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75日目 発展魔法陣製図:サボり

75日目


 ギルのお尻にサキュバスの尾っぽ。とりあえず引っ張ってみたけど、虚しさしか残らなかった。


 ギルを起こし、ちゃっぴぃをお姫様抱っこして食堂へ。なんかそんな気分だったので今日はフレッシュなアルジーロオレンジのジュースをチョイスしてみた。搾りたてなのだろうか、酸味も甘みも素晴らしく、なによりその爽やかさが半端ない。朝を彩るのに素晴らしい逸品だったと言えよう。


 俺のお膝の上のちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってうまそうにジュースを飲んでいた。昨日の夜が暑かったのだろうか、いつになく良い飲みっぷり。お腹を壊したら困るので、そっと抱きしめてぽんぽんを温めておく。俺ってばちょう優しい。


 ギルはもちろんジャガイモ。完膚なきまでにジャガイモ。『うめえうめえ!』ってそれはもうすんげえ量を平らげていた。たぶん、あの中にジャガイモそっくりな石が混じっていたとしても、ギルは美味しく頂いてくれただろう。


 そうそう、食後の余韻を楽しんでるとき、ロザリィちゃんに『ちゃっぴぃのマーキングって何か知ってる? なんかちょくちょくされているみたいなんだよね』って聞いてみた。


 ロザリィちゃん、『え゛』ってぴしりと固まった。えっちょっとまってどういうこと?


 おまけにジュースを飲んでいたちゃっぴぃは、それを聞いた瞬間に『げふぉぁッ!?』って盛大に噴き出しやがった。ばっちぃ。


 で、なぜかちゃっぴぃは真っ赤になって恥ずかしがり、『きゅう……! きゅう……!』ってロザリィちゃんにひしっと抱き付く。その大きな胸に顔を埋めるばかりで、こちらのことを見ようともしない。無理にでも回り込んで見ようとすれば、『きゅ! きゅ!』ってますます恥ずかしがるばかり。


 『ちゃっぴぃも女の子だから……ね?』って仄かに赤くなったロザリィちゃんに諭されたけれど、いったいどういうこっちゃ? ……あいつ、変なことしてないよな?


 ちなみに、『……ちゃっぴぃ、昨日もやったんだね?』、『……きゅ』って一幕があった。ロザリィちゃんはマーキングの正体を知っているらしい。いつか教えてくれたらいいなあ。


 今日の授業はシキラ先生の発展魔法陣製図。今日も元気に腕まくりしたシキラ先生は、教室に入って来るなり、大きな声で言い切った。


 『暑くてやる気でねえ! 今日はサボる! てめえらも今日は好きなだけくつろげ!』……とのこと。あの人ホントなんで教師やってるんだろうね?


 ともあれ、製図室の中限定とはいえサボっていいとのことだったので、言葉通りサボらせてもらうことに。


 ギルは喜々として『一度製図室で全力スクワットしてみたかったんだよな!』ってスクワットをし始めた。ミーシャちゃんは『全然反省するそぶりが見えないの!』ってぷりぷり怒りながらギルの肩車にジャストフィット。


 フィルラドは『また膝枕をお願いしたいな……?』ってアルテアちゃんのご機嫌を伺う。アルテアちゃん、『寝言は寝て言え。サキュバスに頼めばいいじゃないか』ってそっぽを向いていた。そりゃそうか。


 ポポルは普通にギルの尾っぽをみょんみょんして遊ぼうとしていたけれど、パレッタちゃんに『……普段子供なくせに、サキュバスの色気には反応するのがムカつく!』って押し倒されていた。パレッタちゃん、ポポルの腹枕を堪能していたよ。


 クーラスは『お願い……! 魔物の道へは堕ちないで……!』って女子に縋られていた。アリア姐さんという前例があるがゆえに、女子は気が気でないらしい。昨日のクーラスはたいそうデレデレして大変なことになっていたし、(俺にはよくわからんけど)クーラスには母性をくすぐる何かがあるという話でもある。もしあのサキュバスがクーラスを気に入ったのだとしたら、ジオルドみたいなパターンになる可能性も無いわけじゃない。


 『……こんなに縋られているのに、でも、彼女になってくれる人は一人もいないんだ』ってクーラスは寂しそうにつぶやいていた。お互いの需要(?)の違いという奴だろう。


 ジオルド? アリア姐さんに全力で抱き締められていたよ。理由は察してくれ。


 さて、そんな様子を見てシキラ先生が黙っているはずもない。『なに? お前らサキュバスやったの?』から『聞かせろよそーゆー面白そうな話はよぉ!』と繋がり、『ちょっと待てすぐに情報収集するから!』とよくわからん魔法を使って昨日の情報を集め出す。


 で、『誘惑勝負でサキュバスに勝つってやべえな! そんなの初めて聞いたぜ!』って腹を抱えてゲラゲラ笑いだした。そういえば、この人はそう言う人だった。


 『アレだろ? サキュバスよりも色気があって淫靡だってことだろ?』、『一度かかった誘惑……それも、肉体的接触を伴うサキュバスのガチな誘惑をさらに塗りつぶす誘惑ってことだろ? しかもそれ、視覚情報だけで打ち勝ったんだろ? ちょっとウチの売れ残り女子たちにその技教えてやれよ!』、『本物のプロよりすげえとか、ぜひともその場を見てみたかったものだぜ……!』ってシキラ先生は心底楽しそうにロザリィちゃんをからかいだした。


 ロザリィちゃん、『ふ、ふしゅううう……!』ってまっかっかに。そんな姿も最高にプリティだった。


 さて、これ以上ロザリィちゃんを困らせるようなら容赦はしない……なんて思ったところで、『真面目な話、そんな例は聞いたことねえんだよな。冗談抜きに、サキュバスのそれは生きるために磨かれた本物の技だ。物理的手段でその誘惑を打破する例はあっても、誘惑でそれに打ち勝つ……それより魅力的な誘惑ってのは普通じゃ考えられない。それだけお前は──から魅力があるって思われているということだ。……お前らの愛は、本物だよ』ってシキラ先生は俺たちの愛を褒めちぎりだした。


 ようやく、ようやっと俺たちの愛の深さを認めてくれる人が現れるとは。まさかそれがシキラ先生だとは思いもしなかったけれど、褒められて悪い気はしない。


 『本物とは言っても、爛れている愛情だけどな! どう言い繕ったってサキュバスに誘惑で勝るってのはやべえよ! さすがはヴィヴィディナに色欲を捧げるだけのことはあるぜ!』って付け加えなければ綺麗に終わっていたのにね。『これ以上はセクハラで訴えられそうだからやめとくぜ!』ってあの人は腹を抱えてゲラゲラ笑っていたよ。


 ちなみにだけど、直後にシキラ先生はクレイジーリボンでぐるぐる巻きにされ、そしてギルの汗がたっぷり染みたシャツ(昨日着てた寝間着)を顔に押し付けられていた。尋常じゃない悲鳴があがったことは書くまでもない。


 『悪は滅した。……事実かもしれないけど、気にすることじゃないから。ちょっと行き過ぎてるけど、女の子なら普通だから』、『茶化されるようなことはしてるけど、想いそのものは一応純粋だから。恥ずかしいことじゃないから』、『愛は素晴らしいの! それだけでいいの!』ってパレッタちゃん、アルテアちゃん、ミーシャちゃんがロザリィちゃんの肩をぽんぽんと叩いていた。


 『みんなぁ……!』ってロザリィちゃんはうれし涙を浮かべていた。女の子同士の友情を垣間見た瞬間である。


 ……なんでミーシャちゃんはギルのシャツを持っていたのだろう? 女の子の闇を垣間見た瞬間である。


 そうそう、せっかくなので倒れ伏したシキラ先生に『夢魔のマーキングって何だか知ってます?』って聞いてみた。この人なら普通に知っているだろうし、面白そうなことなら普通に教えてくれるだろうって思ったんだよね。


 シキラ先生、『えっ……』ってぎょっとした顔をした。『夢魔のマーキングって言ったら、おまえ、そりゃあ……』っておそるおそる、されどおかしそうに告げよう……として。


 『ルァァァァァッ!』ってちゃっぴぃがシキラ先生の顔をひっぱたいた。『ふーッ! ふーッ!』って容赦ない連続攻撃。真っ赤&ちょっと涙目になってひっぱたきまくっていたけれど、マジでいったいマーキングって何をしたんだろうか。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日は勉学について全く触れていないのが悲しいところ。ずっとグダグダしていたマジで中身のない一日だったと言える。ちゃっぴぃのマーキングのことだって依然として謎のまま。


 一応、雑談中にロザリィちゃんが『……み、身を護ってくれる、おまじないみたいなアレ……だよ?』って目を泳がせながら教えてくれたけど、具体的なことは何一つ教えてくれなかったんだよね。


 それでなお問い質したら、『ちゃっぴぃも女の子だから! もう追求しないようにっ!』って熱いキスをされて、幸せ感で黙らせられちゃったんだよ。やっぱりロザリィちゃんには敵わないや。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。じめじめとして蒸し暑いからか、風呂に入ったはずなのに奴からはほんのりと汗臭さが漂っている。イビキがうるさすぎるせいであまり気にならないのが幸い(?)か。


 とりあえず、奴の鼻には廊下に生えていたキノコを詰めてみることにする。今度時間のある時に換気をしっかりしておこうと思った。おやすみゅーじっくすたーと。

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