表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/367

9日目 レポート&クッキー

9日目


 日記がバグってる。わーぉ。


 ギルを起こして食堂へ。誰もが喜ぶ休日のはずなのに、食堂にいる連中(主にルマルマとティキータ)の顔が暗い。やっぱりティキータの方もあまりレポートがうまくいっていないんだろう。ライラちゃんは死んだ目をしていたし、いつもならさりげなく休日限定デザートを貢いで元気づけるゼクトも机に突っ伏してピクリとも動いていなかった。


 朝食は無難にホットサンドをチョイス。野菜をしっかり摂れる上、なかなかに食べ応えのある逸品。しゃきしゃきの野菜の食感と、外はさくっと、中はふんわりしたパンの食感のコラボレーションが堪らない。


 ただ、『きゅーっ♪』とか言ってちゃっぴぃが真ん中の柔らかくて具だくさんな一番おいしいところを齧っていったのがわけわかめ。あの声を聴いた瞬間、無意識にホットサンドのうまいところをあいつの口へと持って行ってしまっていた。これが条件反射というやつなのだろうか。


 もうあいつが膝の上にいることに何の違和感も覚えなくなってきてしまっている……というか、逆に膝の上に適度な重さが無いと落ち着かなくなってしまう自分がいることに気付く。俺ってばいったいどうしちゃったのだろう。俺の身も心もすべてロザリィちゃんとステラ先生のものだというのに。


 ちなみにだけど、ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。『親友はホットサンドか? じゃあ俺もスペシャルなホットサンドにしちゃおっかな!』とか言って、握力で握りつぶしたジャガイモをジャガイモでサンドするという奇行を見せ出す。


 『これが至高のジャガイモサンドだ!』ってあいつはうまそうに食ってた。常識が恋しい。


 朝食後はクラスルームで昨日のレポートの続きを行う。つまるところ考察さえ書いてしまえば終わりだけれど、その考察が思い浮かばない。より正確に言うならば、与えられた課題に対しての考察がよくわからん。魔法回路なんてみんなトーシロなのに半波整流回路の考察を書けと言われてもどうしようもない。


 というかそもそも、半波整流回路なる単語を初めて聞いた。そういうのって実験中に言ってくれなきゃ意味なくない? 何のための授業なのか。


 フィルラドは既に悟りの境地に至ったのか、エッグ婦人のケツを追いかけ回して遊んでいた。ポワレ、マルヤキ、ソテー、ロースト、ピカタ、グリルも面白がってフィルラドを追いかけ、そのケツを突いていた。エッグ婦人はそんなヒナたちのケツを吟味し、フリフリ具合がイマイチなやつのケツをちょこちょこと突いていた。何だったんだろうアレ。


 なんだかんだで午前中には考察も書き終わり、レポートを完成させることに成功する。『考察どんな感じだ?』、『まぁ、ぼちぼちってところだろ』とクーラスと中身を確認し合う。二人とも大差なかったので、見当違いなことを書いてるってわけじゃあないだろう。これでダメだったら、ルマルマのほぼ全員がアウトだ。


 午後はロザリィちゃんのレポートを手伝おうかな……と思っていたところで、『きゅぅ……ん♪』ってなんかやたらとちゃっぴぃが甘えてきた。いつになく甘えんぼで、俺の腰にひしっと抱き付き、ロザリィちゃんの真似なのかぐしぐしと頭を押し付けてくる。


 ……おまけにほんのちょびっとだけとはいえ、夢魔の風格というか、ある種の色っぽさ(?)的なのを醸し出していた。おそらく意識的にちょっと大人びた仕草を心掛けたのだろう。ガキのくせに生意気である。


 『昨日も今日もお休みなのに、パパに構ってもらえなくて寂しいんだよね?』とロザリィちゃんがちゃっぴぃの頭を撫でる。ちゃっぴぃのやつ、『きゅ!』とかいって俺の腹に頭を埋めた。ガキのくせに恥ずかしがっているらしい。普段からこれだけ素直ならどれだけいいことか。


 ともあれ、甘えられたからにはそれに応えなくちゃあならない。せっかくなので、『じゃあ、一緒にクッキーでも焼くか?』とあいつとクッキーづくりをすることに。いつぞやにクーラスからもらったエプロンを着させてやれば、『きゅーっ♪』って実に嬉しそうににこにこしだした。


 で、クッキーづくりを始める。やることはいつも通り。ちゃっぴぃにはクッキーの型抜き作業をさせた。星型とかハート型とかいっぱいあったし、奴も思う存分に息を抜くことが出来てそれなりに楽しそう。子供は扱いが楽でいい。


 もちろん、それだけじゃあ芸が無いので俺はジャムクッキーの制作に取り掛かる。まぁ、ジャムさえ作ればそう大した手間になるものじゃないんだけどさ。


 なんだかんだでおやつの時間ごろにはジャムクッキーは完成。クラスルーム内がすんげえいいかほり。思わずうっとりしちゃいそう。


 『レポート頑張ったやつだけおすそ分けしてやる』って言って皆に持っていったら、『今夜頑張るんだから先に食べてもいいよな!』、『俺最初にご褒美ないと頑張れないタイプなんだよね!』って頑張っていないやつ筆頭のフィルラドとポポルが真っ先に手を伸ばした。解せぬ。


 ただまぁ、『おいしーっ♪』ってロザリィちゃんが喜ぶ姿を見ることが出来たのはよかった。マジで天使がお茶会してるのかって思えるくらいにかわいかった。俺、クッキーを一枚食べるだけであそこまで人を魅了できる人間を知らない。女神と天使なら知ってるけど。


 そんなことを考えていたら、『じゃむくっきぃの香りがするぅ……!』って目を輝かせたステラ先生がやってきた。ひゃっほう。


 もちろん『お好きなだけどうぞ!』と、ステラ先生にも振る舞う。先生、『えっ、ホントにいいの? みんなのおやつじゃ……』って遠慮しだした。そんなところも本当にステキだと思います。


 『足りなければまた焼くだけですから』って何度も説き伏せ、ようやく『じゃあ、遠慮なく……!』とステラ先生は大好物であるジャムクッキーを口にする。『おいひぃ……っ!』って見てるこっちが幸せになるような笑みを浮かべた。ステラ先生がキュート過ぎて逆に恐ろしく思えた瞬間だ。


 その後はみんなでクッキーを齧りながら雑談。『最初のレポートは辛いだろうけど、そのうち慣れるからがんばって!』って先生はステキな笑顔を浮かべてみんなを励ましていた。


 『気付いたことを自分の言葉でまとめるのが重要なの! だからホントは、それさえ守れていればレポートに良し悪しなんてないんだよっ! 内容が正しいかどうかなんて、ホントはそのあと考えることなんだから!』と、ステラ先生は行き詰ってる人の肩を優しく叩く。俺も叩いてほしかった。


 ただ、『どうせ、最初はみんな全部ボツだしねぇ……』ってボソッて言っていたのが非常に気にかかる。慌ててハッとこっちを向いて、『しーっ!』って人差し指を口に当てる姿が本当に可愛かった。あまりにも可愛すぎて、他のことなんてどうでもよくなるくらい。


 見とれていたら『ふーッ!』ってちゃっぴぃに思いっきり引っかかれた。あいつの行動ってマジでわけわかんねえな。


 夕飯食って雑談して風呂入って今に至る。なんだかんだで休日らしい楽しいひと時を過ごせたのは嬉しいところ。これでレポートが無かったら完璧だったのに。前期の内は二週間に一回はこうやってレポートの時間を割かなきゃならないと考えると、なんかちょっと損した気分になる。


 そしてやっぱり日記が書きづらくて敵わない。まさか一か月もしないうちに魔本化(?)するとは。上から無理矢理書いているけれど、やっぱりなんだかんだで目が疲れるし、読み返した時の読みづらさが異常。それでも普通に書き通し、誤字の一つも(たぶん)出さない俺ってさすがだと思う。


 今回は全然クレイジーなことしていないのに、やはりこうなる運命なのか。ピュアでまともな俺も、気づかないうちに魔系のクレイジーに染まりつつあるってことなのかもしれない。……それに、なんだってこんなわかりきったことが踊り狂っているんだ?


 まぁ、実害はないし別にいいか。幸いにして、こうなってるのはこのページだけみたいだし。


 ギルは相変わらず腹を出してクソうるさいイビキをかいている。こいつならたとえ腹を出していたとしても風邪を引くことはないだろうけど、優しい俺は毛布を掛けてやった。誰か褒めて。


 とりあえず、奴の鼻には炎の羞恥心を詰めておいた。おやすみっどないと。


※明日は燃えるごみの日。魔法廃棄物も忘れずに出すように。

 背景についてですが、今回は頑張って原本と同じ文字列の動きを再現してみました。頑張れば何が書いてあるのか解読できる……かもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読めねぇ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ