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51日目 ゲ□☆サバト

※大変汚い言葉が何度も出てきます。特にお食事前後の方は注意するようにしてください。


 なお、一日の題名(サブタイトル)に大変汚い表現が使われていたため、二文字目を伏字(□を使用)にしております。ご了承ください。

51日目


 王冠が腐ってた。変な液体もでてる。ヤバい。


 ギルを起こして食堂へ……行く前に、ルマルマ寮内にて異変が起きていることに気付く。あちこちから妙なうめき声が聞こえてくるし、なんか仄かに酒臭い。いつもはこの時間でもクラスルームに一人か二人はいるっていうのに、今日に限って言えば誰もいない。


 どうしたものか……なんて思っていたところで女子部屋の方から悍ましい邪気が。『キァァァァ……!』ってヴィヴィディナが叫びながら、真っ青になったパレッタちゃんを引きずってきていた。


 とりあえず、パレッタちゃんの様子を見てみる。はっきりわかるレベルで酒臭い。ぺちぺちと頬を叩いてみれば、『頭……痛いよぉ……!』って涙声でつぶやいた。


 どうやら結構タチの悪い二日酔いらしい。飲んでるときは全然大丈夫だったけれど、後になって一気に悪い作用が現れたようだった。


 『水……水ぅ……!』って真っ青になったアルテアちゃんもヨタヨタしながらやってきた。『こいつだいぶヤバいんだけど!』ってポポルもフィルラドを引っ張りながらやってきた。ミーシャちゃんとロザリィちゃんに至っては、なぜか自律行動をするクレイジーリボンがクラスルームへと送り届けてくれていた。


 その他男子も女子も、みんなが呻きながらクラスルームにやってきた。生き残ったごくわずかな人たちがそのサポートに回ったけれど、人が多い上にけっこうガチな二日酔いのものだから手が回らない。飲み会直後は手がかからなくて楽だな……なんて思っていたのに、まさか今になってこんな面倒なことになるとは。


 というか、どうしてみんなが二日酔いになるんだ? こういうのって個人でけっこう違わない? ウチの常連の冒険者だって、飲み会直後は吐くけど二日酔いはしないってやついたよ?


 ともあれ、宿屋の息子スキルをフル活用してみんなの面倒を見まくる。水を飲ませ、体を楽にさせ、朝の新鮮な空気を部屋の中に入れまくった。


 が、それでなおみんなの容体は優れない。初めてのお酒だけあって、まだ体のほうが慣れていないのだろう。みんな酒臭い息を吐き散らしながら、うんうんとずっと唸っていたっけ。


 そして、とうとう恐れていた事態が起こる。


 うん、ジオルドがね、『……あっ、やべ』って呟いたんだよ。


 あれほど吸収魔法で吸収したくないと思ったことは──あれほど自分のとっさの判断を後悔したことは、おそらく後にも先にもないことだろう。


 カーペットを汚さないがための俺の英断を、誰かもっと褒めてほしい。吸収魔法越しとはいえ、友達のそれを受け止めることになるなんて思いもしなかったよ。


 とりあえず、吸収魔法でそれをキャッチしたまま、『やるならトイレか外でやれ!』ってジオルドに肩を貸す。あいつは盛大に吐き散らしながら『せ、ぜめてドいレで……!』って懇願してきた。


 そんなわけでジオルドをトイレに連れていく。あいつが盛大にゲーゲーする音を聞きながら吸収魔法でキャッチしたそれをポイした。あと、俺の黄金のミスリルハンドで奴の背中をさすりまくっておく。


 『すまね゛え゛……』って涙目で言われたんだけど、正直無駄口叩いてほしくなかった。だって口からまだ……ねえ?


 さて、ジオルドに触発(?)されたのか、その後もトイレに駆け込んでくる男子が多数。すでに貰いゲロしている奴も。ポポルが涙目になりながら動けないやつを運んできていたけれど、ローブの端がアレで汚れてしまっていた。


 ちなみに、ギルもいろんな人を運びまくっていたんだけど、奴に抱えられた時の圧迫からか、大抵の奴はその場で吐き出し、ギルにぶっかけまくってしまっていた。


 まぁ、あいつだいたいいつも半裸だから服は汚れなかったんだけどね。


 で、運び込まれた連中の背中を片っ端からさすり、ある程度吐かせた後は次の奴へ……ってルーチンが完成。トイレ内に臭いがこもったせいで俺も吐きそう。悲しいことに、嗅ぎ慣れているから吐かなかったけれど。


 そして、問題はまだまだ続く。男子トイレから聞こえてくるあの音と、そこはかとなく漂ってくる香りにやられたのか、青い顔してなんとか耐えていた女子までもが『……うぇぷっ』、『も、無理……!』等と言い出した。マジかよ。


 『おねがい、トイレまでは頑張ってよ……!』って無事な女子が肩を貸してトイレに連れていく……も、数分もしないうちに『ひゃああああっ!?』って悲鳴が。大変な有様になった女子が涙目で風呂に向かっていった、とだけ書いておく。


 そこからはもう地獄だった。男子は男子で二回目の貰いゲロするし、女子は女子でトイレに殺到するものだからクラスルーム中がパニック。すでにヴィヴィディナでも受け止めきれないくらいになっていたし、俺の吸収魔法だって展開範囲に限界ってものがある。


 なにより、トイレの数が足りない。そして女子が俺を頼りにしようとせず、サポート女子もこの手の処理に慣れていない。まぁ、ゲロの処理に慣れてる乙女ってのもそれはそれでどうなのよって感じだけれど。


 で、とうとうトイレがパンク状態になったので、男子は外でゲーゲーやり始める。女子の方も『もう無理! やるなら外でやってよぉ!』って悲鳴が上がる。が、『私にも乙女の尊厳がぁ……!』って女子たちは頑なに外でやろうとはしない。


 『そんな有様で乙女を名乗るなぁ!』って言われていた。まさにその通りだと思う。


 とはいえ、女子トイレが明らかなパンク状態であるのは事実。『男子トイレで吐くか、──に女子トイレのサポートをしてもらって吐くか、好きなのを選べ』って声があがり、二日酔い女子たちに戦慄が走った。


 『男子みんなの目の前で恥をかくくらいなら……──に頼ったほうが……! アレはもう人間のくくりじゃないし……!』、『正気なの……!? 一番弱味握られちゃいけない相手でしょぉ……!?』って泣き声が聞こえたんだけど、いったいどういうこっちゃ?


 最終的に、『もう無理。あんなところ私は耐えられない。こういうのはプロに任せるに限る』ってサバイバー女子から通達があったため、俺が女子トイレにヘルプに行くことになった。


 やはりというか、酷いありさま。というか、男子トイレ以上に汚れている。文字通り、足の踏み場がアレのせいでまるでなかった。


 とりあえず、吸収魔法や水魔法等を使って床を掃除。黄金のミスリルハンドで吐きまくる女子の背中をさすって吐き気を鎮める。吐瀉物処理の詳しい描写については、読んでいる人間の精神衛生を考えて省くことにする。


 また、彼女たちの名誉のためにも、詳しい描写や個人の名前は記述しないことにする。宿屋の息子的に考えて、お客さまのプライバシーは守らなきゃじゃん?


 そうそう、ある女子が吐きながら『もうお嫁にいけない……!』って割とガチな感じで泣いていたので、背中をさすりつつ『大丈夫。クーラスかジオルドが喜んでもらってくれるさ』って励ましておいた。俺ってばマジ恋のキューピットじゃね?


 なんだかんだで昼頃には落ち着いた。というか、もうみんな吐きすぎて吐くものがなくなったとも言う。男子は外&トイレで吐けたし、ギルやポポルのサポートがあったから(あくまで比較的)大丈夫だったけれど、女子はサポート要員が少なく、そしてトイレ限定で吐いたから割と悲惨。掃除がすっごく大変だったっていう。


 なお、ポポルは涙目で『これから毎回俺お前らのゲロの処理しなきゃいけないの!?』って叫んでいた。気持ちはよくわかる。


 みんな食欲がなさそうだったので、昼食は俺特製の野菜スープにしておいた。ほとんど形が無くなるくらいまで野菜を煮込んだ、お腹に優しい逸品である。栄養もたっぷりだし、味も薄めだし、あっさりしていてするする飲めるから二日酔いの時には最適なのだ。


 なお、まだ微妙にクラスルーム内が臭かったため、昼食は外でお日様を浴びながら取ることに。部屋にこもるよりかは爽やかな風を感じていたほうが気分もよくなるし、ちょっとしたハイキング(?)気分が味わえたと言えよう。


 『いろいろ処理させちまって……すまなかったな……』、『背中をさすってくれたの、ホント助かったよぉ……』って男子にも女子にも感謝されてちょっぴりうれしい。宿屋でのゲロ処理の経験がこんなところで活きるとは。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。午後はみんなずっと大人しくしていたし、他にはアレで汚れたローブ類の洗濯などをするばかりで今日はもうこれと言って書くことが無い。ゲロの話を延々としていても面白くないから、ササっと切り上げることにしよう。


 ……あ、実は夕方ごろにステラ先生が遊びに来てくれたんだけど、みんなの名誉のために『すみません、ちょっと悲惨なことになっているので……』って泣く泣くお引き取りを願うことになった。それに、さすがにステラ先生をあんなゲロ臭漂う部屋に入れるわけにはいかないからね。


 ステラ先生、何かを察したように『お、おつかれさま……!』って俺の頭をポンポンしてくれたっけ。それだけでもう、一日の疲れが吹っ飛んだよ。


 ギルは今日もぐーすかとクソうるさいイビキをかいている。そして、『きゅーっ!』ってちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんできた。こいつを含めた使い魔はあの騒動の最中、ロフトに避難しておいかけっこして遊んでいたらしい。まったく、ガキは呑気でうらやましいや。


 とりあえず、ギルの鼻には簡単な酔い覚ましでも詰めておこう。……日記を読み返して思ったけれど、あえて名前を書いていないせいで誰がヤバかったのかわかってしまいそうな気がする。まぁ、ロザリィちゃんのなら問題なく顔面で受けられる自信があるけどね。


 ……もしかして、ちゃっぴぃがこっちに来たのってそういうことなのか?


 ちゃっぴぃを抱きしめて寝ることにする。こいつの体温高めだから、今の時期だとちょっと暑い。みすやお。


※燃えるごみはゲロ処理。魔法廃棄物もゲロ処理。

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