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285日目 創成魔法設計演習:最終チェック

285日目


 結界石が結界に包まれている。触れないから持ち運びも発動もできない。意味あるのこれ?


 ギルを起こして食堂へ。今日も今日とてめっちゃ冷え込んでいた。息が真っ白で室内なのにかなり寒い。なんか先週も寒かったような気がする。


 そんなわけで朝飯にはあったかオニオンスープをチョイス。オニオンがたっぷり&どっしり使われた味も量も兼ね備えた逸品。一口飲むだけで体も心もぽっかぽか。やっぱ安定した美味しさってのは大事だと思う。


 俺のお膝の上のちゃっぴぃにもふうふうしてから飲ませてやった。『きゅーっ♪』ってあいつは嬉しそう。その様子をポポルがチラチラ見てきたので、『なんだ、お前も飲ませてほしいのか?』ってふうふうしてみれば、『飲みたくはなったけど、飲ませられたくはない』って普通にカップを奪われた。


 そして代わりに渡されたのがギルのジャガイモ。全然代わりになってないよね?


 ちなみに、ポポルにジャガイモをくすねられてもギルは『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪るばかりでまるで気づいた様子をみせなかった。元々あいつがそんな小さなことに拘らないってのもあるだろうけど、単純にあれだけの山から一つくらい減ったところで誰も気づかないってのが大きいだろう。


 割とどうでもいいけど、アリア姐さんが暖炉の前の一番あったかいところでグッドビールをぎゅ! って抱きしめていた。「その……あったかくて、つい……」とでも言わんばかりにグッドビールを腹をわしわしと揉んでいたような気がする。


 ジオルドが『風邪ひくなよな』って自分のローブをアリア姐さんにかけてあげてたんだけど、アリア姐さんがみるみる真っ赤になっていてちょっとおもしろかった。あの優しさを、もっと下心無く人間に行えることができれば、ジオルドにもすぐ恋人ができるだろうに。


 さて、今日の授業は我らがルマルマの聖母ステラ先生による創成魔法設計演習。『なんかいっつもこの授業の時は寒い気がするねー』って杖をコンコンしながら出欠を取るステラ先生がマジプリティ。ストールとひざ掛けを常備して防寒対策がばっちりなんだけど、それもまたホントに可愛いの。授業を受けているというよりかは、ステラ先生を見にあの教室に行っていると言っても過言ではないくらい。


 『あったかそうですね?』って聞いたら、『そりゃあね!』ってウィンクしてくれた。なんかもう、それだけですべてが許されたかのような感覚になったよね。


 肝心の授業内容だけれども、今日は図面および計算書、企画書の最終チェックを行った。冬休み前までにあらかた全部目途は付けて、冬休み中に完成したであろうから、授業最後の提出前にホントに間違いがないか確認してくださいね……ってやつ。


 『一応計算ミスとかはないはずだが……』ってフィルラドが図面をチェック。『可愛さは追及したつもりなの』ってミーシャちゃんも図面をチェック。『企画書とかやってくれて、ありがとね!』ってロザリィちゃんは俺にキス。うっひょう。


 んで、俺も一応図面から企画書まで一通り再確認する。材料選定、コンセプト……と、特にこれと言っておかしなところは見当たらない。計算にミスも無いし、図面の不足も無いはずだ……なんて、思っていたら。


 『……この図面、組立図だけだと解釈が分かれかねないね』ってノエルノ先輩からの指摘が入ってしまった。ウソだろ。


 『組み込んだところはわかるんだけど、部品図のそれをどういう順番で組み込むかがこれだけだとわからない……かも?』ってノエルノ先輩が引きつった笑みを浮かべる。確かに言われてみれば、部品数が多くなったあおりを受けて、こう……組み立ての順番に制限があるというか、正しい順番で組み立てないとうまく作れないようになってしまっている。


 『図面の提出は部品図と組立図だけですよね?』って一応聞いてみる。『……魔法設計に必要なものの一般例として挙げているだけで、その二つだけでは完全じゃない場合は、その』ってノエルノ先輩は明後日の方向を見た。


 『そりゃお前、足りないものがあるなら用意しろよ。当然だろ?』ってキイラム先輩がそれを引き継ぐ。『立体分解組立図を一枚作るだけだし、なんとかなるんじゃね?』ってあまりにも無責任な発言も。


 あんなクソ面倒くさい図面、一枚書くのにどれだけ時間がかかると思っているのか。


 もちろん、ロザリィちゃんもミーシャちゃんも絶望の表情。立体図と言う難しい図面な上、全体組立図でもあるという……要は、単純に書く量が多い。こんなのを最終提出直前に追加で作れと言われても、はいそうですかとうなずけるはずもない。


 フィルラドはすでに、『学生部の担当者を闇討ちしたほうが確実だ』って覚悟を決めた男の顔をしていた。あいつも黙ってればイケメンなのにね。


 もちろん、クールな俺は慌てない。『頼めるか、親友?』ってギルに問いかけてみれば、『──任せろ、親友。こういう時のための俺だろ?』ってギルは頼もしすぎるポージングを。『今までまるで役に立ってなかったからな、俺は。こういうところで役に立てなきゃ、今夜のジャガイモが美味くねえよ!』って図面作成の構えに。


 そこからはすごかったよね。『オラァッ!』ってあいつが気合を入れるたびに、すげえ精密な動きで奴のペン……正確には、ペンを持つ腕の筋肉が動くんだもの。こっちが唖然としている間にはどんどんと図面ができていって、『俺バカだから書くことだけしかできないんだけどよぉ……図面注記とか寸法公差とか、頼むぜ親友』って細部のオーダーまで聞いてきたからね


 そんな感じなものだから、こっちがある程度大まかな指示をするだけで図面ができた。とてもあの短時間で描いたものとは思えないレベル。『頭使わない作業なら俺最強だし?』ってギルは自慢げ。


 『こ……こっちのも頼む!』、『さ、最後になって割とヤバめの修正が見つかっちゃったの!』ってクラスメイトのオーダーにも、ギルは『みんなには日頃世話になってるから、ジャガイモ一つで請け負っちゃうぜ!』って応えまくっていた。『……うちにほしい』、『……ジャガイモあれば図面全部やってくれるのか』って、上級生が割とガチな感じでギルをスカウトしようとしていたのを覚えている。


 なんだかんだで最終チェックはすべて終了。やはりどこの班も大なり小なり修正箇所があったらしく、終わってみれば結構慌ただしい感じではあった。でも、『みんな、よく頑張ったね! まだ終わりじゃないけど、ひとまずおつかれさま!』って提出の時にステラ先生が頭をぽんぽんしてくれてちょう嬉しかった。シキラ先生の時は無駄に脅されたことを考えると、以下にステラ先生が女神かわかるとおもう。


 ちなみに、最後の締めとなる発表は来週から再来週にかけて行う……んだけど、『どのクラスから始めるかは、その時の気分かな? 今日でみんな提出しているから、発表がいつになっても有利不利は関係ないよ!』とのこと。四クラス合同で発表するのはいいとして、この部屋に全員入ったらだいぶきついような?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、ちゃっぴぃがまた乳下をボリボリ掻いているのを発見。まさかまた汗疹ができたのか、あの野郎、掻くなって言ってるのに掻きやがったな……と思いつつずいっと持ち上げて見てみれば、特に汗疹は確認されず。


 単純に、ちょっと痒かったから掻いていただけっぽい。まったく、脅かしやがって。


 ちなみに、ロザリィちゃんから『一応、お風呂上がりに確認して、たまーにお薬塗ってるよ?』ってコメントを頂くことができた。『ただ、意外とこの時期もなりやすいし、痒いのってホントに我慢できないから……ね? 愛魔法を使えたなら、けっこー抑えられるんだけどねー……』ってほっぺにキスもされた。わぁい。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。今日も奴の筋肉はツヤツヤムキムキしていて汗疹どころか染みの一つすらない。女子以上の美肌と言っても過言じゃないだろう。こんな美肌を一晩中でも眺められる俺は、きっと世界で一番幸せな……わけないな。


 まぁいい。ちゃっぴぃが俺のベッドにもぐりこんでいるので今日はこの辺にしておこう。何気にこいつがいると、ベッドが冷たくなくてなかなか快適。まさか俺のために温めてくれているのだろうか。いや、ちゃっぴぃだしそれはないか。


 ギルの鼻には凍り付いた葉っぱを詰めておく。なんか窓の所にあったやつね。グッナイ。

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[一言] ギル、欲しいなぁ…… 本命:ギルの鼻から芽が出る 対抗:部屋が凍りつく 大穴:ギルの声に草笛が混ざる
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