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29日目 アルテアスペシャル美容液作り:二年目

29日目


 俺とギルのベッドが抜け毛だらけに。おまけになんか獣臭い。朝からブチ切れそう。


 ギルを起こして食堂へ。休日のために食堂の人の影は少ない……けれど、女の子がしちゃいけないヤバい顔をして休日限定スペシャルクレープを頬張るバルトラムイスの女子の集団を発見。『きゃはははは!』ってトリップしたパレッタちゃんのように笑っていた。


 どうやら昨晩、徹夜でレポートを書いていたらしい。目元にしっかりとクマがある。今の段階じゃまだ徹夜するほどでもないだろう……なんて思っていたけれど、『どうせ辛い思いをするのなら、実験後のテンションでそのまま一気にやろうと思った』とのこと。ご褒美に休日限定デザートを食べることだけを希望にがんばったそうな。


 ともあれ、俺も休日限定スペシャルクレープを食してみることに。いろいろ種類があったけど、ここはオーソドックスにたっぷりの生クリームと大きなイチゴが贅沢に使われているものをチョイスする。


 イチゴの酸味とクリームの底抜けの甘さがベストマッチしていてマジ最高。クレープの生地もいい感じ。休日限定だけあって普通に食べると零れてしまうくらいに具がいっぱい。見た目以上のボリュームがあって大満足。


 もちろん、俺の膝の上にいるちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってイチゴとクリームがみっしりつまった最高に美味しいところで『あーん♪』の構えを取ってきた。思わず貢いでしまった自分に泣きたくなる。しかもあの野郎、お口の周りを真っ白にしちゃうし。


 で、手を少しクリームで汚しながらも完食。ちょうどそのころになってクレープの列から戻ってきたロザリィちゃんが俺の近くに座ってきた。『みてみて! 今日はチョコレートクレープにしちゃった!』って朝からとろけるような笑顔を受けべてくれてマジプリティ。天国はここにあった。


 『はい、あーん♪』ってロザリィちゃんは俺の膝の上にいるちゃっぴぃに最初の一口を『あーん♪』してあげていた。ちゃっぴぃのやつ、それはもうデカい口を開け、たいへん嬉しそうに『きゅーっ♪』って頬張る。白いおひげに茶色のそれが混じった瞬間だ。


 ロザリィちゃん、それを見てにっこりと笑い、自分もかぷっとクレープにかじりついて『おそろいだねっ!』って言っていた。そんなところが本当にステキだと思います。


 しかもしかも、自分でつんつんって口の端を指さし、『ね、取ってくれないの?』って妖しく笑う。『ん? ん? パパってばもしかして、照れてるのかなあ?』って空いている手で俺の脇腹を突いてくるところとか最高に至高。


 しかも、自分で言っていて真っ赤になってるんだからもうね。プリティって言葉はロザリィちゃんのために生まれた言葉だと確信したよ。


 もちろん、ちゅっ! ってキスしてチョコを取る。『よくできましたっ!』って頭を撫でてくれて最高に幸せだった。俺もうホント、ロザリィちゃんなしじゃ生きていけないわ。


 なお、俺たちがイチャイチャしている間、ギルはずっと『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。たまにはイチャイチャしたくなったのであろうミーシャちゃんが『いっしょにクレープ食べるの!』って食べあいっこを提案するも、ギルはジャガイモの美味さに恍惚としていて気付かず。


 怒ったミーシャちゃんが奴の後頭部をケツビンタしても、奴の脳筋が堅牢すぎたため逆にミーシャちゃんの手を痛める結果となっていた。


 ……それにたぶん、結果的にはこっちのほうがよかったのだろう。あいつの口はデカいから、クレープだって一口で丸のみだ。そもそも食べあいっこが成立しない。


 午前中はクラスルームでレポートの修正を行う。最近は休みでもレポートの修正をしているからあんまり休んだ気がしない。あのレポートの表紙をみると吐き気を催す気がするんだけど気のせいだろうか。


 ともあれ、やらないと終わらないから作業を進める。キイラムの話を聞く限り、水色のレポートで問題なのはあくまで書き方であるはずのため、文章構成をちょっと見直してみることに。なるべくシンプルに事実だけを書き、余計な事やあやふやなことは一切書かず、論理的に筋道を立てて記述してみた……けれど、今までと具体的にどう変わったのか自分でもよくわからん。


 こればっかりはもう、何度もトライして正解を引き当てるまで粘るしかないだろう。とりあえず、『俺とお前で別の書き方をして出してみよう。どっちかが当たったら、以降はそれをベースにすれば行けるはずだ』ってクーラスとは話し合っておいた。


 で、日記で培った筆記スキルを用いて考察をパパッと直す。その後は休む間もなくピンク色のレポート(二回目の実験レポート)の修正へ。


 こちらもまた先生や上級生の文字でコメントがいっぱい書かれていたのでササッと直すことに。ちょっとしたグラフの形式のミスなんかはすぐに直せるけれど、やっぱり問題なのは考察について。どうせこれも書き方の問題だろうと推測されるので、クーラスの考察と一緒に合わせてそれっぽいことを書いておいた。


 なお、クラスの大半が俺たちのレポートを参考に自らのレポートの修正を行っていた。『組長なんだし助けてくれよ』、『今までいろんなことを一緒に乗り越えてきた仲間だろ?』などと情に訴えてくる始末。やる気を見せる姿勢を見せているだけマシか。


 『教えてくれたら、存分に甘えさせてあげるのだけれど……』、『お風呂上がりに耳かきサービスしちゃうから、ね?』ってクーラスは女子に詰め寄られ、だらしなく笑っていた。なんか最近、女子たちのクーラスへのアピールがだいぶ露骨になってきたと思う。


 あいつがキイラムのようなロリコンに堕ちないためにも、女子たちにはぜひもっと積極的になってほしい。あと、出来れば後ろでヤバい顔してペンを折っているジオルドにもいくらかの配慮をしてもらいたいものだ。


 なんだかんだで修正だけだったため、昼過ぎ頃には作業終了。ポポルやフィルラドは相変わらず『明日から本気出す』って言ってたけど大丈夫なのだろうか。


 さて、暇だしちゃっぴぃを抱き枕にしておひるねでもしようかな……なんて思っていたところ、アルテアちゃんから『アルテアスペシャル美容液の在庫がヤバい』との報告を貰う。ここのところ実験レポートのせいで休日も満足に眠れなかったうえに、ソルカウダの一件のこともあってどんどん在庫が減っていったそうな。


 そんなわけでアルテアスペシャル美容液の作成を行うことに。オリジナルのそれになぜか増殖しているギル・アクアを混合し、その時の気分で適当に魔法材料をぶち込むだけで出来るというお手軽仕様。


 今回はオーソドックスにナエカと堕鳥草、ついでにリシオとちゃっぴぃの唾液──夢魔の唾液も加えてみた。少しでも安眠効果があればと願ってのチョイスである。別に変な意味はない。


 自分で作っていてアレだけど、毎度のことながらどうしてこれで美容液としての効果が発揮されるのかよくわからん。まぁ、ギル要素を用いている段階で常識なんて通用するはずがないんだけどさ。


 なんだかんだで夕方ごろにはそれなりの数のストックを作成することに成功する。『これで女子のお肌の尊厳は保たれた。よかったな、ロザリィに褒めてもらえるぞ?』ってアルテアちゃんは言っていた。ロザリィちゃんはロザリィちゃんだから肌が荒れることなんて絶対にないし、仮に荒れたところで問題なく愛せるんだけどね。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、何やら深刻な表情をしたミーシャちゃんがギルに『ねえ……ちょっと真面目な話があるの……』って切り出した。


 あまりのガチさにクラスルームの空気が凍る。こいつまた何かやらかしたのかとクラスのみんなが視線でギルを責める。ギルの奴、『ジャガイモに誓って俺は無実だ!』って弁明していた。そういうところがいけないと思う。


 で、ミーシャちゃんは『そろそろあたし達も使い魔ほしいのぉ……! 可愛い使い魔がいなきゃもうやってらんないのぉ……!』って涙目になって訴えだした。


 どうやらここに来て、例の使い魔熱が再燃してしまったらしい。たぶん、ソルカウダのときの銀狼もその大きな原因なのだろう。


 ところが、ギルはこれを聞いて『なんだ、そんなことか。ウチにはすでにゴードンもシュナイダーも、ベンジャミンにリチャードだっているじゃないか!』って超笑顔。


 もちろん、これが眠れる竜の尾を踏んだことは言うまでもない。だってそれ全部、マジックバタフライをはじめとした虫なんだもん。


 『違うの! それは使い魔じゃないの! そんなの──に接着剤にされるだけの材料なの!』ってミーシャちゃんは超激おこ。


 『ははっ、親友に限ってそんなことするわけないだろ? ハニー、君はちょっと疲れているんだ』ってギルはミーシャちゃんをなだめすかし、俺にちらりと視線を向けてくる。


 すでにこないだのゴードンを接着剤にしているとは口が裂けても言えなかった。


 いや、ちょうど美容液を作るときさ、ギルが外で筋トレしていてチャンスだったんだよね。それにあいつ、個体の判別が出来ずに同じ名前を付けている奴が何匹もいるし。


 結局、ミーシャちゃんはぴすぴす鼻を鳴らして自室へと引っ込んでしまった。ジオルドが『現実的に考えると世話をするのも大変だし、飼おうと思ってもどこで見繕うんだって話ではあるからな』ってギルのフォローを入れる。『おう、今の言葉よく胸に刻んどけよ』ってアルテアちゃんがフィルラドのケツを叩いていた。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。寝る間際、『なんかハニーのご機嫌をとる方法ないかなあ……』ってあいつにしては珍しく悩んでいた。これが成長という奴だろうか。筋肉は際限なく成長するくせに、頭の中身の成長が著しく遅いのが困るところである。


 ふう、微妙に長くなった。やつの鼻には魔法の豆を詰めてみる。みすやお。

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