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68日目 発展魔法陣製図:マジックベアリングスタンドの製図【2】

68日目


 ギルの腕に羽が生えている。いつか空を飛べるのだろうか。


 ギルを起こして食堂へ。そのたくましい腕に羽が生えているのを見て、ミーシャちゃんやポポルが大はしゃぎしていた。『ちょっと全力ではばたいてくれよ! きっと飛べるぜ!』、『この羽で羽飾り作ってほしいの!』ってたいそう嬉しそう。『羽なんかより筋肉の方を見てほしいんだよなぁ……』ってギルは不満そうだったけれど。


 朝食はペッパーサラダをチョイス。ぴりりと効いた胡椒がなんともいい感じ。野菜がしゃきしゃきなのもグッド。時折混じるサラミの旨味が味に飽きをこさせない。俺のお膝の上のちゃっぴぃは『きゅーっ♪』ってサラミばかりを食わせろとせがんできやがった。もちろん、サラミ&野菜マシマシをフォークに刺して『あーん♪』したけどね。


 そうそう、今日は珍しくロザリィちゃんが『あーん♪』ってヒナたちにエサをあげていた。サラダを食べやすいように千切ってあげるところに、ロザリィちゃんのやさしさを感じる。あんなに優しい女の子がこの世にいるなんて、ちょっと信じられないくらいだ。


 ちなみにだけど、アルテアちゃんは『……ほれ、口をあけろ』ってフィルラドに『あーん♪』してあげていた。ヒモクズ夫を支える妻……という構図に見えてしまったのは悪いことなのだろうか?


 あと、ジオルドはアリア姐さんに泣きつかれていたよ。「そんな……! そんな匂いを漂わせて私の元に来るの……!? 信じられない……!」って感じでアリア姐さんはさめざめと泣いていたっけ。『ペッパーサラダ食べただけでもアウトなのかよ……』ってジオルドは呆れながらアリア姐さんを抱いていたよ。


 今日の授業はシキラ先生の発展魔法陣製図。先生は入って来るなり、『よぉ! お前らバンバレイルやったんだってな! 婆虫の味はどうだったよ!?』って大変にこやかにこちらを煽ってきた。『まぁアンブレスワームよりはマシだろ? クソマズいことには変わりねえけどな!』って出欠を取りながらゲラゲラ笑いだす。この人、本当にブレないと思う。


 『見つけた瞬間に大半を倒したので、芋虫を食べることになったのは僕とアルテアちゃんくらいですよ』って返したところ、シキラ先生は『なんだよ、ずいぶんと行動がサマになってきたじゃねえかよ……』ってたいそう詰まら無さそうにしていた。


 『ただそこにいるだけの芋虫にぴーぴー言っていたお前らが、化け物に両手を拘束された状態で、今まさに目玉を食いにこようとしている芋虫を……躊躇いなく喰いちぎられるようになったんだぜ? そりゃあ、人間として大事なものを失っちまったんだって、一教師として悲しくもなるよな!』ともシキラ先生は言っていたけれど、そういう風に教育したのはあんたらじゃないのかと思わなくもない。


 ……これ、成長したってことでいいのだろうか? なんだかすごくフクザツだ。


 さて、今日も前回に引き続きマジックベアリングスタンドの製図を行う。とはいえ、前回までに聞くべきことは聞いてしまったし、シキラ先生としても伝えるべきことはもうないらしい。『この授業はよぉ、進むにつれて話すことが減るから困るんだよなぁ……』ってシキラ先生は言っていた。雑談の持ちネタがどんどん減って大変らしい。あの人なにしにここに来てるんだろ?


 ともあれ、手を止めるわけにもいかないので書きまくる。魔法設計製図便覧を引くのも、未知の魔法陣について調べるのもだいぶ慣れてきた。わからないことは調べればいいってのに気付くことが出来れば……その調べ方さえ覚えてしまえば、あとはもうこっちのもの。


 課題の内容はどんどん難しくなっているはずなのに、最初の頃に比べてそんなに負担を感じないのは、きっとこういところで成長しているからなのだろう。みんなの目も最初は【かなり死んでる】って感じだったけど、今は【だいぶ死んでる】くらいだしね。


 そうそう、やっぱり辛抱堪らなくなったのか、シキラ先生が『せっかくだからバンバレイルの秘密を教えちゃうぜ!』と製図の授業中であるのにもかかわらず語りだした。


 なんでも、バンバレイルは脳ミソ役の芋虫と肉体役の鳥に分かれている……ってのは授業で習った通りだけど、なんと生まれたときから脳ミソの中に芋虫がいるらしい。


 『不思議に思わなかったか? 芋虫が脳の機能を司り、そいつがいないと肉体が死んじまうのなら……生まれたばかりのバンバレイルはどうなるんだって。あの婆虫はいったいいつ寄生するのかって』……とはシキラ先生。言われてみればその通りだ。


 で、解答だけれど……バンバレイルは自分の卵がある程度成長した頃合いを見計らい、殻に小さな穴を空けるらしい。そこにババアフェイス芋虫が尻を突っ込み、形が出来かけている脳ミソに直接卵を産み付けるそうな。


 『だから産まれたときからバンバレイルにはあの婆虫がいる。もちろん、基本的に卵は複数あるからな。生まれたヒナ同士で殺し合って、一番賢い婆虫が一番強い肉体に寄生するんだ。……本来は存在しないはずのバンバレイルの口腔奥にある縦穴に、それを作る力なんてないはずの婆虫が住み込み、あまつさえそこから直接脳に刺さっている。そのことに注目した偉い学者が長年かけて見つけた生態らしいぜ?』ってシキラ先生は言っていた。


 それがわかる以前はバンバレイルはアンデッドの一種だと思われていたらしい。たしかに肉体は死んでいるようなものだし目も虚ろだったから、アンデッドと思えなくもない。……それにしたって異様な生体構造をしているし、なにより自分の頭の中に虫を住まわせるって発想はイカれていると思うけれど。


 『あとはそーだなァ……。婆虫との共生前はどうやってバンバレイルは生きていたのかってのが議論になったりするな。ぶっちゃけあいつ、婆虫がいなければ魂の無いただの肉体じゃん? トチ狂った魔法使いが実験で作りだした人工魔法生物に、たまたま知能が高い虫が住み着いたんだって説もあるんだぜ?』ってシキラ先生はさらにお得(?)な情報も教えてくれた。製図の話よりもバンバレイル(危険魔法生物学)の話の方が多いように思えるのは気のせいだろうか?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。今日はマジでこれくらいしか書くことが無い。せいぜいが、ジオルドがアリア姐さんにおやすみなさいのハグをせがまれていたことくらいだろうか。男子の妬みの視線がヤバかったけど、ジオルドとしては『こいつ、一度だけだって言い聞かせても、約束守らずに何度でも抱きしめてくるんだよ』ってお疲れの様子。一年前のジオルドにぜひとも聞かせてやりたい言葉である。


 短めにまとめられたし、今日はもうさっさと寝よう。ギルはやっぱりクソうるさいイビキをかいている。今日はあえて、ギルの腕から生えた羽を詰めてみることにする。何気にループさせて詰めたのって初めてかも? 明日がちょっと楽しみだ。

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