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274日目 オトナ☆ギル

274日目


 誰だあいつ







 朝起きて、いつも通りギルの様子を確認しようとしてビビる。なんかギルのベッドに寝てるのがギルじゃない。普通に大人で、そして妙にワイルドと言うかダンディと言うか……大人の余裕みたいなオーラがすごい。


 そいつは俺が杖を構えた瞬間に目覚めやがった。寝ているときにはなかった、妙に馴染み親しみのある顔立ち。俺は間違いなくこいつを知っている。何度も何度もこの時間に見ている。


 『……よう、親友。……はは、さすがに若いな』って言われて……ああ、こいつギルだって気づいたよね。


 改めて確認しなくとも、そいつの肉体は完璧すぎるほどに仕上がっていた。鋼の肉体を超えてミスリルの肉体になっている。今のギルの筋肉がかすむレベルで、シルエットとして筋肉ダルマじゃないのに、濃密で堅牢すぎる筋肉だって本能で理解できるレベル。


 あいつ、大人になってもパンツの柄は変わってなかった。それと瞳の色と髪の色……それらが、その歴戦の兵の魔力をまき散らすその人がギルだという証拠に他ならなかった。


 で、だ。


 一番重要なのは、【さすがに若いな】ってギルが俺を見て言ったところ。


 まさかと思って聞いてみたら、『想像通り、俺は今から……十五年くらい後の未来の俺だよ』ってギルはニッて笑ったんだよね。


 ビビった。マジでビビった。大人になったギルが、まさかこんな立派になっているだなんて。人懐っこくて親しみやすい空気はそのままに、筋肉は明らかに次元を超えて、そして冷静さや落ち着きを身に着けているだなんて。親戚のエリートって言われたほうがまだしっくりくるくらい。


 『懐かしいなあ……! そう、俺はいつもこのベッドで、毎朝こうして親友に起こされていた……はは、ちょっと泣きそうだぜ、俺』ってギルはしみじみ。自分の机の引き出しを開けては『あの頃の俺、改めて振り返ると結構バカだったよな』……なーんて言ってる。


 『ここで生活してた時は全然気づかなかったが、やっぱり親友は学生時代からしっかりしてたんだな』って俺の魔法材料の棚や本棚を見て満足そうにうなずいたりと……。


 言っちゃ悪いけど、褒められているのにそれがギルだってだけで鳥肌がすごかった。ギルならギルらしく、アホみたいにポージングしてろよって思ったよね。


 着替えの時もすごかったよね。寝るとき半裸なのはまぁ個人の趣向だから別にいいとして、あいつ俺に言われるまでもなく普通に着替えようとしてたんだよ。『……さすがにかなりキツいけどしょうがない。ローブを羽織れば失礼にはならないだろ』って……ピチピチタンクトップの上に、身だしなみとしてローブ羽織ったんだぜ? あのギルが!


 そして細かいおしゃれも忘れない。シンプルながら造りのしっかりしたイヤリング、魔法的効果もあるのであろう銀鎖のネックレス……と、一見チャラチャラしているような格好に見えて、その実すっきりと上品な感じでまとめている。いや、上品と言うか、気品と言ったほうがいいかもしれない。ガチな式典で着けるアクセサリー……否、身だしなみと言ってもいい。


 驚きだったのは、左手に意味深な指輪を着けていたことと、そして俺が贈ったベルト(だいぶ草臥れてたけど手入れはちゃんとしてあった)を身に着けていたところ。色々聞きたかったけど、衝撃が多すぎて口をパクパクすることしかできなかったよね。


 『どうした、飯に行こうぜ親友?』ってギルはウィンク。まさか俺がギルにそんなことを言われるだなんて。


 ……しかも、なんかギルの左目の所にうっすらと古傷(?)が。もうほんとマジでどうなってんだよ。


 当然、食堂では大変な騒ぎに。『ああ……! 本当に、本当に懐かしいなオイ……!』ってギルは食堂を見渡して、感慨深そうにしている。『はは……っ! みんな若いなあ……! マジでガキじゃないかよ……みんなまだ、イキイキしてんじゃないかよ……!』って軽く涙ぐんだりも。


 『ね、ねえ、まさかあのカッコいい人って……!?』、『ウソだろ……信じたくないけど、あの顔って間違いなく……!?』ってみんなが驚きを隠そうとしない。


 『……今の俺は学生だし、別にここで飯食ってもいいよな? ……大人料金払わなきゃダメか?』ってギルがちょっとしょんぼりしながら告げる。『ギルだけどギルじゃない!』、『あいつがこんな立派なまともなやつなわけねーだろ!』ってみんなが騒ぐ。『安心しろ、俺が一番驚いてるから』ってギルは爽やか笑顔。


 『……お、驚いた。まさかあいつが、あんなに化けるなんて』っておばちゃんですら腰を抜かしている。『悔しいことにけっこうタイプだ……本当に、いったい何があったんだい?』ってジャガイモの大皿を嬉しそうに受け取るギルの背中を見て呟いていた。


 そしてギルは、『……うめえうめえ!』って美味そうにジャガイモを貪る。ああ、こんなナリをしているけど、やっぱりこいつはギルなんだ……って、みんながその顔を見て確信したよね。


 『これだよ、これ。やっぱこれが一番安心するというか、落ち着くんだ。……そりゃあ、何年も毎日食ってたもんなァ……』ってギルはジャガイモの一つ一つゆっくり味わう。『……ここと同じジャガイモを食べたくて、もう何年も探していて……でも、結局同じものは見つからない。まさか、こんな形で食えるなんてな』なんて、若干不穏なことも。マジで未来に何があったんだよ。


 当然、この未来のギルに一番の反応を示したのはミーシャちゃんだった。『え……ギル、なの……!?』っておめめを真ん丸にして食い入るようにギルを見つめる。まずギルが半裸でないことに驚き、そしてギルの着けているアクセサリーを見て『……本当にギルなの!』ってギル登りに。


 『ハニーも若いな……ホント、いろいろこみあげてくるぜ……!』ってギルも満更でもなさそう。『すごいの! 筋肉の質が明らかに別次元なの!』ってミーシャちゃんはローブの中に手を突っ込んでギルの筋肉をさわさわ。『……嬉しいけど、今のハニーは年頃の女の子だろ? ちょっとはしたないぞ』ってギルは柔らかく笑い、背中に乗っているミーシャちゃんをひょいっと持ち上げて自らの膝の上に。


 そして、すごく自然な動作でミーシャちゃんのおでこにキス。『きゃーっ!』って女子たちの黄色い悲鳴が響き、ミーシャちゃんは『……っ!?』ってめちゃくちゃ真っ赤。『……おっと、今のハニーにするには早すぎたか?』ってギルはちょっぴりバツの悪そうに笑った。


 『おいあいつホントにギルなのか?』ってゼクト。『筋肉は間違いないが、でもあれは……』っていまだに信じられないって顔をしているラフォイドル。『え……何か普通にときめきそうなんだけど……』ってほんのり頬を赤らめるシャンテちゃん。前々から少しその気があると思ってたけど、シャンテちゃんの好みは頼れる大人っぽい渋いおじさまらしい。


 朝飯を済ませた後は普通にクラスルームに戻る。ギルはそれが当たり前かのようにひょいっと持ち上げて肩に乗せ、ミーシャちゃんをエスコート。なんとなく甘えづらかったのだろう、俺の後ろでもじもじしていたちゃっぴぃにも笑いかけ、『こっちの肩に乗るか?』って持ち上げた。


 『クラスルームも昔のまんまだな……いや、今がその昔か』ってすんげえ懐かしそう。無駄にロフトに行ってみたり、ロッキングチェアでゆらゆらしたり……他には蟲籠や水槽を見たりもしていたっけ。


 『……怒らないから正直に答えてほしいんだが、やっぱ親友、お前俺のリチャードとか勝手に接着剤にしてたろ?』って聞かれたとき、マジにヤバいって思ったよね。アホなギルなら簡単に言いくるめられたけど、あのギルにはとてもそんな事通用しそうになかったんだもの。


 ちょっと意外なことに、ギルはそのままクラスルームに居座り続けた。こいつなら筋トレでも始めるかと思ったのに。『出来ることならこの学校をもう一度見て回りたいし、先生方にもあいさつしたいが……あんまり目立つのもよくないしな』って、ギルにしては真っ当な答えが。


 やはり気になったのか、クーラスが『お前、未来のギルなんだろ? ……未来っていうか、俺たちの将来ってどうなってる?』ってギルに質問。『あっ、それ俺も聞きたい!』ってポポルも賛成の声を上げ、『……事と次第によっては、これからの身の振り方を変える可能性もあるしな』ってアルテアちゃんも真剣な表情。


 『頼むぞ未来の俺ェ……!』ってフィルラドが必死に祈っていた。頑張るべきは未来ではなくこの瞬間のあいつ自身ではなかろうか。


 ギルの奴、『ん……教えてもいいことと、悪いことがあるが……』ってちょっと思案。『俺が教えたら、つまらないことのほうが多いだろうな』って挑発するように笑う。ギルの癖に焦らすとか、マジでこいつホントにギルなのかってみんなが思ったよね。


 グッドビールの顎を長年のテクで掻いて気持ちよくさせていたギルは、『それよりも、課題は大丈夫か?』って思いついたようにつぶやく。言われてみれば、俺たちみんな魔導工学の課題が終わっていない。


 『まずはやることやってから。魔系は取り返しのつかないことが多すぎるからな』ってギルは宣言。普段のあいつならともかく、こうもまともで頼れる雰囲気の大人に言われたとあっては、俺たちもそれに従わざるを得ない。


 そして、ここでも非常に驚くべき事態が。


 俺たちが必死にノルマをこなそうとしているのを横目で見たギルが、『……そこ、計算間違ってるぞ』って普通にアドヴァイスしだしたのね。マジかよって思ったよ。


 最初は偶然だと思ったんだけど、ミーシャちゃんの課題をはじめとして、アルテアちゃん、パレッタちゃん、ジオルド、フィルラド、ポポル……と、ギルはチラッと見ただけで課題の穴を見つけてくる。


 それどころか、クーラスがやってた創成魔法設計演習の設計計算を見るなり、『この構造なら魔法的負荷は表面に強く作用するから、部材を中抜きしても問題ない。軽量化とコストダウンが狙えるぞ』……なんて、的確過ぎる指導をしたりも。『触媒反応学の考えで、魔応力分布図を作るとわかりやすいかな?』ってその考えの根拠を示し、答えを示すのではなくやり方を教えるという教育者みたいなムーブメントも。


 『お前、本当にギルなのか?』って本日何度目かわからないフレーズが。『そりゃ、俺だってこの学校を卒業してるんだから当然だろ』ってギルはこともなげに答えた。『あとは……ここで習うことは冗談抜きに仕事で使うからな。嫌でも覚えるし、学生時代にもっとまじめにやっておけばよかったって、俺たち全員ボヤいているぞ』って言う驚きの情報も。


 あのギルが頭を使って仕事しているってのも驚きだし、この学校で学んだことが仕事でも普通に使うってことも驚き。『専攻とか分野とか関係ないからな。常に毎日、テスト直前よりもさらに知識が身についた状態を求められる。おこづかい欲しさに使わなくなった教科書、後輩に売ったりするなよ?』って、ギルは真面目な表情で俺たちに教えてくれた。


 めちゃくちゃ気になったので、『お前何の仕事してるんだ? 俺たちみんな、どんな風に生きている?』って聞いてみる。『……まぁ、ノルマもそこそこ達成してるし、息抜きも必要か』ってギルは悪戯をするみたいに口の端を釣り上げた。


 『まず、親友は──』って言葉の次の瞬間。


 『ぎ、ギルくんが大人になったってホントっ!?』ってステラ先生がクラスルームにやってきた。


 そして、『お世話になっておりますッッッ!!』ってギルが直立不動の絶対魔導大敬礼。耳が消し飛ぶかと思った。


 オジギサセソウを掴んだ時よりも綺麗な完璧すぎる礼式動作。動きの機敏さもさることながら、今までの空気の一切をぶった切ったデカい声の挨拶。『ひゃっ!?』ってステラ先生はびっくりしてしりもちをつくレベル。そんなステラ先生も最高にステキだった。


 ギルは綺麗な姿勢を保ったまま、頭を上げない。『おま……どうしたんだよ……?』ってポポルが心配そうに肩を叩いてもピクリとも動かない。『か、顔上げて……?』ってステラ先生がおどおどしながら声をかけたところで、ようやく顔を上げた。


 『お久しぶりです。その節は大変お世話になりました。今の先生には何のことかわからないでしょうが、改めて今ここで、お礼を言わせてください』ってギルは真面目な表情でステラ先生に告げる。『え……? ど、どうしたの? ギルくん、だよね……?』ってステラ先生は困惑顔でこっちに助けを求めてきた。


 『事情を説明してくれよ、ギル』って告げる俺。『悪いな、こればっかりはダメなんだ……ふう、これでようやく筋を通せたよ』ってホッとしたように笑うギル。


 なんか知らんけど、この大人のギルはステラ先生に返そうと思っても返しきれない恩があるらしい。『あっちの先生は俺がどんなに礼を言おうとしても、「そんなに気にしなくていいよー!」ってまるで取り合ってくれないんだよ……』ってギルは言っていた。


 ……マジに何やったんだろ? 視界に姿が映った瞬間、あんなにガチな礼をするってそうそうなくない?


 その後はギルとステラ先生の雑談タイムに。『学会や協会の連中にバレると面倒くさいんで、今日のことは夢か幻みたいなものだと思ってください』ってギルは最初に告げる。『うげ……その名前……というか、ギルくんもそういうお話ができるようになったんだね……』ってステラ先生のおでこに露骨なしわが。いったいなんのこっちゃ?


 どうも、ギルはあまり未来のことは話したくないっぽい感じだった。ただひたすらに学生時代が懐かしいだとか、いろいろ迷惑かけてすみませんでしたとか、やっぱり若くてきれいですね……だなんて、普通に大人の会話が。


 『ちょ……ギルくん、そんなに恥ずかしいこと言わないでぇ……!』ってステラ先生は真っ赤。学生の俺たちから言われたときでもそうなのに、とても学生に見えない大人からそんなことを言われては、経験のないステラ先生が敵うはずもない。


 ちょっと落ち着いてから、ステラ先生は『ところで……その、どうしてこの時代に? どうやってやったの?』ってギルに質問。ギルの奴、『まぁ、いつものアレです。昨日の親友が昨日の俺に、なんか変なの使ったんでしょうね』って回答。


 『そっかぁ……』で納得しちゃうステラ先生も可愛いけど、大人ギルが普通に俺が毎晩ギルの鼻に何かを詰めていることを知っていることが怖い。今のギルがそれに気づくの、いったいいつごろになるんだ?


 あと、『……その、未来って先生どうしてる?』ってステラ先生がもじもじしながらギルに質問。『ま、まさか未来でも独身だったり……!?』って自分で言ってて慌て出し、『おねがい、覚悟はできているから……! 正直に教えて……!』ってギルにすがりだした。


 ギルの奴、すごく優しげな……子供を見守るパパのような表情で、『……大丈夫。先生は幸せになってますよ』って先生の肩を叩いた。『誰とどう幸せになっているかは、ここでは伏せさせてくださいね? でも、先生が先生らしく、今の先生のままでいれば……ええ、間違いないです』ってアドバイスも。


 ……なーんか違和感と言うか、引っ掛かる感じがあったのはなぜだ? 普通に「親友の嫁として宿屋と教師をやってます」って言えばいいのに。これが大人の駆け引き、あるいは気遣いなのか?


 その後は普通に俺たちの未来の話に。ギルの左手の指輪を目ざとく見つけたパレッタちゃんが、『それは?』ってヴィヴィディナを装備しながら質問。『……まぁ、想像通りだぜ?』ってギルはめっちゃ幸せそうに笑った。


 ミーシャちゃんがマジで真っ赤だった。ドキドキしすぎたのか、もう何も言えそうにない感じ。『だって、あの指輪……間違いなく……なの』って小さくつぶやいていたけど、なんかいわくがあるやつなのかな?


 あとギルは、『そういや、二年生の年末に大きめのケンカしてたって話だよな……』ってアルテアちゃんを手招き。耳元で何かをこっそりこしょこしょ。


 『……ッ!?』ってアルテアちゃんがみるみる真っ赤に。『そういうわけだから。許してやれとは言わないけど、勘違いはしないでやってくれよ』ってギルはウィンク。一体何を吹き込んだんだろう。


 一方でフィルラドには、『大人の男として、アドバイス(・・・・・)な』ってゲンコツ(ギルなのにかなり手加減されてた)が。『俺と違って、お前はやればできるやつなんだからさ。あんまり周りを心配させるなよ』って諭していたっけ。


 そんな感じで、人生のアドバイス(?)をギルはみんなにしまくっていた。どうやら未来でも俺たちは交流があるようで、男子にも女子にもなんとなく暗示めいたことを言っていたのを覚えている。


 クーラスとジオルドは、『男として本気のお願いだ』、『俺たちは……彼女、できるのか?』って真剣な表情でギルに質問。ギルの奴、『それだけは言えない。言わないほうが絶対面白くなるって、ある女の子たちに言われてるんだよね』って悪戯っぽく笑った。『絶対言うな! って、そう強く言ってるやつも結構いたぜ?』とも。


 『ただ、悪い結果ではない。……悪くは無いんだよな?』って言っていたのが気にかかる。『ちっくしょおおお!』、『気になるだけじゃねえか!』ってジオルドとクーラスは騒いでいた。


 ああ、一つだけ。基本的にギルはみんなからの質問に答えるっていうスタンスだったんだけど、ロザリィちゃんにだけは『……本来、俺が言っていいことじゃないんだろうけどさ。気持ちはわかるけど、手加減というか……その、様子を見ながら少しずつ試すってのを忘れないように頼むぜ』って、自分からかなり真剣な表情で伝えていた。


 『え……わ、私なにやったの……!?』ってロザリィちゃんはおどおど。『悪くはない。やっぱりこれも、悪くは無いんだけど……見ていられなかったんだよ……』ってギルは疲れたように笑い、ロザリィちゃんの肩を優しく叩いた。


 『……愛って便利な言葉だよな、ホント。親友とお似合いというか、親友じゃなきゃヤバかった』って小さく言っていたけど……もしかして俺も関わることなのか?


 『やらかしてきたことと、やらかすであろうことの心当たりが多すぎてどれかわかんないわね……』、『たぶん卒業後じゃない? だって止める人いないでしょ』……などなど、女子たちはみんな悟りきったような顔をしていたのを覚えている。


 ちなみに俺については、『親友は親友だよ。これからも、この後もずっと。そのうえで……こんな俺の親友でいてくれてありがとう。今の俺があるのは、親友のおかげだ』としか言ってくれなかった。ギルのくせにクサいセリフ言いやがって。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。風呂の時、ギルは当たり前のようにミーシャちゃんを片腕に抱いて『行こうか、ハニー?』って声をかける等、それなりに騒動が。


 『おっと、まだ学生だったな』ってあいつはこともなげに言っていたけど、やられたほうのミーシャちゃんは『ふにゅうううう……!』ってこの段階でのぼせ上っていた。大人ギルも十分いちゃついてんじゃねーかって思った瞬間だ。


 雑談の時はステラ先生を交えてカードゲームに興じる。こちらについては腕前は変わっていないようで、普通にステラ先生のボロ勝ち。


 『いま財布も身分証も無いし、どのみちおこづかい厳しかったんだよな……おい、親友銀行から前借できないか?』って言われたんだけど、この場合前借でいいのだろうか? 過去の自分が預けたものを過去に行った未来の自分が借りてるから……うん?


 そんな大人なギルは、いつものベッドでデカいイビキをかいている。大人になってもやっぱりこいつのイビキは治らなかったらしい。そして腹立つことに、半裸で毛布も蹴飛ばして寝るといういつもと同じ姿なのに、妙な色気と言うか、貫禄がある。マジなんなのこいつ。


 まぁいいや。せっかくだしいつも通り……このギルにとっては十五年ぶりに、懐かしの感覚を味合わせてやろう。何を突っ込んでやろうか、今からドキドキが止まらない。


 せっかくなので今日は奮発して

 させないぞ、と。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神回すぎる
[一言] 最後は一体……? 本命 大人ギルによる鼻への異物混入阻止→ギルの張った筋肉的魔法陣(悔しいけどステラ先生のよりも剛性に優れていた)→特に影響なく筋肉の友陣砂が得られる 対抗 大人ギルによる…
[一言] ……かなり化けたな、ギル というか成長してから何やってんだ?
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