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268日目 モコモコ白髭

268日目


 松ぼっくりがギルギルしい。とりあえずトイレに流しておいた。


 ギルを起こして食堂へ。やはり冬休みと言うこともあってか、起きている人間はあまりに少ない。寒い故にベッドから出たくない気持ちはわかるものの、学生がこんなんでいいのだろうかと思わずにはいられない。


 朝飯はグラタンをチョイス。朝から結構ガッツリめだけど、寒かったからついつい食べたくなっちゃったんだよね。チーズの香りとマカロニの食感のハーモニーが素晴らしく、なかなか優雅なひと時が過ごせたと言えよう。


 俺のお膝の上のちゃっぴぃも、『きゅーっ♪』って美味そうに食っていた。チーズに良い感じの焦げ目がついた最高に美味しいところまであいつは食っていきやがった。『あーん♪』の構えを取られると、なんかもう反射的に奴に『あーん♪』をしてしまう自分に悲しみを隠せない。もうまともな頃には戻れないのだろうか。


 でも、ロザリィちゃんが『パパ、あーん♪』って自らのグラタンを『あーん♪』してくれたから俺は幸せである。『ちゃあんとふうふう、しましょうねー?』って甘やかしてくれるところとかもう本当に最高。俺もう一生ロザリィちゃんの虜だわ。


 ギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。思えばあいつ、ジャガイモ全般が好きなことには間違いなんだけど、食っているのはいつも蒸かし芋だ。準備するのが楽とはいえ、たまには焼いたやつとか揚げたやつを食いたくなったりしないのだろうか。


 朝飯の後はクラスルームに戻る。明日がクリスマスイブ故、納品するお菓子のラッピングの準備を行った。こういうさりげないところをきちんと気にかけるのが、一流のやり方だってマデラさんも言ってたしね。


 あとは普通にお菓子とかの下準備をしていたように思う。食べ物故にそれにも限りがあるのがちょっと困るところ。物理的な限界ギリギリまで頑張らないとお客様のオーダーに応えられないってんだから俺もまだまだだ。


 そんな感じでぼちぼち過ごしていたところ、『本格的にクリスマスっぽくなってきたね……!』ってステラ先生がやってきた。うっひょう。


 どうやらステラ先生、ピアナ先生がクリスマスデート(?)で出払っているゆえに、構ってもらえる相手がいなかったらしい。『いつもは、その……この時間、ピアナ先生とおしゃべりしていることが多いから……』とのこと。


 『あとね、先生の部屋にも暖炉はないし、ちょっと寒くって……』とも言っていた。クラスルームってわけじゃないけど、やっぱり教員用のそういう部屋には暖炉があるらしい。ただ、一人でそこを使う……正確にいえば、一人でそこで寛ぐことも先生にはできないっぽい。


 そりゃあ、あんなクレイジーの元締めともいえるおっさんたちに囲まれて、女の子である先生がリラックスできるはずもない。ついでに言えば、今はピアナ先生もグレイベル先生もいないわけだし、人見知りな先生にそれだけの度胸があるとも思えない。


 『ま、薪の節約だからね!? べ、別に寂しいとかそういう理由じゃないんだからねっ!?』ってステラ先生は威厳を保とうと必死に言い訳していたけれども、『……いいんですよ、無理しないで』、『寂しかったらいつでも遊びに来て……ううん、もうこっちに住んでもいいと思うの』ってアルテアちゃん他慈愛の表情をした女子たちにぎゅ! って抱きしめられていた。


 せっかくなので俺も抱きしめようとしたところ、パレッタちゃんとミーシャちゃんに強かにケツを蹴っ飛ばされた。『うちのステラ先生になにするつもりなの?』、『パパディナはパパディナとしての領分を犯してはならぬとなぜわからぬ?』って二人とも目が吊り上がってる。怖い。


 その後はステラ先生&女子たちでクリスマスの飾り付けの総仕上げ。『えへへ……こうやってみんなでクリスマスの準備ができるって、楽しいね……!』ってすっごくうれしそう。というか、若干目に涙も。


 毎度のことながら、俺ステラ先生のことが不憫でならない。学生と一緒にクリスマスの準備をするという、当たり前のことのはずなのに涙が出るほどうれしいとか、これはもう俺が一生かけてステラ先生を幸せにするしかないのでは?


 そんな感じで横目でステラ先生の様子を伺いつつクリスマスの仕込みをしていたところ、『きゅ! きゅ!』って唐突にちゃっぴぃにローブを引っ張られた。なんだコイツ構ってほしいのか……と思って振り向いたところ、まさかのちゃっぴぃにモコモコ白髭。『きゅーっ♪』ってにこーって笑っている顔を白髭の下に幻視する。


 んで、何を思ったかあいつはそのモコモコ白髭を俺のほっぺにこすりつけてきた。ほおずりって言えば聞こえはいいけど、何が悲しくてヒゲなんかこすり付けられなきゃならんのか。まぁ、モコモコで触感だけはよかったけどさぁ……。


 確認するまでもなく、このモコモコ白髭は付け髭(?)であった。どうにも綿とかを上手く加工し、サンタさんのそれっぽく見えるようにしたものらしい。『パーティで着けたら盛り上がるかなって試しに作ったら、なんか妙に気にいったみたいで……』とはクーラス。一応男子用として作っていたものを、いたく気に入ったちゃっぴぃが辛抱堪らず装着してしまったらしい。


 とりあえずちゃっぴぃからひっぺがして俺も着けてみる。『致命的に似合わない』、『それを着けるにしては顔立ちが幼過ぎる』とのコメントを頂いた。同様にモコモコ白髭を着用したジオルドは、『悪い意味で似合いすぎてる』、『サンタコスプレをしたパパ』、『髭のせいで一気に老けたって言うか、お前元々ちょっと老け顔だよな』とのコメントを貰ってしょんぼりしていたっけ。


 『次俺やらせて!』って目をキラキラさせた白髭ポポルは、誰からも『ほほえましい』とのコメントを貰っていた。俺もそう思う。


 さて、ここらで女子にも餌食になってもらおうか……って雰囲気になったところで、ステラ先生がそわそわもじもじしているのに気づく。いやいやまさか、大人であるステラ先生がこんなくだらないことに興味を持つわけなんて……って誰もが思う中、『やってみたいなら、やってみたいって言えばいいんだよ?』ってロザリィちゃんがにこって笑ってステラ先生の背中を叩いた。


 『せ、先生もちょっとやってみたいなー……?』ってぎこちなく笑うステラ先生を見た時、マジかよって思ったよね。


 あえて触れるまでも無いけど、『ど、どう?』って(おそらく)微笑むステラ先生も最高に可愛かった。モコモコ白髭とステラ先生と言う本来有り得ない組み合わせながらも、先生の素敵な顔立ちとモコモコ白髭が醸し出すある種の温かさとも安心感が絶妙にマッチしている。そのギャップの妙もさることながら、あのステラ先生がこういうおふざけに自分から参加し、そして嬉しそうのこの空気を楽しんでいるという事実そのものにルマルマ一同感動。なんか幼い娘の成長を意外なところで垣間見た気分。


 『よかったね、せんせい!』ってステラ先生に抱き着くロザリィちゃんも最高に可愛かったし、『うんっ!』ってモコモコ白髭のまま元気よくお返事するステラ先生も究極に可愛かったです。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんだかんだで今日も一日クリスマスの準備。いろんなことをやったせいで細かいことをいちいち覚えていないけど、まぁ大したことはしてないので別にいい。


 ギルは今日も腹筋モロ出しでスヤスヤと大きなイビキをかいている。こいつ、日中姿を見ないと思ったらバルトの連中に頼まれて薪を割るのを手伝っていたらしい。『なんか、うっかり暖炉を使いすぎて足りなくなったって話でさ……。手間賃としてそれなりの金とジャガイモ大袋三つも貰っちゃったぜ……! 筋トレしながら稼げるとか、ぼろ儲け過ぎるだろ……!』ってあいつはホクホク顔。


 『これ、いつもの親友銀行によろしくな!』って普通に渡されてきたそれ、結構な額であった。どうやらバルトの連中も、この忙しい時期に助っ人を頼んだという引け目もあったのか報酬に色を付けたっぽい。ギルが無駄遣いしないようにしっかり管理しておかないと。


 ふう。内緒のクリスマス準備もあとちょっと。何気に万が一の可能性がある故、こればっかりは日記に詳細を書けないけれど……今年も最高のクリスマスにするためには頑張らないと。


 ギルの鼻にはガラスの欠片を詰めておく。誰かがクリスマスの飾りの一つとして用意した物っぽい。おやすみなさい。 



※燃えるごみを捨てておく。魔法廃棄物は来週が今年最後なので気を付けておく。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 痛く気に入ったちゃっぴぃ 痛く→甚く ではないでしょうか [一言] 誤字がある方が日記ぽい気もしますし、そのままでも良いと思いますが、訳注として正しい表記を付け加えるのはいかがでしょう…
[良い点] 完璧にちゃっぴいのパパになってる書き手が微笑ましい ロザリィちゃん?ママディナでしよ? [気になる点] 鼻にガラス片とか普通に考えれば流血沙汰だけどギルだしなぁ…… それ以上にヤバイも…
[一言] さて、次にアレが出てくるのはいつになるか…… 本命:ガラスの粉がキラキラ舞う 対抗:巨大な一枚板のガラスができる 大穴:ギルの目がガラス
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