327日目 宿屋での日常
327日目
ちゃっぴぃが俺のケツに抱き着いている。そんなに俺のケツサイズアップしてたの?
ちゃっぴぃをお姫様抱っこして食堂へ。今日は遠出をするつもりだったのか、珍しくテッドがこの時間に起きていた。冬で寒いゆえに眠そうにしているアリア姐さんを合法的(?)にガン見するという、あまりにも呆れた行いをしている。
そんなわけで、『あいつのケツ、好きなだけおもちゃにしていいぞ!』ってヒナたちをけしかける。なんとも頼もしいことに、ヒナたちは一斉にテッドのケツにヘドバンをかましてくれた。流石のテッドも、これにはたまらず逃げ惑うばかり。
『ふっざけんなコラァ!』って俺の方にナイフが飛んできたのだけはわけわかめ。華麗なる俺はあらかじめ結界張っていたから大丈夫だったけど。
朝食はあったかオニオンスープ。もちろんマデラさんがこさえてくれた一品。やっぱり働かずして食べる飯は美味い。出来ることなら一生この快楽を貪っていたいところだ。
ややあってから、ちょっぴりお寝坊ロザリィちゃんの起床。昨日のことがあったのでまともに顔を見られなかったけれども、ロザリィちゃんは『大丈夫、今日も大好き!』って俺を抱きしめてくれた。わぁい。
『たとえ──くんがどんな辱めを受けようとも、誰にも──くんを渡すつもりはないんだからね?』ってロザリィちゃんは笑って俺にキス。『うひひ……あーゆーのも、なかなか可愛くてよかったねえ?』とも。
今度から、お仕置きスタイルケツビンタはロザリィちゃんにやってもらうべきだとマデラさんに具申しようと思った次第。その方がみんなが幸せになれるじゃん?
今日はぼちぼち宿屋の中でゆっくり過ごす。どうせやる気も無いし、あえてわざわざ働く必要も無い。さしあたり、新入り(?)であるアリア姐さんには『冒険者は基本的にクズだから注意しておけ』と伝えておく。
とりあえず、アリア姐さんの隣には適当な大きさのカットする前の薪を置いておいた。『いざとなったら、こいつをサバ折りにして「見せつけて」やれ』と伝えておく。それを見てなおアリア姐さんへ手を出そうというのなら、相応の覚悟をもってこちらも事に当たる次第。
アリア姐さん、「意外と物騒なのね」とでも言わんばかりに薪を試し折りしていた。寒くて全体的に動きは鈍っているけれども、本来の能力はちゃんと十分に使えるようだ。
朝の支度が大方終わったであろう所で、『あーそーぼっ!』ってリアがやってきた。どうやらこいつ、少しずつ仕事の量や種類も増やされているらしい。『ベッドメイキングに、お洗濯に……お料理も少しと、最近ちょっとだけ普通じゃないネズミ捕りもやったよ!』とのこと。ただ、相変わらず魔法はまだ使っていないようだ。
『アレクシスとアレットはどうした?』って聞いてみる。『パパもママもおしごと!』って返ってきた。仕事と称して何回かデートしているの、いつこいつにバラしてやろうかな?
あと、せっかく優しい俺が遊んでやろうとしたのに、リアが向かったのはアリア姐さんの方。なんかそのままちゃっぴぃと一緒にぎゅーっ! ってアリア姐さんを抱きしめていたと思う。アリア姐さん、植物とはいえ抱きしめた感じはまんま人間だから、そういう意味ではさぞや抱きしめがいがあったのだろう。
『ふぉぉ……! やっぱり、ママよりもおっきぃ……!』ってリアは嬉しそうだった。子供って本当に残酷だと思った。
……改めて振り返ると、アレットはあのザマだし、リアが求めるほどの柔らかさを持っているのはこの宿屋ではせいぜいがマデラさんかナターシャってところだろう。マデラさんは仕事で忙しいし、ナターシャなんてもってのほか。酒臭いうえに下手に絡まれたらそのままサバ折りされかねない。あとあいつ服装がアバズレだから下手に抱き着くとずり落ちそうになる。教育によろしくない。
そう考えると、安全に抱き着けてかつ柔らかくて抱き着きがいがあるのはアリア姐さん、もしくはロザリィちゃんと言うことになる。次点でちゃっぴぃといったところか。リアが妙にアリア姐さんに懐いているのも、もしかしたらその辺に理由があるのかもしれない。
ミニリカは語るまでもなく論外。それだけ。
午後の時間にチットゥが帰ってきた。ふと思ったので、『そういやお前、男? 女?』って聞いてみる。
あいつ、『……好きな方でいいよ』って言ってた。『なんなら股座掴んでみるか?』って割と普通に言ってきたりも。『そんなことよりあっちの学校でのお土産とかないの?』って要求されたんだけど、やっぱりあいつ男……なのか?
ちなみにリアの判定では、『単純な柔らかさなら女の人。ボリュームは間違いなくママと同じレベル。靴の臭さは男の人で、吐いた時の面倒くささも男の人。趣味嗜好はよくわかんない』とのこと。結局よくわからんだけである。
夕方より少し前に『客が戻ってくる前にさっさと風呂に入りな』ってマデラさんにそう言われたため、風呂に行くことに。『今日はしょうがないからおにーちゃんと一緒に入ってあげるね!』ってリアがついてきた。もちろん『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃもいっしょ。
『う……うん、この年ならまだ普通だよね』ってロザリィちゃんがなんか悩ましそうにしていたっけ。リアの奴、『明日は一緒に入ろうね!』ってロザリィちゃんに言ってた。
風呂場で改めて思ったけど、やっぱリアが微妙にデカくなってた。頭を洗ってやるときの違和感がなんかすごい。前はちゃっぴぃと同じもんだと思ってたけど……いや、コレちゃっぴぃもデカくなってるのか?
『お前太った?』って何気なく聞いたら、『ふんッ!』ってめっちゃケツビンタされた。もちろん風呂場だから直。古傷に響いて思わず悶絶したことをここに記す。
夕方ごろには大体の冒険者が戻ってきた。そして今日も今日とて宴会……なのは良いんだけど、誰も俺にお酒を勧めてこない。俺がお酒を飲もうとグラスを取った瞬間、『おこちゃまにゃ早いんだよ!』、『ガキはミルクでも飲んでな!』って言ってくる始末。
『なんだ、負けるのが怖いのか?』って煽ったら、『勝ち負けで飲もうとしている時点でお子様だな』ってヴァルのおっさんに煽られた。いつか吠え面かかせてやろうと思う。
……でも、マジでなんで誰も俺に酒を飲ましてくれないんだ? マデラさんからも、『こっちにもタイミングってものがあるから』って言われるし。まぁ、マデラさんがそう言うのなら仕方がない。
だいたいこんなものだろう。最後になるけれど、寝る前に何となくトイレとかを済ませていたところ、廊下にて顔中が爛れて目と口と鼻の孔だけしか残っていない化け物が徘徊しているのを発見。思わずビビッて杖を構えたところ、よくよく見たらただの顔面パックモンスターだった。
『べ、別にいいじゃろ……美肌を保つのには、たゆまぬ努力が必要なんじゃ……!』ってミニリカは言っていたけれども、それにしたってあの顔面パックはマジで心臓に悪い。この俺でさえビビらせるレベルってどういうことなのか、あいつは一度考えたほうがいい。
今度の顔面パックにはいったいどんな材料が使われているのやら。ちゃっぴぃとリアがあの姿を見なかったことだけは不幸中の幸いだった。アレみるとマジでその日寝られなくなるもん。
そうそう、寝る間際にロザリィちゃんとイチャイチャ……というか、普通におやすみなさいのキスをした。みんながいる手前、こっちだとどうもあまりロザリィちゃんとイチャイチャできないけれども、夜のあの特別な時間だけはたまらなく好きである。
『怖ーい魔物がうろついているし、早く寝ないとダメだよ?』って声をかけたら、『またそーやって憎まれ口叩くんだからぁ』って頭をぺしって叩かれた。『綺麗になる努力って、ホントに大変なんだよ?』って脇腹を突かれたりも。
『でも正直アレは怖いでしょ?』って言ったら、『……おやすみ!』って口で口を塞がれてしまった。まったく、これだからロザリィちゃんには敵わないぜ。
今日もちゃっぴぃはスヤスヤ眠っている。当たり前のようにリアも俺のベッドにいて、二人して抱きしめあっている。おまけに三体も人形がいるものだから、この段階で俺の寝られるスペースが皆無に等しい。自分のベッドなのに自分が寝られないとはこれ如何に?
まぁいい。ちゃっぴぃもリアも一晩抱き枕の刑にすればなんとかなるだろ。優しい俺だから大丈夫だけれど、もしこれがナターシャだったら二人とも明日の朝日を無事に拝めなかっただろう。その辺の感謝をしっかりしてほしいものだ。みすやお。




