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б∋ ζ= 千 ∂

б∋ ζ= 千 ∂



 ぉ   カゞ   レヽ

  ∧ゃ

       、キれ

































 ふう。この俺としたことがまたしても醜態を晒してしまうとは。愛とはどうしてこうも苦く、そして甘美なのだろう。愛することが罪だと言われても、今なら納得してしまいそうな気分である。


 さて、順を追って振り返っていこう。


 なんか俺、またしても錯乱状態にあったらしい。いつもの時間に起こされたギルは俺を一目見るなり、『なんかやべえ!』ってなったとのこと。


 でもって、『アさ飯にロざりィちゃんとおはよウございたダキマす』とか言ってる俺を担いでステラ先生のところに向かったそうな。


 ギルが俺を担いでダッシュする姿をみんなが見逃すはずもない。すでにクラスルームにいたクーラスやジオルド、アルテアちゃんなんかも明らかに異常な様子の俺を見てたいへんビビり、『新手のアエルノ襲撃かッ!?』、『いいや、化け物の方かもしれない!』って警戒態勢を敷いたらしい。


 そんなわけでクーラスが寮に残ってまだ起き出していない連中をまとめあげ、アルテアちゃんとジオルドがギルについて職員室に行くことになったんだって。


 何とも都合よく、ステラ先生は朝礼(?)のために職員室についたところだったらしい。で、運ばれてきた俺を見てびっくり仰天。


 もはや俺はまともに思考が出来ていない状態で、攻撃的挙動こそ取っていないものの幻覚やその類に侵されており、手足も震え、目の焦点もあっていなかったのだとか。『一応は話したり反応するのが逆に恐ろしかった』ってアルテアちゃんは言ってたっけ。


 ともあれ、早速治療&原因究明に。同じく朝礼に来ていたドクター・チートフルとステラ先生が共同して事に当たったとのこと。


 が、二人の実力をもってしても原因不明。『おかしい! どこを調べても異常なところが見つからない!』ってチートフルが声をあげ、ステラ先生も『嘘……でしょ……!?』って絶望の表情。全力の回復魔法をかけたのに、ちっとも効果が表れなかったんだって。


 ここにきて、この二人がいるなら大丈夫だろう……って楽観視していた他の先生がざわつきだす。


 『…新手の夢魔かなにかが憑いてるんじゃないか?』ってグレイベル先生が調べるものの、魔物の痕跡は見つからず。見つかったのはちゃっぴぃが俺に施したマーキング(詳細は教えてくれなかった)だけ。


 『こーゆーのはとりあえず変なの全部ぶっ壊しちまえばなんとかなるんだよ!』ってシキラ先生が破壊魔法を使って原因の破壊を試みる。が、『……あれっ? 異物なくね?』ってそもそもの対象が見つからない。


 『いやいや、そんなバカなはずは……ここは落ち着いて解析を……』ってキート先生がガチめの解析魔法を使う。しかし、何も問題ないって答えがはじき出された。何回解析をかけても結果は同じ。『……解析バグ? いや、解析そのものは成功している……』ってキート先生は首をかしげていたらしい。


 回復魔法の知識も、魔法医療的な知識も、魔法生物学の知識も、全てをぶっ壊す破壊魔法も、解析魔法も、何もかもが通用しない。こいつぁマズい。


 グランウィザード二人に治療のプロまで揃ったのに治療できず、それどころか俺の状態はどんどんひどくなるばかり。間に合わせと言うことでピアナ先生が植物魔法で癒しの霊花を咲かせたけれど、それも時間稼ぎ以上の効果は見込めない。


 ステラ先生、目に大粒の涙を浮かべ、そしてポロポロ泣いていたらしい。『なんでよぅ……嘘って言ってよぅ……!』って狂った俺を抱きしめてずっとわんわん泣いていたのだとか。


 もはや親御さん──マデラさんへの連絡をするしかないと思われたまさにその時。職員室に救世主が現れた。


 うん、書くまでもなくロザリィちゃんね。


 で、ロザリィちゃんってば先生たちの前なのに、俺の元へと寄り添ってキスをした。愛魔法を込めた、それはもう情熱的なものだったらしい。


 俺の意識が戻ったのはここから。なんか気付けば職員室の前にいて、そして目の前にプリティ過ぎるロザリィちゃんと、ポロポロと泣いているステラ先生がいる。いろんな意味で焦ったよね。


 そして口を開こうとした瞬間に、ぱしんっ! って割とガチめにロザリィちゃんに頬を叩かれた。


 どういうことかと目を白黒させている間に、体に衝撃。『どうして……! どうして、こんなに酷くなるまで放っておいたの……!?』ってロザリィちゃんは泣きながら俺に縋ってきていた。『我慢なんて、しなくていいのに……!』とまで言われる。


 ここにきてようやく気付く。どうやら俺──また、禁断症状に罹ってしまっていたらしい。


 日記を確認してみたら、最後にロザリィちゃんとキスしたのはお酒を飲んだあの日だった。つまりは、二週間近くもキスをしていなかったってことになる。自分でもびっくりだけれど、この前の休日はフィルラドの件でゴタゴタしていたし、授業とかでもいろいろと忙しかったから、ありえないことではない。


 俺はロザリィちゃんなしじゃ生きていけない体なのだ。二週間も我慢していたら、狂うのだって当然である。


 前は一か月近くは持ったはずだけれど、今回は授業でのストレスなんかがすごかったし、俺もいろいろ疲れていたのだろう。それに、俺は毎日ロザリィちゃんに惚れ直しているし、その愛も日に日に強くなっていく。それなのに、目の前にいるロザリィちゃんにキスが出来ない──そういった諸々の要素が組み合わさり、発症までの期間が早まったのかもしれない。


 ともあれ、事態は解決。ステラ先生は『心配、したんだからぁ……!』ってポロポロ泣きながら笑っていた。そんなお顔も最高にプリティで聖母だった。ぎゅっと抱きしめてくれたステラ先生のなんと暖かで柔らかいことか。


 アルテアちゃんとジオルドは事態がよくわかっていない感じだった。……考えてみれば、俺が宿屋で発症した時、まだいつものメンツは宿屋に遊びに来ていなかった。だからこそ、今回の初動が遅れたのだろう。


 あ、先生方でも解決できなかったってのは、原因がロザリィちゃん不足だったからね。恋の病なら医者でも治せないし、解析魔法で異常が見つからないのも頷けるってもんだ。


 その後はさっと朝飯を食って授業を受ける。今日は魔法回路実験……の、解説。四回目の実験の復習と五回目の実験の予習ね。


 今回の解説担当はキート先生。授業開始早々、『今朝の件ですけど、新しい魔法症例として私とドクター・チートフルの連名で学会発表しようと思うのですが……』などと言われた。もちろん、華麗にお断りする。


 俺たちの愛をそんなところで語ってほしくないし、ロザリィちゃん不足という俺にしか発症しない病気を発表したところでどうしようもなくない? 『愛をそんなつまらない場で語るのは、非常にナンセンスと言うほかありませんよ?』って答えておく。


 『いや、そもそもそういう問題じゃない気がするんですけど……。本人が納得しているのなら、そういうことにしておきましょう』ってキート先生は言っていた。『そこまで来るともう完治させるのは不可能に近いので、一生付き合ってくださいねってチートフルが言ってました』ってドクターからの伝言も。


 恋の病は治らないって相場は決まってるのに、なんでああいう言い方をしたのか。ちょっと気になる。


 『……愛って言葉の響き、本当に美しいですよね。ええ、響きだけは』って最後にキート先生は言っていたけど、いったいどういうこっちゃ? ロザリィちゃんも不思議そうに首をかしげていたよ。


 さて、肝心の講義の内容だけれど……面倒くさいから今日はパスする。一応病み上がりだし、今回はMIC関係のマジカルな話しかしなかった。応用とか発展とかいろんな話をされたけど、何言ってるかよくわかんなかったし、全部を書こうとするとこの日記の余白じゃ全然足りなくなってしまう。


 それに、俺たちにはキイラム先輩からもらった資料がある……というか、今回に限って言えばキイラム先輩自身からいろいろアドヴァイスとかチェックとかしてもらったしね。


 あ、次回はマジックオペアンプを用いた回路について学ぶんだって。『事故ったときの規模はどんどん大きくなっていくので、よく勉強しておいてくださいね?』ってキート先生が言っていた。


 授業後に実験室へと赴き、レポートを受け取ることに。フィルラドの事故の件があったからか、アエルノチュッチュやバルトラムイスたちの表情が真剣。いつもより進捗もいい感じ……っていうか、俺たちの時よりだいぶ進んでいる。


 『事故が起きなきゃ本気が出ないとは……実力があるなら毎回きっちりやってほしいもんですよ』ってポシム先生が少し愚痴っていたっけ。上級生も今日は比較的暇そうにしていたよ。


 ともあれ、レポートを受け取ることに。嬉しいことに、ピンク色(二回目の実験)レポートは合格を貰えた。黄色(三回目)の実験もあと少し。黄緑(この前の実験)も半分以上の項目がチェックを通っている。やったね。


 他のみんなも半分以上が水色レポートの合格を貰っており、まだ合格を貰えていない人も残りは軽微な修正しかないらしい。黄色のレポートこそまだ合格は出ていないものの、ピンクに関してもそれなりに合格者がいたようで、ここにきてぐんと合格率はあがっているようだった。


 『あんなことがあったからヘボいレポートだろうと思ってたんだけど、なんか普通にいつもよりいい感じだったわ。お前ら意外とメンタルすげーのな』ってキイラム先輩は言っていた。たぶん、余計なことを考えずにそれだけに集中していたからだと思う。


 『こいつなんてな、二年のこの実験でボロクソに言われるたびに涙目になってたんだぜ!』ってキイラムは腹を抱えてゲラゲラ笑う。『余計なこと言うんじゃない!』ってノエルノ先輩が真っ赤になってキイラムのケツを叩いていた。ノエルノ先輩でも実験レポートでボロクソに言われたとか、なんかちょっと意外。


 あと、ノエルノ先輩は『……いいの? 秘密、バラしてもいいんだけど』ってキイラムを脅していた。『……おい、それだけは。カッコいい先輩像が崩れちまうだろうが』ってキイラムは言っていたけど、奴がロリコンなのは周知の事実である。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中は思いっきりロザリィちゃんとイチャイチャ。二人でロフトに上がり、ちゃっぴぃが赤面するほど情熱的なキスをする。『えへへー……♪』って笑うロザリィちゃんがステキすぎて、思いっきり抱きしめちゃったよね。


 イチャイチャについてもっと書きたいけれど、俺の華麗なるテクだと過激すぎる文章になってしまうからやめておこうと思う。いや、キスとぎゅっ! と膝枕しかしていないけれど、無言の情熱が凄まじすぎたんだよね。甘えてくるロザリィちゃんは本当にプリティだったよ。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。こいつもなんだかんだで二つのレポートを突破しているのが凄く意外……でもないか。とりあえず、天馬のたてがみを鼻に詰めておく。グッナイ。

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