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43日目 全クラス合同大勉強会

43日目


 ギルの爪が鏡になってる。マニキュアとして新たなトレンドに……なるわけないか。


 ギルを起こして食堂へ。休日だから人は少ない……けれど、先週と違って食堂にいる連中の顔が明るい。きっともうレポートで頭を悩ませる必要が無いからだろう。その気持ちはよくわかる。


 で、朝からエレガントにブラックコーヒーを飲んでいたところ、『話は聞かせてもらったよ!』、『よぉ、親友。なんか面白いことしたそうじゃねえか』ってバルトラムイスのシャンテちゃんとアエルノチュッチュのラフォイドルがやってきた。


 はて、なんのことかしらん……ときょとんとしてみれば、『……下手な演技はいいから。私たちにも例のブツ、ちょうだい?』、『この前約束しただろ? ちゃんと情報はみんなで共有するって』などとあいつらは言いだしてきた。


 あいつら、俺たちが必死になってなんとか手に入れた例のブツを平然と強請りにきやがった。図々しい人ってやーね。


 というか、ティキータの連中はともかくとして、なんでなにもしていないあいつらが当たり前のようにそれを貰えると思っているのだろうか。シャンテちゃんならまぁ同期のよしみって思えなくもないけれど、ラフォイドルに至っては憎き卑劣なるアエルノチュッチュの組長である。


 そのことを告げたところ、『てめえが言うな! いつもいつも勝手に親友呼ばわりしやがってよぉ! おまけにちょくちょくヤバいもんウチに投げ込みやがって!』って暗黒魔法のゲンコツが飛んできた。吸収魔法で美味しく頂こう……とするも、奴の魔力の根性がひねくれ曲がりすぎていたため、吸収しきれず。朝から腕にダメージを受けてしまった。


 しかもあいつら、『安心しろ、タダでとは言わない』、『こういうの、好きなんでしょ?』って大量のジャガイモを差し入れしてきやがった。ギルの野郎、それを見て『……し、親友。こいつらも仲間なんだし、見せてあげてもいいんじゃないかな?』ってヨダレを垂らしながら言ってくる。


 もしあそこで『ダメだ』なんて言っていたら、きっと俺はこうして日記を書けてはいなかっただろう。たぶん、ジャガイモと一緒に頭から食われていたはずだ。というか、了承する前からあいつは『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていたし。


 ともあれ、優しい俺はあいつらにも例のブツを見せてやることにした。せっかくなので……というか面倒だったから、今日はもうこのまま食堂で全クラス合同の勉強会をすること。互いに資料を回して写し合い、ついでにわからないところを教え合いましょうっていう寸法ね。


 とりあえず、各々のクラスの字がキレイなやつに資料の写本を作ってもらう。で、レポートが先行しているルマルマ&ティキータがバルト&アエルノにレポートについての注意点や概要を教え、平均的に成績の良いバルト&アエルノがルマルマ&ティキータに試験対策を施すって感じで進めることに。


 意外なことに、この方式が上手くいった。アエルノに物事を何度も教わるのは癪だと思ったのか、遅れてやってきたポポルやミーシャちゃんはいつになく真面目にキリッと人の話を聞いていたし、アエルノにレポートを教えにいっていたクーラスも『……こいつらの考え方自体は、まぁ、新たな発見になるよな』って言っていた。


 唯一残念だったのは、『おい、こいつどうなってんだよ!? 何をどう教えてもどうにもならねえぞ!』ってギルを教えていたアエルノ男子が俺に泣きついてきたことだろうか。子供にもわかるくらいに丁寧に教えたのに、結局何の成果もあげられなかったらしい。


 『ギルに教えるんじゃなくて、ギルの筋肉に教えるんだ。もしくはジャガイモで例えろ』ってアドヴァイスをしたら、『……ごめん、俺はルマルマじゃないから、お前が何を言っているのかわからない』って返された。あんなにも怯え切ったアエルノの表情を見たの、もしかしたら初めてかもしれない。


 午後もそんな感じで勉強会をして過ごす。さすがというべきか、ゼクト以外の組長は教える側に回っていることがほとんどであり、ひっきりなしにあちこちに呼ばれまくっていた。性格が悪いことを除けばラフォイドルもなかなか教えるのが上手いようであり、『こんなのもわかんねえのか? これだからお前らは……』、『サボってないで手を動かせや! ケツ叩かれなきゃわかんねえのかよ!?』からの『なんだよ、やればできるじゃん。それでいいんだよ』ってデレるところがたいそう不気味。ロベリアちゃんも『なんで素直になれないのか。男は理解に苦しむ生き物ね』ってコメントしていたっけ。


 おやつの時間頃、食堂の入口にて『わぁ……っ!』ってステキな声が。紛れもなくステラ先生。俺たちがみんなで勉強をしているのを見て、『こういうの、いいよね……! 先生ちょっと憧れていたんだぁ……!』って目にうれし涙を浮かべていた。


 ……ステラ先生、学生時代はずっと独りで寂しく勉強していたらしい。『お友達に教え、たり、おしえ、られた、り、したかった、なぁ……っ!』って話しているうちにポロポロと泣き出す始末。『あれ!? な、なんで涙が出てくるの……!? ぜ、全然悲しくないよ? ホントだよ!』って必死に取り繕っていたけれど、誰もその言葉を信じちゃいない。


 あの場にいた誰もがステラ先生に同情していた。アエルノチュッチュでさえ何とも言えない表情をしていた。


 『……おい、今日は夜までみんなでここで騒ぐか』ってラフォイドルが提案してきたと言えば、それがどれだけのことだったのかわかってもらえると思う。


 そんなわけで、今日はこのまま夜まで勉強会という名のどんちゃん騒ぎをすることに。『お金ならあるから! パーッと料理を頼んじゃおう!』ってシャンテちゃんがバルトの資金を使って料理を注文しまくり、ラフォイドルも『しょうがねえ……秘伝の薬を分けてやろう』って【げんきにおべんきょうできるおくすり】(合法)を大放出。ティキータに至っては『勉強よりも宴だよな!』ってガチなセッティングに入りだしたくらい。


 しょうがないので俺たちルマルマも保冷庫のおやつ……具体的にはハゲプリンを大解放する。量が量だから追加分も作成することに。『勉強終わったやつから食っていいぞ! 早い者勝ちだからさっさとノルマを達成しろよ!』って全体に発破もかけておいた。


 結局、みんなで飲み食いしながらけっこう遅くまで勉強をすることに。もちろんステラ先生も飲み食いし、かなり上機嫌でいろんなことを教えてくれた。中でも【本気を出せばシキラ先生くらいなら普通に勝てる】という情報はその最たるものだろう。ステラ先生ってばマジ最強。


 風呂入って雑談して今に至る。残念ながら人に教える&厨房での作業が多かったため、勉強会の概要やどんちゃん騒ぎについてあまり触れられないのが悲しいところ。ロザリィちゃんとイチャイチャもできなかったし、ステラ先生ともちょびっとしか喋れなかった。


 ただ、なんだかんだでアエルノやバルトの連中と親交を深められたのはいいことだと思う。これからまたいつ大きな脅威が襲ってくるかわからないわけだし、仲良くなっておいて損はないはずだ。それに、今回はギブだけの関係だったけれど、いつかはテイクがもらえるかもしれないからね。


 ギルは今日も健やかにうるさいイビキをかいている。結局、こいつに物事を教えられるのは俺だけだということが判明したため、今後も俺が筋肉の調整をすることになるだろう。まったく、ずいぶんと手間をかけさせてくれる親友だ。


 とりあえず、奴の鼻にはこっそりくすねたラフォイドルの髪の毛でも詰めておく。何が起こるのかちょう楽しみ。


 あともうちょっとだけ自分の勉強をしてから寝よう。グッナイ。

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