85日目 仕草のジャスティス~GirlsEdition~
85日目
ギルの爪がクリスタルな獣の爪に。剥いだら好事家に高値で売れそう。
ギルを起こして食堂へ。休日だから今日は人が少ない……けど、いつも以上に晴れやかな顔で休日限定デラックスフルーツタルトを頬張る女子を発見。実験が終わったことがうれしすぎて顔のにやけが止まらないらしい。
『浮かれやがって……ッ!』ってバルトのシャンテちゃんが女の子がしちゃいけない表情で歯をギリギリしていた。『もしかして、見せつけているのかしらぁ……!?』ってアエルノのロベリアちゃんも眉間に皺が。
チラッと横目で盗み見ただけなのに、『何見てんだコラ』って二人ともに怒られる。女の子ちょう怖い。
ともあれ、俺も休日限定デラックスフルーツタルトを食してみることに。イチゴ、リンゴ、ナシ……と、デラックスの名にふさわしく様々な種類のフルーツが贅沢に使われていてマジデリシャス。『きゅ、きゅう……!』って俺のお膝の上のちゃっぴぃもそのあまりのデラックスさに目を輝かせまくっていた。
当然のことながら、ちゃっぴぃのバカでかい一口ですらそれを収めることは叶わず、あいつのお口周りはクリームで真っ白になってしまっていた。きちんとお口を拭いてあげる俺って本当に優しいと思う。
そうそう、アリア姐さんも美味そうにフルーツタルトを食していた。ジオルドによる水やりを済ませた後だったんだけど、それとこれとは話が別らしい。『……イケる口だってのは嬉しい誤算だな』ってジオルドは片手でアリア姐さんを抱きつつ、もう片手でアリア姐さんとはんぶんこしたフルーツタルトを頬張っていたよ。
午前中は昨日の実験のレポートを作成することに。やっぱり最後だけあって、実験条件の回路図を書くところが非常に面倒くさい。今までの回路を全部使っている……つまりは、今まで書いてきたレポートの実験条件を全部まとめて一つのレポートにまとめているようなもん。まさしく悪魔の所業である。
ともあれ、ぼちぼちとレポートを作成しまくる。この辺については書いていてもつまらないから、ここまでにしておこうと思う。
あ、レポートを書いていたメンツはやっぱりいつも通りね。ポポルもミーシャちゃんも、辛いことは全部明日の自分に丸投げしていた。
午後もひたすらレポート。これで最後だとは言え、休日なのにずっとレポートを書かなきゃいけないことに悲しみを隠せない。『休日なのか平日なのかわかったもんじゃない』ってあの気高きアルテアちゃんも愚痴を言っていたっけ。
そんな感じでレポート作成作業も佳境になったところでおやつタイム。密かに用意しておいた俺のクッキーセットとハゲプリンが火を噴きまくる。レポートで疲れ切ったところで食べる甘味のなんと素晴らしいことか。あの感動を味わえるという一点のみにおいて、レポート作成も悪いことではないと思えてしまう。
『おいしーっ♪』ってクッキーを頬張るロザリィちゃんが最高に可愛かったです。アルテアちゃんは『がんばったらもっとクッキーが美味しく思えるぞ?』ってミーシャちゃんを諭していた。パレッタちゃんは無言でバクバク食いまくってたけど。
さて、そこから女子たちが雑談タイムに。何がどうなってそうなったのかはわからないけれど、【異性のグッとくる仕草のジャスティス】に話題がシフトしていた。
アルテアちゃんは『……外へ出かけるときとかにバサッ! って上着を羽織るところ』って若干頬を赤くさせながら語る。何人かの女子がものっすごい勢いで頷きまくっていた。なるべく大きな動作、かつ裾が綺麗な軌道を描くとポイントが高いらしい。
パレッタちゃんは『片手でネクタイを緩めるところ……とか?』って珍しく普通の女の子っぽいことを語る。『あっ、それすごくイイ!』って女子からも多くの賛同を得ていた。パレッタちゃんも普通の女の子だと思った瞬間だ。
ミーシャちゃんは『腕で額の汗をぬぐうところ!』とのこと。正直それのどこがイイのかよくわからんけど、ミーシャちゃんが言うからにはそうなんだろう。幸いにも、ギルはテカテカだし拭うのに困ることはなさそうだ。
ロザリィちゃん? 『──くんの仕草はぜんぶだいすき! ……えっとねぇ、あえて言うなら、拗ねたときにちょっぴり口をとがらせるところが好きかも!』ってにっこり笑ってこっちを見つめて来たよ。それだけでもう、ロザリィちゃん以外のことなんて考えられなくなっちゃったよね。
……というか俺、そんな癖があったのか。思えば昔からナターシャに唇を引っ張られて遊ばれていた気がする。あのアバズレ、『あは、超伸びるんですけど!』ゲラゲラ笑いながら俺のキュートな唇をひっつかんでいたっけ。
『ネクタイを締めているところもよくない!?』、『腕まくりって……イイよね……!』、『顎に手を当てて考えているところとか最高!』、『その……パイプをカッコよくふかしているところが……!』、『一番上のボタンをはずすところ!』、『……頬杖ついてるところ』……などなど、その後も女子のジャスティスは炸裂しまくる。意外とみんな、心の中に譲れないジャスティスがあるらしい。
そんな中、一人の女子が『仕草じゃないけど、手の甲とかに浮き出た血管……』ってボソッとつぶやく。『それな!』ってすんげえ大歓声が上がった。女の子ってマジでよくわからん。
しかもその女子、『実は、前々から目をつけていて……』ってジオルドに熱い視線を送る。『……ハッ!』ってジオルドは慌てて腕をまくった。
『そういや俺……血管ぷにぷにだった!』ってあいつは天啓を得たかのように明るい顔をしていたよ。
『ちょっとだけ……いいですか?』、『触らせろよぉ! 減るもんじゃないんだし!』、『うっわ……これ、うっわ……!』って女子たちはジオルドに群がり、その浮き出た血管をぷにぷにしまくる。手の甲から腕のほうまで……余すことなく両手で包んでぷにぷにしまくっていた。
もちろん、血管だけを触る……なんて器用なことが出来るはずもない。いつもは割と控えめな女子でさえ、大義名分を得たからか『えへへ……♪』って嬉しそうに手をマッサージするかのようにして触っていた。『ぐへへ……!』ってどさくさに紛れて関係ないところを触っている女子もいたけど。
『やっと俺の時代が来た……ッ!』ってジオルドはすごくうれしそうだった。何人もの女子に体中を揉みこまれて感極まったのだろう。最後の方は嬉し涙さえ流していたよ。
なんか、自分の腕っておっさん臭くないだろうかって今まで思っていたらしい。『何が女子に受けるのかわからないもんだな』ってあいつは言っていた。まぁ、匠の腕って考えれば魅力があるのも頷ける……のか?
アリア姐さん? ちょっとここに書くにはふさわしくないくらいの表情をしていたってことだけ記録しておく。ジオルドが無事に明日の朝日を拝めるのか、ちょっと気になる。
夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、風呂上がりネグリジェ姿のステラ先生が遊びに来た……のはいいんだけど、女子たちに『男子はあっちいって! 今から女子だけのお楽しみ会するから!』って追いやられてしまったため、おしゃべりすることは叶わず。
『きゃあ……っ!』、『え、嘘、ホント……!?』、『先生はねえ、えーっとねぇ……!』……なーんて声が聞こえたから、たぶんステラ先生も仕草のジャスティスについて語っていたのだろう。聞き出すことが出来なかったの酷く残念ではある……けれど、学生のようにきゃあきゃあと喋るステラ先生が見られたから良しとする。
あんな風に嬉しそうに笑うステラ先生を見たの、もしかしたら初めてかもしれない。これ以上考えると悲しくなるからやめておこう。
ステラ先生は俺たちのステラ先生で、ルマルマの担当で、そして聖母でマジプリティなのだ。それでいいじゃないか。
最後になるけど、ロザリィちゃんが『私、──くんの腕もだーいすき!』って俺の腕をぎゅぎゅ! って両手でにぎにぎつんつんしてきたことをここに記しておく。『この柔らかさと固さのバランス……! ほどよい弾力……! 腕枕すると気持ちいいんだろうなぁ……っ!』って目をぱちぱちしてきたので、『今度一緒にお昼寝しよっか』ってお昼寝の約束を取り付けておいた。今から超楽しみである。
ギルは今日も大きなイビキをかいてぐっすりと寝ている。こいつの血管の浮き出方も凄まじいものがあるけれど、女子はみな『あれは違う』、『少なくとも触りたくなるようなやつじゃない』って口をそろえて言っていた。血管にキュンとくるのもよくわかんないし、ギルとジオルドのそれにどんな違いがあるのかも俺にはさっぱりわからない。女子って本当にわからない生き物だ。
ギルの鼻にはクーラスの血でも垂らしておく。ジオルドばっかりチヤホヤされていたからか、嫉妬に狂ったクーラスが自らの唇を噛んで出血していたんだよね。みすやお。
ストックが切れました。おしごとにはかてなかったよ……(´;ω;`)
そんなわけでしばらく更新停止します。詳細は活動報告にて。
男性のグッとくる仕草のジャスティスについて語ってみよう! 私の場合……そーですねぇ、執事や車掌さんが着けているような薄手のタイトな手袋を、くいってひっぱって【お仕事準備完了!】って感じにするアレですかね? 『……さぁ、仕事だ』って感じの台詞があるとなおよいです。他にもないこともないですが、皆さんの意見とカブるとアレなので、ここらへんにしておきましょう。