表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/367

91日目 魔法回路実験:実験6の解説

91日目


 ギルの眉毛がくるくる。意外にもちょっとカッコよかった。そしてひたすら辺りがちゃっぴぃのヨダレ臭い……俺の顔から漂ってるのか? 


 ギルを起こし、ちゃっぴぃを情熱的に抱っこしながら(いつもの抱っこだと不満げだった)食堂へ。俺の体から漂うちゃっぴぃのヨダレ臭さに気付いたのか、『今日のお前一段とヤバいね』とポポルが煽ってきた。


 せっかくなので、ポポルにちゃっぴぃをけしかけてみる。ちゃっぴぃのやつ、『きゅーっ♪』って上機嫌でポポルの耳を齧りだした。もちろんヨダレはレロレロ。上等のジャーキーでも食べるかのように、ポポルの耳をしゃぶっていたっけ。


 が、意外にもポポルは冷静。悲鳴の一つもあげない。『ヴィヴィディナ感謝祭でフィーバーするのに比べたら何でもない』とのこと。いろんな意味で頭おかしいんじゃないかと思ってしまった俺をどうか許してほしい。


 ちなみに、やっぱりちゃっぴぃはロザリィちゃんをはじめとした女子には容赦ない威嚇をしていた。アルテアちゃんやパレッタちゃんにも『ふーッ!』って歯を見せて威嚇していたし、近くを通りかかったバルトやアエルノの女子にもメンチを切る始末。『ご機嫌斜めなのかなあ?』ってライラちゃんが不思議そうにしていたっけ。


 ロザリィちゃん? すんげえしょんぼりしながらもそもそとハニークロワッサンを食していたよ。残念ながら、ちゃっぴぃが俺にべったりくっついていたため慰めに行くことは叶わず。せいぜいが爽やかイケメンウィンクを飛ばしたくらい。


 ホントは投げキッスでもしようかと思ったんだけど、ちゃっぴぃが俺の指(しかも両手である)をぺろぺろしていたからできなかったんだよね。


 あえて書くまでもないだろうけど、ギルは今日も『うめえうめえ!』と嬉しそうにジャガイモを貪っていた。いつだって変わらないこの風景は、もしかしたら何よりも大切なものなのかもしれない。


 今日の授業は魔法回路実験。前回行った最後の実験の解説。既に実験そのものは終わっているし、どんな形であれレポートだって終了しているわけだから、みんなあまり気が引き締まらないかんじ。


 そしてこの裏でアエルノの連中が地獄の実験をやっていると思うと顔がにやけてくる。俺ってばマジ感情豊かじゃね?


 肝心の解説の担当者は……なんと、連続でステラ先生。ひゃっほう。


 『やっぱり最後の解説はみんな気が抜けちゃうよねー』なんて言いながら出欠を取るステラ先生がマジキュート。ついつい杖をコンコンしちゃうところが最高に可愛い。最近暑さが本格的になってきたからか、ぐいって結構派手に腕まくりしているところとかもう言葉にできないくらいに女神。汗で輝くうなじがまぶしい。


 『やっぱり今日もステキですね』ってありのままを告げる。『もう! 大人をからかっちゃいけませんっ!』って真っ赤になりながら俺の頭をぺしって叩いてきた。最高かよ。


 やっぱりステラ先生は今日も女神だ……なんて思った次の瞬間。


 『ルァァァァァァッ!!』ってちゃっぴぃのガチ威嚇が教室に響き渡る。『ふーッ!! ふーッ!! ふーッ!!』って発狂したんじゃないかってくらいにヤバい表情でずっとステラ先生を睨みつけていた。


 さすがのステラ先生も、『ひゃあっ!?』って驚いた声を上げていた。『え、ちゃっぴぃちゃん……?』って困惑の表情を隠しきれていない。


 というかあいつ、なんで普通に教室にまでついてきていたのだろうか。この授業には連れてこないようにしていたはずなんだけれど。こいつぁいよいよもっておかしくなってきたのかもしれない。


 ともあれ、ちゃっぴぃの猛り方は凄まじいものがあった。アレは明らかにロザリィちゃんにする威嚇よりもレベルが違う。『こら!』って俺が押さえつけなければ、たぶんちゃっぴぃはステラ先生のその大きなお胸をひきちぎろうとしていただろう。


 とりあえず、『すぐに黙らせますから……!』とステラ先生に頭を下げる。『なんか少し前からマジで様子が変だよな』、『変なものでも食わせたんじゃないの?』、『親に似たんだろ』……なんて観衆がざわめく中、事態は急展開を迎えることに。


 ちゃっぴぃのやつ、ステラ先生、ロザリィちゃん、その他女子をおもっくそ見下し、勝ち誇ったように『きゅうん……?』って嘲笑いながら。


 『きゅーっ♪』って思いっきり俺にキスしてきやがった。しかもぶっちゅううううう! ってかなりガチめのやつ。


 『きゃ……!』ってステラ先生が超真っ赤っかに。『え……』ってロザリィちゃんは超真っ青に。そんな二人なんてどうでもいいとばかりに、ちゃっぴぃはまさに夢魔らしく俺のくちびるを貪ってきやがった。


 俺の身も心も何もかもがロザリィちゃんとステラ先生のものだというのに。一体あいつは何を考えているのだろうか。


 このままじゃ授業を始めることもままならないと判断したため、力づくでちゃっぴぃを引き離す。物欲しそうな顔をしてこちらを見つめてきたので、とりあえず左手を差し出しておいた。キャンディ代わりとしては十分だろう。実際、その後はずっとあいつ俺の左手をぺろぺろしてたし。


 開始早々そんなアクシデントがあったものの、何とか授業が始まる。内容はやっぱり前回の実験の解説について。虚実制御と比例制御の特徴について、その原理からざっくりと学んでいく。


 ……とはいえ、基本的には今までの回路の集大成というだけあって、解説事項はそこまで多くない。というか、割と前回の実験中にガッツリ解説を聞いた気がしなくもない。加えて言うなら、もう実験しなくていいものだから、みんな面白いくらいに拭抜けていた。


 何より、ステラ先生自身が冷静じゃなかった。『はー、あっついねえ……!』、『せ、先生なんだかすっごく熱くなってきちゃった……!』、『な、なんだろ、すっごくこれ……』と、時折思い出したかのように話しだし、取り繕うかのように教科書でパタパタと顔を仰ぎだす。


 で、ちらちらと俺(と、俺の手を舐めるちゃっぴぃ)を見て、ぼふん! って擬音が聞こえそうなくらいに真っ赤になって、見ちゃいけないものを見てしまったかのようにあわあわと目をさまよわせていた。


 やっぱり、ウブなステラ先生にはアレは刺激が強すぎたらしい。『だ、だいたん……!』ってこしょこしょとつぶやいていたから間違いないだろう。


 そんなわけで割とあっさり授業は終了。レポートの返却も無いから、キイラム先輩やノエルノ先輩も姿を見せず。


 ただ、授業の最後にステラ先生から通達が。来週からはティキータと合同で対人戦闘訓練を行うとのこと。『日程の関係で実技を入れているけど、この授業もペーパーテストがあるから、対策は怠らないようにねっ!』ってステラ先生は言っていた。


 夕飯食って風呂入った後の雑談中、ちゃっぴぃの髪を梳かす&あやしていたところ(やっぱりずっと俺に媚を売り続けていた)、衝撃の事実が判明。


 なんかちゃっぴぃのへその下あたりに、複雑にしたハートっぽいかんじの痣……というか、紋様が浮かび上がっているのを発見。どういうことなの。


 しかも、よくよく見てみれば、背中にも腕にも……顔にもうっすらと紋様が浮かび上がっている。でも、ちゃっぴぃは『きゅうん♪』ってにこにこしながら俺の体に抱き付いてくるばかりで、別に痛がっているとかそんな感じは一切しない。


 『な、何かの病気なの……!?』ってロザリィちゃんが青ざめた顔でやってきた。ロザリィちゃんってば、どんなにちゃっぴぃに威嚇されてもへこたれず、『ごめんね……! 何もできないママでごめんね……!』って涙目になりながらちゃっぴぃを抱きしめていたっけ。


 ……ロザリィちゃんに抱きしめられた瞬間、ちゃっぴぃの謎の紋様が魔力的に輝いたように見えたのは気のせいだろうか? なーんか、あいつの髪の毛もなんとなく明るい色になっているっぽい感じがするし、眼の色もちょっと変わっているような気がしなくもないんだよね。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。そしてちゃっぴぃは眠りこけながらも俺にキスをしまくるという奇妙な器用さを……待て、こいつの紋様、なんか濃くなってない?


 へその下のハート紋様が明らかに風呂上がりより濃くなっている。顔の紋様も今ははっきりとわかるレベル。腕や背中なんてタトゥーのそれと遜色ない。


 マジでいったい何が起きてるんだ? 威嚇もそうだし、紋様もそうだし……。何かヤバい魔法生物にでも憑りつかれたのだろうか? でも、そんなヤバいのがうろついていたら、クラスの誰かがすぐに気付きそうなものだけれど。


 まぁいい。明日ドクター・チートフルに診せれば解決するだろう。


 いい加減ヨダレで俺の顔がふやけてきた。ギルの鼻には使用済みタオルでも詰めておこう。どのみちそろそろ捨てるつもりだったから惜しくはない。みすやお。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ