表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/367

71日目 ナイスキャッチ☆ジオルド

71日目


 ギルが葉っぱに埋もれている。お掃除が面倒でやーねぇ。


 ギルを起こして食堂へ。休日だからやっぱり人は少ない……けれど、ねむそげな表情をしたジオルドとルンルンした表情のアリア姐さんがいた。今日もアリア姐さんは元気いっぱいにジオルドを抱きしめており、そしてジオルドは適当にアリア姐さんを抱きしめ返している。一昔前のジオルドがこの光景を見たら、きっと嫉妬で狂っていたことだろう。


 『朝から見せつけてくれるな?』って何気なく聞いたら、『時間も場所も選ばずイチャイチャするお前に言われたくない』って返された。俺の場合ロザリィちゃんなしじゃ生きていけないんだからしょうがなくない?


 ともあれ、朝飯には何となくフレッシュなリンゴジュースをチョイスしてみる。一応は植物であるアリア姐さんの前でこういったものを飲んでいいのかわからないけれど、今日はリンゴジュースの気分だったからしょうがない。


 なお、当のアリア姐さんはジオルドのぞうさんじょうろからの水を浴びてたいそう心地よさそうにしていた。相も変わらず目に毒である。『朝日を浴びないと調子が出ないってうるさいんだ……』ってジオルドは言っていたっけ。


 書くまでもないけど、ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食いまくっていた。休日限定デザートには目もくれず、ジャガイモだけを食いまくっていた。もうこいつジャガイモだけあればいいんじゃないだろうか。


 午前中はクラスルームにて昨日の実験のレポートを作る。相変わらず達成項目に書かれていることが意味不明だし、そもそもとしてデータを綺麗にまとめるのが大変面倒。ここまで来ると回路もだいぶ複雑かつ大規模になって来るし、実験条件などをまとめるだけでもかなりの時間がかかってしまった。


 ……毎回思うんだけど、なんでちゃっぴぃは俺がレポートを書いている時に『きゅう……! きゅう……!』って背中に引っ付いて来たりするんだろ? 普段はそんな風に甘えることなんてほとんどないのに。こっちから構おうとするとワガママ言ったりするくせに、構わないと甘えてくるっておかしくない?


 ともあれ、そんな感じでぼちぼちと作業を進める。真面目にレポートをこなしていたのは俺、クーラス、ジオルド、アルテアちゃん、ロザリィちゃん……とまぁ、いつものメンツである。ヒモクズやおこちゃま二人は明日の自分を犠牲にすることに決めたらしい。


 なんだかんだでお昼過ぎくらいにはレポート終了。やはりキイラム先輩からの資料というのはかなり心強い。もとより実験レポートで一番面倒臭いのは考察のところなのだ。ただ書く量が多いというだけなら、宿帳や日記で鍛えられた俺の敵ではない。


 そんなわけで、その後は俺専用ロッキングチェアに座ってぼーっと過ごす。最近少しずつじめじめして蒸し暑くなってきているからか、とんとやる気が起きなかったんだよね。ホントはロザリィちゃんといちゃいちゃしたかったんだけど、ロザリィちゃんは『ピアナ先生のところで修行してくるねー』っておでかけしちゃったし。


 さて、俺のお膝の上でお昼寝しているちゃっぴぃの頭を撫でつつ、俺もお昼寝としゃれこもうかな……なんて思っていたところで事件が。ウトウトと微睡んでいたところ、『きゃあっ!?』って悲鳴とどしんっ! って大きな音が聞こえたんだよね。


 慌てて飛び起き、杖を構える。背中から床に落ちた女子と、すんでのところでそれを受け止め尻もちをついたジオルドがいた。


 どうやら、ロフト用の浮遊魔法陣がイカれたらしい。『い、いつも通り降りようとしたら、発動しなくて……!』って女子が涙目で語っていた。どういうことかと浮遊魔法陣を調べてみたところ、経年劣化による損傷がいくつかあるのを発見。


 シューン先生の話じゃ一年近く持つってことだったけれど……いや、なんだかんだでこの浮遊魔法陣が刻まれてから一年くらい経つか。それに、ポポルやヒナたちが無駄にふわふわして遊んでいたしね。


 幸いにも、近くにいたジオルドが受け止めてくれたため女子に大きなケガは無し。ただ、『ご、ごめん……ちょっと、腰が抜けちゃって……!』ってその女子はしばらくジオルドに引っ付いていた。受け止めたときのまま……もつれあって抱き合うような形になっていたっけ。立ち上がろうとして立ち上がれなくて、ジオルドが『無理するなよ』ってナチュラルに抱き締めていたよ。


 ジオルド狙いだったのだろうか、その女子はすんげえ真っ赤になっていた。ジオルドが今まで見せたことのない積極性というギャップにやられたのだろう。『きゃあ……っ!』って他のジオルド狙いの女子もざわざわしていたよ。


 ……あいつ、ここ最近ずっとアリア姐さんをハグしていたから、この手のスキンシップにためらいが無くなってきている。この分だと本物の彼女が出来る日も遠くないのかもしれない。


 もちろん、アリア姐さんはそんなジオルドを見て、「うそ……! そんなのうそ……! 私を裏切るの……!?」とでも言わんばかりの表情をしていた。魔物と言えど、その辺の感情は人間と同じらしい。


 ともあれ、危ないから浮遊魔法陣は閉鎖し、しばらくはロフトの出入りを階段に限定することにした。頑張れば直せなくもなさそうだったけれど、プロが刻んだものに俺たちが手を加えて壊してしまったら目も当てられない。幸いなことに、あの浮遊魔法陣が使えなくなったところでそこまで痛手を被るわけじゃないしね。


 夕飯食った後の風呂場にて、ティキータのゼクトに浮遊魔法陣が壊れた旨を告げる。『それとなくシューン先生に伝えといてくれないか?』って言ったら、『伝えてもいいけど、風呂上がりのイチゴミルクを奢ってくれ』等と言われた。『ついでに休みの間のシューン先生の面倒も頼む。なんかあの人、最近俺たちが構ってくれないからってちょっと拗ねてるんだよ』との情報も。『ここ最近は特にヤバくてさ。「カチコミ来てくれないかなぁ……?」ってチラチラこっち見てくるんだよ、あの人』ともゼクトは付け加えた。


 シューン先生のかまってちゃんっぷりがヤバい。これ、普通にステラ先生に頼んだほうが良かったかもしれない。


 夕飯食って……じゃない、雑談して今に至る。雑談中、ジオルドは女子たちにかなりちやほやされていた。『咄嗟に受け止めてくれるなんてやるじゃない!』、『やっぱり頼りになるよねっ!』などと、女子たちはここぞとばかりにポイントを稼ごうとする。アリア姐さんの登場や今日の事件といったイベントのために、最近焦りを覚えてきているらしい。


 ポポルが『……あいつが受け止められた理由って』って女子の前で言っちゃいけないことを言いそうになっていたので、俺特製シュークリームで口をふさいでおいた。世の中知らなくていいことはいっぱいあるのだ。


 ジオルドの読書の定位置は浮遊魔法陣の近く。たまたま近くにいたから受け止められた……けど、どうしてジオルドはそこを定位置としているのか。男子は全員それに気づいているけれど、あえて触れないでいる。


 そりゃあ、降りるところを近くでずっと見ていたのなら、落ちる瞬間に気付いて受け止めることも可能だろう。女子がそれに気づかないことを願うばかりだ。


 ギルは大きなイビキをかいてぐっすりと眠っている。そういやこいつもさりげなく実験レポートを終わらせていた。憂いなく次の休みを楽しめるってのは最高だと思う。ヒモクズやおこちゃまたちにもこいつの行動を見習わせたいものである。


 ギルの鼻には月の膜を詰めてみた。おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ