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310日目 ルマルマ二年生おつかれさまパーティー

310日目


 クッキーがそのまま残ってる……いやビスケットだコレ。


 ギルを起こして食堂へ。なんだかんだで今日がゆっくり朝食を食べられる実質最後の日だからか、割と普通にみんなが食堂に集まっていた。昨日はあんなこと言ってたくせに、休日限定デザートも全員分(!)あるというなんとも素晴らしいサプライズも。『これに限って言えば売れ残ることはないからね!』っておばちゃんが言ってた。


 そんなわけで、今日は俺も休日限定デラックスパフェを頂く。せっかくなのでロザリィちゃんとイチャイチャしながら頂きたかったんだけれども、ロザリィちゃんは女子たちでパフェを『あーん♪』させあいっこしていたためそれは叶わず。女子は女子ってだけで女子とイチャイチャできるからずるい。


 『パフェ……』って甘党のジオルドがしょんぼりしていた。ジオルド的にはいろんな味を楽しみたいのに、女子と違って男子はあそこまで露骨に互いのを食べ比べしないからちょっと悲しいらしい。『さっさと彼女を作れば解決するのにな』って何気なく零したフィルラドは、ジオルドに渾身のケツビンタをされていたことをここに記す。


 ちなみにだけど、うちのちゃっぴぃは女子はおろか男子の所にまで出張って『きゅーっ♪』っていろんなものを貰いまくっていた。今日が最後のチャンスだと本能で理解しているのか、バルトやティキータ、アエルノのところにまで。


 『ちゃっかりしてるんだな、お前……』ってゼクトはちゃっぴぃにウィンナーを貢いでいた。『子供らしくて可愛らしい無邪気さね』ってシャンテちゃんはハニートーストの真ん中の一番美味いところを上げていた。ラフォイドルはブラックコーヒーのカップを強奪されるも、ちゃっぴぃは『きゅううう……!』って涙目。『これ俺悪くないよな?』ってラフォイドルが(なぜか)ロベリアちゃんに弁明。ロベリアちゃんは口直しとしてココアを上げていたっけか。


 一応書いておく。ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを食っていた。ホントにマジで美味そうに食っていた。試しに俺も食ってみたけど、やっぱり味はただの普通のジャガイモだった。


 さて、午前中はクラスルームでゆったり過ごすことに。すでに旅支度は整えているからやることはないし、かといって今から外に出かけるって気分でもない。必然的にそれくらいしかやることが無かったと言えよう。


 『しばらく抱けそうにないから……』ってかなりの女子がグッドビールを抱きしめていたのを覚えている。やっぱりなんだかんだで自分だけの使い魔ってものにみんな憧れがあるらしい。『実際に面倒見るのは大変だと思うけど、それはそれとして誰かの使い魔に構うのはちょう楽しい』とのこと。責任が無いからこそ、ってやつだろうか。


 暇だったので俺もちゃっぴぃで遊んでみる。あいつのほっぺをぐにって掴んでぐいーって伸ばせば、そりゃもうびっくりするくらいにもちもちで超伸びる。『きゅうう……!』ってぶんむくれるあいつの顔が最高。何気にこれはこれで構ってもらって嬉しいのか、あいつ不満そうな顔をする割には逃げようとする素振りをみせないんだよね。


 クソどうでもいいけど、ヒナたちがこぞってポポルの腹巻の中に頭を突っ込んでいた。『なんだかんだで一番落ち着くんだろ。生まれたばかりの時によくあそこに入ってたし』とはアルテアちゃんの談。みんなとの別れを寂しく思っているのかもしれない。


 アリア姐さんとジオルド? ジオルドのが悲鳴を上げられないほど情熱的なハグをしていた、とだけ。アリア姐さんはこう……すごく切実と言うか、いい意味でロマンスあふれる感じに寂しそうな表情をしていたのに、当のジオルドは青紫色の顔でピクピク手足を震わせているばかりだったよ。


 ちなみにクーラスはそんな様子を何も光を映していない瞳で見つめていた。『たとえ魔物でも、たとえそこに身体的ダメージがあったとしても。女の子と触れ合えているというその絶対的な事実という境界が、俺とあいつを隔てる最たるものだ』ってなんかブツブツ言っていた。


 『アリア姐さんに「女の子」はないだろ?』って何気なく回答したら、「ちょっとどういう意味かしら?」と言わんばかりにブチギレ一歩手前のアリア姐さんにケツビンタをされた。大人の女性って意味のつもりだったのに。ふえぇ。


 午後の少し早めの時間に、『ね、ちょっと早いかもだけど……お散歩もかねて、もう出発しない?』ってステラ先生がおねだりしてきたため、そういうことになった。みんなで、大人数で……特に意味もなく街をぶらつくことに憧れがあったらしい。『寂しいのを我慢できるように、今のうちに楽しい思い出をいっぱい作っておくの!』ってステラ先生は言っていた。


 確かに寂しいことには間違いないんだけど、まさか今生の別れを惜しむかのように言われてしまうとは。これはもう無理やりにでもステラ先生を攫って俺の宿に連れ帰るか、あるいは俺も学校に残るべきなのかもしれない。ほんの一時でもステラ先生に寂しい思いをさせてしまうとか、マデラさんが許したとしても俺は俺自身で俺が許せなくなってしまう。


 あ、散歩の方はマジで特に何事もなく終わった。適当にぶらぶら歩いてそこらのお店を冷やかしただけ。ステラ先生にとってはそれが堪らなく楽しいらしく、女子と一緒にきゃあきゃあおしゃべりしたりしていたっけ。


 頃合いになったところでいつものあのお店に。『待ってたよー!』ってオーナー兼シェフの眠そうなおねーさんも俺たちを暖かく迎え入れてくれた。しかもしかも驚くべきことに、『御贔屓にしてくれるから、今日は特別に貸し切りにしちゃったよー!』とも。最高すぎない?


 『中途半端に開けるよりもきっちり四十人分確保できるってわかっている分、こっちの方が効率的なんだよねー』っておねーさんは言っていた。どのみちこの時期は客入りが不安定だから、むしろ貸し切りの方がおねーさん的には嬉しいらしい。ウチの宿屋じゃ考えられない現象だ。


 誰がステラ先生と同じテーブルに着くかでだいぶ……いや、お互い杖に手をかける程度には揉めたけれども、ともあれさっそくオーダー。『もう君たちお酒飲めるんだろー? とりあえず最初はコレが定番だぞー!』って普通にエールが樽(みたいなお洒落なデカいピッチャー)で出てきた。入店後すぐさま乾杯の態勢が取れるとか、このお店やりおる。


 『それじゃあステラ先生、乾杯の挨拶を』って降ってみる。『んっんー……!』ってなんかステラ先生上機嫌。軽く何度か咳払いをした後、『この一年間……お疲れさまでしたーっ!』って盛大なる乾杯の挨拶が。


 『うぇぇぇぇい!』、『お疲れさまぁぁぁ!』って大歓声が響く。グラスとグラスがごっつんこしまくりんぐ。苦くて不味くて飲めない……って人があんなにも多かったのに、なんかもうみんな普通に美味そうにぐびぐびエールを飲みまくっていた。ステラ先生も気持ちよさそうに一気に半分くらいも飲んでいたっけ。


 そこからは普通にルマルマ二年生おつかれさまパーティー……通算して第八回ルマルマおつかれさまパーティーの開幕。去年は確かコース料理だったような気がするんだけど、今年はむしろ大皿料理がほとんどで、とにかくドカッと盛られたそれをみんなで思い思いに取り分けて好きなように食べてくださいって感じ。


 山盛りのサラダ、山盛りのフライドポテト、山盛りの唐揚げ、山盛りのグラタン、山盛りのサンドイッチ、超特大のピザ……と、とにもかくにも見た目のインパクトが凄まじい。『こんなでっかいピザ初めてなんだけど!』ってポポルは大はしゃぎし、『お肉の山とか最高すぎるの!』ってミーシャちゃんもテンションマックス。気持ちはよくわかる。


 もちろん、ただ量が多いってだけじゃない。名前はよくわかんないけどマカロニと辛めのソースを使った小洒落た料理のお皿があったり、見た目がなんとも華やかなカルパッチョとかも。燻製盛り合わせ(ウィンナーとか)もあったし、チーズ盛り合わせ(軽く見ただけで六種)もあった。『ほほぉ……!』ってアルテアちゃんが目を輝かせ、『ウィンナーうめえ!』ってクーラスもご満悦。


 実際、チーズの盛り合わせはマジで美味かった。いろんな風味のそれがあって、酒に合うもの、単体の方が楽しめるもの、生野菜と一緒に食べるほうがいいもの……など、たかがチーズと侮ることが出来ない。甘めチーズからしょっぱいチーズまであるとか、なかなかニクいチョイスだったと言えよう。


 そして当然のごとく酒もすさまじい。食事が進むってことは酒も進むってことで、最初のエールは早々に空っぽに。『飲み放題だからじゃんじゃん頼んでよー!』っておねーさんはすぐに追加を持ってきてくれた。『赤ワイン!』、『ウィスキー!』、『ミルク系の!』、『果実酒適当に!』ってオーダーにもすぐに応えてくれたっけ。


 しかもそのお酒がまた美味しいって言うね。とても飲み放題で飲める安酒とは思えなかった。俺たちが普段クラスルームで飲むときに買うお酒と明らかにレベルが違う。香りも深く、味も濃くて、上品な酒気が気分を良くしてくれるというか……あらゆる意味で品質が高かった。


 『なにこれうっめぇ!』、『いくらでも飲めちゃいそう!』って上機嫌でがぶ飲みするやつが多数。『そうだろそうだろー! ここのお酒は美味しいだろー! これを飲んだらもう他のお店のお酒何て飲めなくなるぞー!』っておねーさんも大盤振る舞い。なかなか上手い商売するなって思った。


 これにはロザリィちゃんも満足したのか、結構なペースでグラスを空けていた。『あんまり飲むと、帰りがつらくなるよ?』って一応声をかけてみれば、『……──くんがおんぶしてくれるでしょぉ?』ってにこーって微笑まれた。『むしろ、そっちを期待しているんじゃないのかぁ? ん、どうなんだぁ?』って思いっきりぎゅーっ! って抱き着かれたりも。


 あえて書くまでもなく、あったかくて柔らかくて、そして良い匂いがした。酔って体が火照っているのか、こう……いつも以上に色っぽくてすごくドキドキした。破裂しなかった俺の心臓がマジすごい。


 ちゃっぴぃほか使い魔たちもかなり飲み食いしていたように思う。普通にあちこちうろちょろしていたせいで、どこで何をしていたのかイマイチよくわかんなかったんだよね。


 だいぶお酒が入ってきたところで、酔っ払いふわふわステラ先生が『それじゃあ、ここらでひとつコイバナでもやっちゃおうか~!』ってふにゃふにゃ笑いながら宣言。『うぇぇぇぇい!』って歓声をあげるルマルマ。その場のノリというやつか、ジオルドやクーラスまでもが拳を振り上げていた。

 

 初手はまさかのステラ先生。『先生はねえ、ルマルマのみーんなが大好きっ!』ってステラ先生はふわふわ。『みんなを彼氏にして、みんなを彼女にして……みんなと家族になって、これから一生過ごしていきたいっ!』って高らかなる宣言も。


 『んっふっふ……! 先生、別に今すぐでもみんなのほっぺにちゅーしてもいいと思ってるよ?』って言葉を聞いた時はもう、男子も女子もこぞってステラ先生の隣を占拠しようと動いたよね。


 残念ながらステラ先生のちゅーはアルテアちゃんとちゃっぴぃが独占。ちゃぴぃは子供ゆえのすばしっこさと体の小ささを上手く利用した形となり、アルテアちゃんは元来のおかんの気迫を存分に発揮したためである。『うちの娘に変な虫を着けるわけにはいかないからな!』ってアルテアちゃんにしては珍しい酔い方をしていたような?


 で、そのまま流れでアルテアちゃんのコイバナ。『アルテアちゃんってば、フィルラドくんのどこに惹かれたの~?』ってステラ先生はにこにこ笑いながらアルテアちゃんを肘でつんつん。俺もあれやってほしかった。


 アルテアちゃん、割と真顔で『いや……その、フィルには私がいないとダメかなって。そうじゃないと本格的に自堕落なダメ人間になっちゃうかもって思って、気づいたらずっと目が離せなくなって……』って呟く。『ウソだろアティ!?』ってフィルラドは顔面真っ青。


 ここぞとばかりにクーラスが、『ダメ男に引っかかりやすいタイプなのかもな』ってフィルラドを煽りながらアルテアちゃんに話しかける。人間、あれほど浅ましくて醜い顔で笑えるということを、俺はあの時初めて知ったよ。


 ところが、アルテアちゃん、次の瞬間にはすっごいにっこり笑って……。


 『そうだな。ダメ男に騙されるのはもうこりごりだ。だからもう、フィル以外には騙されるつもりは無いよ』ってめっちゃ惚気たんだよね。

 

 あの時の女子の盛り上がりと、そしてクーラスの敗北感に満ちた顔はすさまじかったよね。『きゃあああ!』、『今のめっっっちゃ乙女だった!』、『これもうルマルマ名言集入りじゃん!』って大騒ぎだったし、その言葉を聞いていたシェフのおねーさんも『格言として飾らせてもらうねー!』って超ノリノリ。たぶん面白そうな話題だからって聞き耳を立てていたんだろう。


 『ちっくしょうがァアァァァ!』ってクーラスはヤケ酒を飲んでいた。『おまっ! おまえさぁ……っ! なにもこんな残酷な形でやり返す必要なくない!? いくらなんでも性格悪すぎない!? マジなんでお前、お前が……ちくしょぉぉ……!』ってめっちゃ泣きながらフィルラドに絡んでいたっけ。

 

 そのまま流れでコイバナ大会。ミーシャちゃんは『この説得力なの!』ってギルにポージングさせていた。『こりゃやべェ!』、『そりゃ惚れるわ!』、『筋肉の輝きですべてを愛そうとしているのかい!?』って男子も女子も大盛り上がり。


 パレッタちゃん(酔ってる?)も、『言葉じゃない、行動で示せ』っていきなりポポルの胸倉をむんずと掴み、そのままポポルにキス。『ふぎゃああああ!?』ってポポルは悲鳴。なんかポポルの口の端から血が出ていると思ったら、盛大に舌に噛みつかれたらしい。ポポルも瞬時に噛み返したっぽいけれども、もしかしなくてもアブノーマルなアレなの?


 俺とロザリィちゃん? なんか普通にスルーされたけど? しょうがないから二人で『毎日一目ぼれしている』、『私なんて見る度に一目ぼれしてるもん!』って惚気あったっけ。


 そして何がどうしてそうなったのか、『もし別の誰かを恋人にするとしたら、だれを選ぶ?』……なーんて話題が全体に。あくまで飲み会のノリで、と言う前提のもとアルテアちゃんは『……普通にジオルドかな?』とのこと。


 次の瞬間の『う゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?』って悲鳴(?)はいったい誰のものだったのか。女子のようにも、男子のようにも聞こえたから困る。ステラ先生だけは『きゃあああ!』って楽しそうに声を上げていたけどね。


 ちなみに理由としては、『普段のアリア姐さんに対する気遣いから気配りがきっちりできてるのがわかるし、目立った悪癖もなさそうだし、手先が器用で頼りになるし……』とのこと。思えばアルテアちゃん、ルフ老の覚醒の時とかで何気にジオルドと絡むことが多かったような? 


 『てめえ、俺のアティだぞ!』ってフィルラドがジオルドに絡んでいた。そういうところがヒモクズなのだと思う。


 お次はミーシャちゃん。『んー……この中なら、ポポルなの!』とのこと。『趣味が合うし、変に気を使う必要も無いし……あと、何気に隣に寝かせておくとなかなかに温いの!』ってちょう笑顔。お酒が入っていたからとはいえ、なかなかきわどい発言ではなかろうか?


 この言葉を聞いた瞬間、ギルが『俺だってもっとめっちゃ熱くなっちゃうもんね!』って筋肉を微振動。ムワァ……! ってなるレベルで奴から汗が。『んもう! わかったからヤキモチやかないの!』ってミーシャちゃんがにまにま笑いながらギルに抱き着いてキス。この一連の流れのどこにロマンチックなところがあったのだろうか?


 流れ的に今度はパレッタちゃん。『ヴィヴィディナの導き的にクーラス?』とのこと。『えっ……ちょ、参考までにその理由は?』ってクーラスが問いただしたところ、『汝の心に潜む混沌、汝自身では気づかぬものか……』ってパレッタちゃんは黄昏顔。


 ようわからんけど、つまりクーラスが一番内面と外面の差があって、心の中にパレッタちゃん好みの激情、あるいはヴィヴィディナ界の輝きに照らされたそれを飼っているってことなんだろう。『あと普通にハーブティー美味しいし、ウチのババアにもしっかり反撃できそうだから』ってパレッタちゃんは言っていた。闇が深い。


 『ホントにそっちに行ってもいいのに……』ってぼそっと呟いたポポル。顔を真っ赤にしたパレッタちゃんが……いや、日記に書くのは止めておこう。ステラ先生とアルテアちゃん、他ルマルマ女子がとても微笑ましい顔でパレッタちゃんとポポルを見つめていた、とだけ記しておく。


 そしてお次はロザリィちゃん。ロザリィちゃん、す……とフィルラドを指さす。『え゛……!?』ってどよめき。俺も一瞬気絶しそうになった。


 ……かと思えば、もう片方の手でクーラスも指さす。まさかのダブル指名。今までにないスタイル。俺もうあの瞬間ナイフで自分の首を突きそうになった。


 で、ロザリィちゃんが


『絶対にありえないし、親を人質に取られてもあり得ないし、そうしなきゃ世界が滅びるって言われても選ばないし、そうしないと──くんが殺されるって言われても選ばないし、手足を折られても選ばないし、クラスのみんなが敵になるって言われてもありえないし……』


 ……くらいまで続けたところで、『あの、その、わかっていてもマジでそれ傷つく……』、『い、言いたいことは分かったから……ちょっとガチでショック受けるからもうやめて……!』ってクーラスとフィルラドが涙目で降参の態勢に。『わかればよろしい!』ってロザリィちゃんは胸を張り、そして俺にキスしてきた。わぁい。


 ちなみに二人を選んだ理由としては、クーラスは『──くんみたいに頭が良くていろんな人に勉強を教えたりしているから!』、フィルラドは『──くんと同じ金髪だから!』とのこと。『結局惚気じゃねえか!』、『最低すぎる消去法ね』ってクラスからはブーイング(?)。


 『一瞬でも浮かれた俺がバカだった……』ってクーラスは渇いた笑み。『お前単独で選ばれてるじゃん……俺なんておまけだし、しかもマジで髪の色だけしか見られてないんだぞ……』ってフィルラドも同様。ケラケラ笑いながらアルテアちゃんが二人の肩を叩いていたっけ。


 『二人を選ばなかったせいで、俺が殺されちゃったみたいだけど?』って意地悪して聞いてみたら、『仇を取ってすぐに私も後を追うから何も問題ないよね?』ってにっこり微笑んでぎゅーっ! ってしてきた。やっぱりロザリィちゃんは最高だ。


 なんだかんだでその後も同じ話題に。現状恋人関係にあるのなんて(少なくとも公には)俺たちくらいしかいないけど、酒の席のノリってことで女子のみんながそれぞれ男子を指名。圧倒的にクーラスとジオルド、そしてちょっぴりギルだった。なんかちょっと意外。


 当のクーラスとジオルドは『なんで』、『どうして』って嬉しいはずなのに絶望の顔。その理由がわからないうちは、どう頑張っても彼女なんてできないだろう。


 ちなみにステラ先生は『──くんとギルくんかな!』とのこと。俺を選んだ理由は『先生よりも先生みたいで、パパやおじさんみたいに頼りになるから!』で、ギルを選んだ理由は『明るくてムードメーカーで、すっごく頼りになるしパパが連れてきたお見合い相手をぶっ飛ばしてくれそうだから!』とのこと。……喜んでいいのか、これは?


 なお、こんなにもイケメンなのにステラ先生以外での俺の指名はゼロ。みんなが口々に『命は惜しい』、『冗談でも冗談じゃ済まされない』、『それさえなければ……それがあるから全部だめなのよね……』、『スペックだけは良い、スペックだけは』、『あなたの愛の重さに憧れはあるけれど、ついてはいけない。公衆の面前でアレは無理』、『同じくらいレベルあげなきゃ満足してくれないんでしょ……? さすがにロザリィレベルのはちょっと……』などなど、散々に言われた。ここぞとばかりに男子に煽られたことをここに記す。


 なんだかんだでそんな感じで第八回ルマルマおつかれさまパーティーは終了。帰り際にて、おねーさんより『これ、例のブツだよー』ってロザリィちゃんの家に持っていく手土産を受け取った。『普通は考えられないくらいのサービスしてあげたからねー? これからもご贔屓してよねー?』っておねーさんはにこにこ。俺たちの会話が面白くて聞いてるだけで楽しめたほか、学生時代を思い出して懐かしい気分になったとか。


 帰り道にてロザリィちゃんをおんぶさせていただく。いや、別に歩けないほど酔っていたってわけじゃないんだけど、『おんぶ!』って甘えられたんだよね。あったかくて柔らかくて……背中にこの世の全ての幸福を集めてなお足りないくらいの幸福感があったってことだけ伝わればいい。


 ちなみに男子及び女子の数人は飲みすぎてまともに歩けない奴がいた。何人かは『しょうがねえなぁ!』ってギルが盗賊担ぎをして運び、何人かは「ちょっと、帰るまでは耐えてよね……?」ってルマルマ壱號でアリア姐さんの隣。『情けない奴らなの!』ってミーシャちゃんもクレイジーリボンで運んでいた気がする。なかなか凄まじい絵面だったと言えよう。


 ステラ先生? なんか普通にパレッタちゃんとイチャイチャしてたよ? 『パレッタちゃんってば、やるねぇ~!』ってシューン先生を彷彿とさせるような感じで絡んでいたっけ。たぶんだけど、アルテアちゃんがフィルラドと良い感じのムードで歩いていたから、なんとなく察してパレッタちゃんをターゲットにしたのだと思う。出来ればステラ先生も俺がおんぶさせていただきたかった。


 夕飯食って……じゃない、風呂入って軽く雑談して今に至る。外で飲み会してきた割には比較的早めに帰ってきているような。やっぱ始まりが早めだったのと、明日に出発だからみんなどこかでセーブしていた……わけないか。そんな理性のあるやつらだったらあそこまでバカ騒ぎしてないし、吐いてこそいないけれどフラフラで二日酔い確実な奴はけっこういた。みんな最低でも三日くらいは馬車に詰め込まれることになると思うんだけど、大丈夫なのかアレ?


 とりあえず、みんな無事に寮に戻ってくることはできたし、ステラ先生もそのままこっちにお泊りだから何の問題はないけれど……明日の朝がどうなっているのか、それだけが心配だ。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。今日も今日とて腹筋モロ出し。またしばらくこいつの鼻にものを突っ込めなくなると思うとちょっと寂しいような気がしなくもない。それよりも安眠できる喜びのほうがはるかに大きいけどな!


 ギルの鼻にはこの一年間の労いを込めて一輪の花を挿しておく。俺におんぶされていたロザリィちゃんの背中にひっついていたちゃっぴぃがいつの間にか持っていた奴ね。いったいどこで拾ってきたのやら。グッナイ。

 


※全テノゴミヲ滅却セヨ

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― 新着の感想 ―
[良い点] あの……舌を噛んで瞬時に噛み返せるキスの仕方ってディー……いや、よそう。 なんだかんだ名前出てきてるメンツの中ではパレッタちゃんが1番好きだから家庭に闇がありそうなの心配じゃわ…… なん…
[一言] バカ騒ぎって楽しいよね 今できないけど…… 本命:花の種 対抗:大輪の花 大穴:枯れた花
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