表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/367

45日目 魔力学:前期中間テスト

45日目


 ギルの口から光が溢れ出ている。まぶしい。


 ギルを起こし、食堂……に行く前にレポートを提出しに学生部へ。今日がテストであってもその辺は全然考慮してくれないらしく、学生部には二年生の全員が顔を出していた。


 が、ここで驚くべき事実が判明する。そのことをちょっと男子連中に愚痴ったところ、『えっ、そっち魔力学のテストなの? うち触媒反応学のテストなんだけど』、『こっちは製図だから何もねえぞ?』、『生物学だから右に同じ』との返事が。どういうことなの。


 『全員が同じ日に同じテストを受けなければ公平性が保たれないように思えますが……内容をリークすることもできますし』ってやんわりとピアナ先生に質問してみたところ、『あのね……すっごく言いにくいんだけど……』って先生は困った様に笑いながら教えてくれた。


 うん、あの解答用紙、呪われているんだってさ。名前を書いた瞬間にその呪にかかってしまい(というより、自分で呪の対象を選択しているに近い)、テストの内容を話そうとすると呪が発動するようになっているのだとか。


 『先生たちもね、その辺のことは考えているの。だけど、授業日が違う以上、どう頑張っても公平性なんて保たれるはずもないから……』とはピアナ先生の談。で、かつての先生方がいろいろ諸々その辺の対策を考えた結果、『解答用紙を呪えばよくね? 相手の方から自分の名前を書いてくれるし、名前を書かなければどのみち単位落とすじゃん!』って思い至ったそうな。


 ちなみに、『呪の中身を考えるのはいつもシキラ先生なの。だから、間違ってもリークしようとしたり、カンニングしたりしないようにね?』ってピアナ先生は教えてくれた。


 『テスト中にいきなり服が全部破けて全裸になったやつがいたっけなぁ……』、『テスト期間中、なぜかお風呂に入れなくなった娘もいたっけ』ってキイラムとノエルノ先輩が言っていたから、間違いないだろう。


 なお、件の全裸になったやつは『そのまま堂々と試験を受けていた。というか、これ幸いとばかりに周りに見せつけていた。「セクハラだ!」って声には「全部シキラ先生のせいだ」って開き直っていた』とのこと。さすがは魔系である。


 ともあれ、話もそこそこにレポートを提出して例のカビ臭い教室へ。さすがに空腹のまま試験を受けるのは嫌だった……けど、そこはもう慣れたもの。手紙を持たせて食堂へ放っておいたちゃっぴぃ、ヴィヴィディナ(形容しがたきすがた)、エッグ婦人、マルヤキ、ロースト、ポワレ、ピカタ、ソテー、グリルらがサンドイッチがたっぷり詰まったバスケットを持って待ち受けてくれていた。


 『きゅうん?』ってあいつが“ほめてもいいんだぞ、ん?”と言わんばかりに胸を張ってきたので頭を撫でてやる。ロザリィちゃんも『えらいぞっ!』ってちゃっぴぃを抱きしめていた。アルテアちゃんも『よくやったな……!』ってヒナたちの首周りをこしこしとこすっていた。パレッタちゃんも『これ、あげるね』ってヴィヴィディナに素敵に呪われたミミズとポポルの涙を捧げていたっけ。


 で、サンドイッチをお腹に詰め終わったところで試験開始。今更書くまでもないけど今日の中間試験はアラヒム先生の魔力学。『あまり固くならずに、実力を出し切るようにしてください。なお、この教室がカビ臭いというのは何の言い訳にもなりません』って先生は言っていた。


 肝心の内容だけれど、やっぱり単語の確認だとか定義の意味を問うてくるものがほとんど。アラヒム先生らしい、実に理論を重視した仕上がりだったと言えよう。授業を真面目に受けていなかったり、理解があやふやだったりする者にとっては地獄みたいなものだろうけれど、逆に言うと暗記がしっかりできていればぬるいとすら思えるレベルだった。


 ぼちぼちと空白を埋め(やっぱり今回も解答用紙は驚きの白さだった)、とうとう最後の問題に。最後の問題は前々回の授業で学んだサイクルとそれ周りに関する計算問題だった。でも、俺たちは計算の仕方なんてまるで習っちゃいない。どういうことなの。


 問題文を読むと、注釈に【授業では計算そのものについては触れていませんが、その概念については触れています。今回は特別に計算に用いる基礎式を追記するので頑張って解いてみてください。君たちなら出来ると先生は信じています】って書かれていた。


 そんなわけで件の基礎式を用いて計算。幸いなことに、計算そのものはひどく単純で手こずるようなものではなかった。おそらく文字通り、サイクルや魔力学の概念をきちんと覚えているかの確認、それにある程度不測の事態が起きても知識を基に対処できるかどうかを見たかったのだろう。


 なんだかんだで試験は終了。クーラスは余裕そうで、アルテアちゃんも特に問題なさそう。ロザリィちゃんは『最後の計算以外はだいじょーぶ!』ってステキに微笑んでくれた。今日もやっぱりマジプリティだった。


 ちなみに、ポポルやミーシャちゃんは『一番ヤバい時はもっとひどかったから平気じゃね?』、『……単位は落とさないはずなの!』とのこと。学生がそれでいいのかと思わなくもないけど、単位を落とさないのならそれでいいか。


 夕飯はちょっと豪勢に肉と魚の揚げ物をチョイスしてみた。肉も魚も油がたっぷり使われていたたいそう体に悪そうな感じ。でも、こういうのに限って美味しくて止められないから困る。


 もちろん、俺は膝の上にいるちゃっぴぃに『あーん♪』して揚げ物を貢いでおいた。『きゅーっ♪』ってあいつは嬉しそう……なのはいいんだけど、油でくちびるてっかてか。キラキラ輝いていて逆に艶めかしくなっているのがなんか腹立つ。俺はロリコンじゃないから何とも思わなかったけどね。


 でも、ロザリィちゃんのくちびるがてかてかしてたのは正直ヤバかった。思わず見とれて、周りなんて何も見えなくなっちゃうくらい。俺の視線に気づいたロザリィちゃんが『は、恥ずかしいからあんまり見ないでっ!』ってくちびるを拭わなければ、おそらく俺の揚げ物ちゃんたちはみんなポポルとパレッタちゃんに食われてしまっていたことだろう。


 ギル? 『うめえうめえ!』ってジャガイモを食ってたよ。それだけ。


 そんなギルは今日も大きなイビキをかいて健やかにクソうるさく寝ている。割とざっくりしているけれど、今週はあくまでテスト週間だから今日はこんなものにしておこう。


 ギルの鼻にはガマの油を一滴垂らしておく。潤滑がよくなってイビキも小さくなる……わけないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] テスト中に発動したってことは全裸の人はどっかにメモでも取ろうとしたのかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ