 こんな感じで授業前の茶番は終了。『最近マンネリ化してきて詰まらねえし、話題も尽きてきたからな! じゃあ、いっそこっちから作ろうって思ったわけよ!』とシキラ先生は上機嫌。もしかしてあの人、暇なんだろうか。


 ちなみに、すでに同じ無茶ぶりをバルトラムイスとアエルノチュッチュにやったらしい。『バルトは流行りの観劇について歴史的・文化的背景から鑑みた考察を語ってくれた。アエルノは暗黒魔法界における龍種と蛇の関係性について小一時間かけて語ってくれた。無茶ぶりのつもりだったけど、どっちもなかなか興味深くて面白かった』とのこと。


 それに比べてポポルが語った『クッキーはとにかくたくさん頬張るほど美味しい!』の何と中身の無いことか。せめて秘蔵のクッキーのレシピの一つでも公開すればいいものを。次があるのだとしたら、俺が教壇に立つのも悪くないかもしれない。


 肝心の授業内容だけれど、前回に引き続き自在魔法継手の製図を進めていく。ただまぁ、基本的な説明は前回で全部終わらせてあるし、そもそもとして俺たちだってもうそこそこ製図の経験はしている……要は、今更初歩や基本的なことを質問するってことは無い。


 何が言いたいかって、これと言って描写するほど大したことはしていないってことだ。実際、シキラ先生も『質問が来ねえとマジでこの授業暇なんだよなァ……』って欠伸していたし。


 そんなわけで、なんとなく『実はうちのちゃっぴぃがこの前から反抗期で……』と相談してみる。『ああ、だから今日は一段と夢魔のマーキングがエグかったのか』と普通に返された。俺たちレベルじゃわからなくても、シキラ先生レベルなら普通にわかるらしい。というか、普通に発情期だって見抜かれてる。グランウィザードマジすげえ。


 『今は良いだろうけど、十年後は気を付けとけよ。いろんな意味で問題になるし、体が持たねえから』ってシキラ先生にしては珍しく普通に優しげな表情で肩ポンされたんだけど、これってもしかして思った以上にヤバいアレなのだろうか?


 なんだかんだでそのまま普通に製図して授業は終了。あ、授業の終わりに『来週は今までの課題の提出だから、再履になりたくないやつはきっちり仕上げとけよな。ま、俺としてはお前らが再履でも全然アリだけど!』ってお言葉を頂いた。


 なんだかんだで、カチコミによって勝ち取った資料があるから致命的なことにはならない……と、信じたいところではある。ミーシャちゃんやポポルやヒモクズフィルラドがどれだけ己を律することが出来るのか、それだけが心配だ。


 授業の後、ちゃっぴぃの様子はどうかな、やっぱりアリア姐さんには極上の栄養剤で貢がないと筋が通らないかな……なんて思いながらクラスルームの扉を開けたところ、なんか割と普通にヒナたちと遊んでいるちゃっぴぃと、窓際で夕焼けの光で日向ぼっこしているアリア姐さんを発見。


 女の子なら同じ部屋にいるだけでメンチを切られたり威嚇されたりするのに、なぜかちゃっぴぃはアリア姐さんにそういった敵対行動を取ろうとしない。


 それどころか、アリア姐さんがにこっとちゃっぴぃに笑いかけると、ちゃっぴぃは『きゅ、きゅう……!』ってまるでステラ先生かのように耳の先まで真っ赤になった。どういうことなの。


 『お前、ちゃっぴぃになにしたんだ?』とジオルドがアリア姐さんに問いかける。「女の子には秘密があるのよ♪」とでも言わんばかりに、アリア姐さんは人差し指をくちびるにあて、ぱちりとウィンクした。


 『子供とはいえ、発情した夢魔を赤面させるほどのことをしたんだろうな』って誰かが言った。『違うの……うちのちゃっぴぃは反抗期なだけなの……!』ってロザリィちゃんがめそめそしながら呟いた。『存外面倒くさいなお前!』ってアルテアちゃんがめそめそしているロザリィちゃんを抱いて慰める。アルテアちゃんの気高さはどこまであがるのだろうか。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ちょっと唐突だけれど、雑談中に気付いたことを纏めておこうと思う。


1.ステラ先生

2.ロザリィちゃん

3.アルテアちゃん

4.アリア姐さん

5.パレッタちゃん

6.ピアナ先生

7.ミーシャちゃん


 ここ数日観察してきた限り、以上の順でちゃっぴぃの威嚇の強さが違う。ステラ先生がダントツの一位で、ロザリィちゃんに対しての威嚇もすさまじい。上記二人は三位以下のメンツとは明らかに威嚇のレベルが違う。


 で、アルテアちゃんとアリア姐さんは大体同じくらい。ピアナ先生とミーシャちゃんも同じくらいだけど、ピアナ先生への態度は他の人たちと比べてなーんか違うみたいだから、一概に比べられないかもしれない。


 一応メモしておいたけれど、この記録が何の役に立つのかはわからぬ。気になっちゃったからしょうがないよね。


 ギルは今日も大きなイビキをかいてぐっすりと寝ている。そしてちゃっぴぃは俺のタオルケットを頭からかぶってなにやらもぞもぞ動いている。寝ぼけているのかしらないけれど、ぽんぽんを冷やさないならそれでいいや。


 俺もさっさと寝よう。ギルの鼻にはマナスープでも垂らしておく。おやすみにりかちゃんまじきゅーと。

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