表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/367

267日目 クリスマス強制労働

267日目


 ギルの体がひんやりしてる。ぽんぽん大丈夫かな?


 ギルを起こして食堂へ。朝から元気にギル登りに興じようとしたミーシャちゃんが、『なんかすっごく冷たいの!?』って悲鳴。『まるで氷山みたいなの。これじゃ登るに登れないの』とのコメントも。休日の朝一に恋人に贈るコメントとはとても思えないのはなぜだろう。


 一方でギルは『そんな、照れるぜハニー!』ってなぜか笑顔。なんであいつの中で「氷山みたい」が誉め言葉となっているのか。脳筋の考えることはよくわかんねえや。


 朝食は期間限定クリスマスパフェなるものを食す。なんとも恐ろしいことに、今回は(女子だけ限定の)告知がなされていないマジもんのサプライズ。『冬休み初日からきちんと早起きできる奴だけの特別だよ!』っておばちゃんが笑顔でウィンク。


 せっかくなので俺もウィンクし返したら、『あんたのは間に合ってるから』って言われた。どういうこっちゃ?


 肝心のクリスマスパフェだけど、赤と白と緑を取り入れてクリスマスっぽい見た目にしましたって感じ。イチゴ、イチゴソース、クリーム、あとなんか飾りで緑の葉っぱがあるってくらいでパフェとしては割と普通。


 あ、でもなんかサンタさんとクリスマスツリーっぽいみためのマジパンもついていたっけ。デフォルメされたあったかい雰囲気がなかなか情緒的だったと言えよう。『きゅーっ♪』ってちゃっぴぃが頭から丸かじりしちゃったけどな!


 ギルは普通に『うめえうめえ!』ってジャガイモ食ってた。自身の冷え切った体とジャガイモの熱気が合わさってなんか白い靄が発生していたのを覚えている。それなりに神秘的な光景……なわけないか。


 朝食後はクラスルームに戻り、明後日のクリスマスイブ、明々後日のクリスマスに備えて準備を行う。すでにクラスルームは十分にクリスマス仕様になっているとはいえ、俺たちの本気はまだまだこんなもんじゃない。


 『デコれる時にデコっておかないと。こういうの、若い時しかできないし』ってパレッタちゃんも悟りきった表情でヴィヴィディナをデコっていた。クリスマス仕様の化物が爆誕した瞬間である。


 あと、アリア姐さんもおめかし(?)としてまたまたいろんなアクセサリーとかを女子につけられていたっけ。『お色直しはしなきゃだし……』、『年に一回の機会なんだから、存分に楽しまないとね!』とのこと。アリア姐さんも「次はこっちをお願いね!」……とでも言わんばかりに女子たちから贈られたクリスマス飾りを検分していたっけ。


 いつも不思議に思うんだけど、自分が着飾るならともかく、どうして女子は他人を着飾らせるのにもあんなに夢中になれるのだろう? 自分が着るわけでもない服やアクセサリーをあんなに楽しそうに悩んだりして……男の俺には一生かかっても理解できそうにない。


 ミニリカもナターシャも、あのリアでさえ服選びやアクセサリー選びはクソ長かった。荷物持ちのことをマジで考えろよって思ったよね。あいつら欲しいものがあるから買いに行くんじゃなくて、欲しいものが無いか見に行くって感じなんだもん。着せあいっことしてないで、予め検討していた欲しいものだけ買ってさっさと帰る方が合理的ってなぜわからんのか。


 そうそう、アリア姐さんに伴いルマルマ壱號もさらにクリスマスエディションに。とりあえず無難にクリスマスリースやクリスマスモールを着けて、ついでにキラキラのお星さまも。ペイントしてリボンとスノーパウダーで仕上げた松ぼっくりオーナメントもつけまくれば、まさにクリスマスの乗り物って感じ。


 『俺もっといっぱい松ぼっくり持ってるし』ってポポルが秘蔵の松ぼっくりを開放してくれて大変助かった。なんであいつあんなに松ぼっくり貯め込んでいたんだろうね?


 クリスマス仕様ルマルマ壱號をアリア姐さんは気に入ってくれたらしい。なんか鼻歌なんか歌ってかなりの上機嫌。乗るのはサンタじゃなくてツリー(?)だし、牽くのはトナカイじゃなくて鳥と犬だけど、なかなかに雰囲気が出ていたと言えよう。


 さっそく、「見せびらかしに行くわよ!」……とでも言わんばかりにアリア姐さんはジオルドの服の裾を引っ張って促す。『散歩の時間だし、悪くないタイミングだな』ってアルテアちゃんもヒナたちをルマルマ壱號に括り付け始めた。「これはもしやお散歩のチャンスでは?」と思い当たったらしいグッドビールも、「へっへっへっへっ!」ってアホ面晒して尾っぽをぶんぶん振りまくってその下へ。


 意外なことに、ウチのちゃっぴぃも『きゅーっ!』ってそこに突撃。こいつが自発的に散歩とかちょっと珍しい。そして『きゅ! きゅ!』ってクリスマス仕様ルマルマ壱號を執拗に指差した。


 『どうする?』ってジオルドがロザリィちゃんに問いかける。『たぶん、乗ってみたくなっちゃったんだと思う。ちょっと狭いかもだけど、アリア姐さん、頼める?』ってにこっと笑って頼むロザリィちゃん。今日も可愛い。最高。素敵。


 が、ここにきて予想外の出来事が。『ほら、乗せてやろう』ってジオルドがちゃっぴぃの脇腹を掴んで抱っこしようとするも、『きゅ! きゅ!』ってちゃっぴぃは抵抗する。じたばたもがいてジオルドの腕からするりと抜け出した。


 『え……』ってジオルドは呆然。まさかここまで露骨に嫌われるとは思っていなかったのだろう。アリア姐さんが慈愛の笑みを浮かべてジオルドの肩を叩いていた。


 しかし、嫌がって逃げた割にはちゃっぴぃはその場から動かない。『きゅん! きゅん!』ってやっぱりルマルマ壱號に固執。『乗りたいんじゃないのか……?』ってジオルドが再度抱っこを試みるも、やっぱり『ふーッ! ふーッ!』ってガチ威嚇。


 『きゅう……! きゅう……!』ってなんかちゃっぴぃは泣きそう。『お、俺もうわかんねえぞこれは……!?』ってこっちに助けを求めてくるジオルド。そして既に輓具(ハーネス)をセット済みで出発をまだかまだかと待ち構えているヒナたちとグッドビール。


 まさかとは思って聞いてみる。『お前まさか、乗りたいんじゃなくて牽きたいのか?』って。


 『きゅん!』ってあいつはすんげえ笑顔。マジかよって思ったよね。


 みんながルマルマ壱號を牽いているのが羨ましくなったのか、それともデコったクリスマスツリーを乗せたソリを牽くことがあいつの中で大きな意味があるのか。単純に、可愛い(?)ものを自分の所有物として見せびらかしたいという気持ちが働いただけ……だと思いたい。


 ともあれ言っても聞かなさそうだったので、ジオルドにちゃっぴぃ用のハーネスの作成を依頼。『いや、出来ないことはないだろうけど……』ってあいつも困惑。俺だってそうだ。


 グッドビール用の予備のそれがあったので、二人がかりでそいつを改造。ついでにルマルマ壱號の取り回しもちゃっぴぃのそれが取り付けられるように修正。作業自体は思った以上に早く終わったので、さっそくちゃっぴぃに念願のハーネスをつけてみる。


 『絵面がヤバいな』、『使い魔に牽かせてるって字面だけなら普通なのにね』ってクラスメイト達からコメントを頂いた。まぁ、どこからどう見ても幼い女の子にハーネス付けてソリを牽かせるという鬼畜強制労働させているようにしか見えないからね。


 とりあえず発進。『きゅぅぅぅん……ッ!』ってあいつは女の子がしちゃいけない顔で気張ってソリを牽き始めた。『ふー……ッ! ふー……ッ!』ってお顔がすんげえしかめっ面。なんかだいぶヤバそげな筋トレしているみたい。


 『へ……変な趣味に目覚めちゃったらどうしよう……!?』って慌てふためくロザリィちゃんがとってもかわいかったです。


 なんだかんだでその後の散歩は順調に終わった。勢いづいてしまえばそこまで力は必要ないってのと、何より既に楽勝でルマルマ壱號を牽けるヒナたちがいる。グッドビールもはしゃぎまくっていたものだから、ちゃっぴぃの力なんてマジでおまけ程度でしかなかったんだよね。


 ついでに言えば、あいつ途中で飽きて(?)空飛んでたし。マジでハーネスの意味無かったんじゃね?


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。なんか今日はいろいろやったけど雑事が多すぎてイマイチ何をしたのか記憶に残っていない。しいて言うなら、ルマルマ壱號を牽くちゃっぴぃを見てギルが『おっ! 今度俺にも貸してもらおうかな!?』ってトンチンカンなことを言っていたくらい。


 いくらちゃっぴぃが子供とは思えない夢魔特有のダイナマイトぼでーをしているとはいえ、単純な数値で言うならばギルの方がよっぽどバストがある。ちゃっぴぃ用に調節されたハーネスじゃ文字通りはち切れるだろう。そもそもなんで使い魔に牽かせる用のソリを自ら牽こうとするのか。筋トレできればなんでもいいのか?


 そんなギルは今日もぐっすりすやすやと大きなイビキをかいている。俺もまだまだ作業があるし、今日はこの辺にしておこう。


 ギルの鼻には松ぼっくりの欠片でも詰めておく。おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 前話感想返しから そういえば 柊……ひいらぎ……ラギ…… 園島……ガーデン……νησιά(ネシア)……ガーデネシア…… うわっなにするやめrくぁwせdrftgyふじこlp キンニキストとし…
[一言] まあ、子どもの癇癪だからなぁ…… 本命:ギルから松の香り 対抗:ギルが茶色い 大穴:ギルの髪が逆毛 (昨日のは微妙に外れ、か?当たり?)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ