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280日目 保健室の女神

280日目


 灰が真っ白に。残念ながら砂糖ではなかった。


 ギルを起こして食堂へ。今日はなんだか一段と寒い。雪こそ降っていなかったけれど、外の地面がバキバキに凍っている。朝日にそれがキラキラ輝いてちょっときれいかも……って一瞬思ったけど、よく考えたらクソ寒いだけだ。


 食堂もやっぱりめっちゃ冷え込んでいた。アリア姐さんはもう半分以上寝かけていたと思う。ウチのちゃっぴぃも寒かったのか、『きゅーっ!』って俺のローブに潜り込んできて、俺の生腹に手をぴとっとくっつけてきやがった。ちくしょう。


 でも嬉しいこともあったり。『ね、ね!』ってロザリィちゃんがおねだりしてきたため、一緒にマフラーを装備してみる。『あったかいねえ……♪』って嬉しそうに笑うロザリィちゃんが最高にプリティ。出来れば一生あのままマフラーをつけていたかった。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』って蒸かしたてのアツアツジャガイモを貪りまくっていた。『湿気と温度のバランスが良さそう』……と、ロベリアちゃんが冬眠しかかったブチちゃんをギルの頭の上に置いていたのを覚えている。冬ゆえに温めなきゃいけないんだけど、暖炉だと肌が乾燥して大変ヤバいことになってしまうらしい。ピクリとも動かなかったブチちゃんが、瞬く間に元気を取り戻していたっけ。


 さて、今日も今日とてヒマ……ではなく、男子一同で『保健室行こうぜ!』って盛り上がる。一日や二日でドクターが復帰できるとは思えないし、そうなると白衣のピアナ先生が保健室にいらっしゃるのは確定的に明らか。


 そんなわけで、みんなで軽くナイフで互いを傷つけあう。傷は浅めに、しかし見た目は痛そうに……ってのがポイント。自分でやると手加減しかねないから、あくまで外傷ということで済ませるこの機転。


 これなら保健室に「遊びに行った」ことにはならないし、先生の邪魔にもならないという最高すぎるアイディア。俺たちってばマジかしこい。


 『狂ってる』、『頭おかしい』って女子に蔑んだ目で見られたのだけがよくわからん。ぴんぴんしているのに保健室に行く方が非常識だよね?


 ともあれ保健室に突撃。同じことを考えたのか、上級生含め他の連中まで殺到していたのが大変遺憾。昨日はそんなことなかったのに。


 そして、保健室の中には天国が広がっていた。


 『きょ、今日はなんかケガ人多いね……!?』ってわたわたしている白衣ステラ先生がいた。うっひょおおおおお!


 もうね、いつものローブ姿のステラ先生も可愛いんだけどね、今日の白衣姿ステラ先生もまた一段と可愛かったよね。こう、純白の女神っていうの? 溢れる包容力と母性と慈愛で、その場にいてくれるだけで元気いっぱいになっちゃう感じ。あんなにも安心感をもたらしてくれる医者が未だかつて存在しただろうか?


 ちょっと大きめの白衣を頑張って着こなしているところもキュート。あと、『意外と似合うでしょ!』ってえへん! って胸を張るところも最高にマーヴェラス。ぎゅってしたくなる衝動を堪えられた俺ってマジすごい。


 ともかく、『実はちょっとヘマして腕を切ってしまいまして』ってケガしたところを見せてみる。『このくらいなら、簡単な魔法で十分かな?』ってステラ先生は杖を一振り。たったそれだけで切り傷がみるみる癒えていく。軽傷とはいえ、専門でもないのにこうも簡単に回復魔法を使えるステラ先生マジすごい。


 せっかくなので、『できればこう、元気の出るおまじないみたいなものもほしいのですが』ってリクエスト。『げ、げんきになぁれっ!』って頭をぽんぽんしてもらえた。うっひょう。


 さらにさらに、『今のでドキドキして傷が開いたので、包帯を巻いてもらえると……』ってリクエスト。『……──くん、先生をからかってない?』って頬を膨らませてジト目で見てくるステラ先生が最高に可愛い。ステラ先生が俺だけを見てくれているあの感じ、言葉でどうやって表現するべきか。


 しかも先生、なんだかんだ言いながらも包帯巻いてくれたからね。当然、包帯を巻くのには俺の腕をとる必要があるわけで、ステラ先生に触られているという事実そのものがもう堪らなく幸せすぎて、あの時間が一生続けばいいのにって思っちゃったよ。


 『他の先生も治療自体はできるんだけどねー……。効果と時間と、あと若手的な意味で先生がやることになっちゃって……』ってステラ先生は言っていた。そこそこの治療能力があり、かつ保健室みたいに大量に素早く捌かなきゃいけない環境ともなると、対応できる人間はおのずと限られてくるらしい。昨日はピアナ先生だったから、じゃあ次はステラ先生で……ってことになったそうな。


 よくよく考えてみたら、ケガの治療はドクター・チートフルしかできないってわけじゃない。ステラ先生クラスともなれば、みんな大なり小なり出来て当然のことなのだろう。何かあった時のためにも、俺も魔法的な治療技術をいくらか覚えておくべきなのかもしれない。


 ホントは保健室で白衣ステラ先生と二人きりでいつまでもおしゃべりを楽しんでいたかったんだけど、『てめえ、いつまで先生と話してやがる!』、『こっちは血ィダラダラなんですけどぉー!?』って別の男子たちに騒がれたためお暇することに。


 俺的にはそんなの舐めておけば治るって怒鳴り返したかったんだけど、『次の人たちの治療もしないといけないから……ね?』ってステラ先生に頭をぽんぽんされちゃったんだよね。そんなことされたらもう、素直に頷くしかないじゃん?


 地味に残念だったのは、『……一応言っておくけど、今日はもう暴れたりしないで大人しくしててよ? 日に二回もケガしている──くん見るの、先生イヤだからね?』って念を押されてしまったことだろう。若干目に涙を溜めながらそんなことを言うんだもの、ステラ先生がどれだけ俺たちのことを考えてくれているのか、改めてわかっちゃったよね。


 その後は普通にクラスルームに戻る。『今日はステラ先生が担当だったぞ』と吹聴してみれば、『マジかよ行かなきゃ』って何人かの女子が鼻息を荒くしてクラスルームを発っていった。彼女らはもう、引き返せないところまで行きついてしまったのかもしれない。

 

 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。雑談中、『白衣姿のステラ先生めっちゃよかった!』って盛り上がった。『やっぱ白衣も可愛かったよな』、『こう言っちゃなんだけど、治してもらうならドクターよりステラ先生の方がいいよな』、『「お大事に!」って微笑まれたときの破壊力がヤバかった』……などなど、いかに白衣ステラ先生が良かったのか、かなり語り合っていたと思う。


 『そんなに白衣ってイイのか……?』ってアルテアちゃんが首をかしげていたのを覚えている。『要はアレ仕事着だろ? かわいい要素なんて無いと思うんだけど……』って悩んでいたっけ。パレッタちゃんが『可愛い人は何着ても可愛いんだよ』って真理を説いてくれたから、男子があえて説明することもなかったけれども。


 そうそう、寝る間際にロザリィちゃんが『ステラ先生なら浮気も許すけど、それでも彼女をないがしろいしていいわけじゃないからね?』って情熱的なキスをしてくれた。『これは私をないがしろにした罰です。だから──くんは私に好きなようにされても文句は言えないのです』ってずっとぎゅーっ! って抱きしめてすーはーすーはーくんかくんかもしてた。全くロザリィちゃんは可愛すぎるぜ。


 ギルは今日もぐっすりと大きなイビキをかいている。こいつはこいつで保健室に行こうとしたんだけど、『よく考えたら俺全然ケガしてないじゃん!』って辞退したんだよね。ギルの場合、筋肉が強すぎて切り傷がつけられなかったんだよ。あいつもなかなか難儀な筋肉していると思う。


 ホントはもっと白衣ステラ先生の魅力について語りたいけれどもこの辺にしておく。なんか微妙に眠気が強い。保健室の奥の怨念に当てられたからだろうか。俺がステラ先生に治療されている間、なんかずっと殺気(?)の籠った視線を受け続けていたんだよね。マデラさんのひと睨みの方がよっぽど怖いけれども。


 まぁいい。ギルの鼻にはガーゼの切れ端でも詰めておこう。みすやお。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人の仕事の邪魔するなよ、まったく 本命:ガーゼが長くなる 対抗:ガーゼが黒くなる 大穴:ギルの髪がガーゼで巻き巻き
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