表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
259/367

258日目 魔導工学:マジックフライホイールのモデル化

258日目


 ギルの肩に土で出来た角が生えている。触ったらボロって崩れた。しーらないっと。


 ギルを起こし、ちゃっぴぃを肩車して食堂へ。今日も朝から雪が降っていてたいそう寒い。室内だというのに吐く息は白く、そして窓がうっすら凍り付いている。毛布をかぶっていなければマジで凍死するんじゃないかと思わなくもない。


 俺もちゃっぴぃの足というマフラーが無ければだいぶ首元が寒くてヤバかったと思う。何気にあいつ、使い魔としての役割はともかく防寒具としての役割は凄まじいものがある気がする。


 朝飯はあったかオニオンスープをチョイス。あのどっしりとした食感が堪らない。おなかの底からぽっかぽか。定番のいつもの味って本当に止められなくなるから困る。ロザリィちゃんも『おいしーっ♪』って嬉しそうに食べていたっけ。


 ちょっとおもしろいことが一つ。フィルラドが『クッソ寒いなぁ……』ってかじかむ手に息を吐いて温めていたんだけど、それを見ていたアルテアちゃんが『……ちょっと貸せ』っていきなりフィルラドの手を握ったのね。


 で、そのまま自分のポケットにイン。『……こうすれば、結構温かいでしょ?』ってなんか赤くなりながらポケットの中で手をゴソゴソ動かしている。フィルラドのやつ、あまりの事態に固まっていたっけ。


 アルテアちゃん、『ふ、古傷は冷やすと良くないって聞いただけだっ!』って超真っ赤っか。『ホントにぃ?』ってロザリィちゃんがニヤニヤしてからかうも、ぽっけの中でフィルラドの手を握っているため逃げることもできず。ポケットの中でどんなことが起きていたのか、ちょっと知ってみたいこともなかったり。


 なお、そんなことが起きている隣でギルは今日も『うめえうめえ!』ってジャガイモを貪っていた。『ああいうの、ちょっと憧れたりやってもらいたいとか思わない?』って通りすがりのシャンテちゃんに問いかけられたミーシャちゃんは、『そんなことしたらあたしのおててが潰れるの』って冷静に返していた。尤もだと思う。


 今日の授業はテオキマ先生の魔導工学。『邪竜討伐、おつかれさまでした』って声をかけてみれば、『卒研生の穴だらけの卒論を査読するほうがよっぽど大変だよ』と返された。『あんなのほとんど事前の準備で勝負は決まる。上手く嵌めて強力な一撃をブチ当てるだけでいいっていうのに……正直、私らが呼び出される理由がさっぱりわからん』ってコメントが。


 テオキマ先生的に、冒険者のやり方に色々文句を言いたいらしい。『せめて統率の一つくらいはきちんととってくれにゃこっちだって困るんだよなァ……』って眉間の皺がヤバかった。そういうことができないクズだから冒険者にしかなれなかったんだけどね。


 授業内容だけれども、今日は前回に引き続き、マジックフライホイールのモデル化について学んだ。前回までにマジックフライホイールの概要を学んだから、今回は実際の計算を行うためのモデル化の手法、定石についてやっていきましょうってやつね。


 詳細だけれども……


 なんかクソ面倒だからこれについてはここまでにしておく。いや、言葉で説明しようと俺も頑張りはしたけど、全部クソ面倒くさい式かクソ面倒くさい図でしか表現することができない。そんなものこの日記に書くのはふさわしくないし、マデラさんの眼を汚すことになる。


 詳細が知りたければ、何の役にも立たない教科書か、あるいは俺のノートを参考すること。俺のノートの方が、幾許かはわかりやすいと思う。ロザリィちゃんへ個人授業する前にきちんと清書して、内容を整理しておこうっと。


 授業の終わりにて、『来週は学会に参加するから、この授業は自習とする』との通達が。どうやらテオキマ先生、また別の学会に出席するらしい。聴講するだけなのか発表するのかは知らんけど、結構なペースじゃなかろうか。なんかガチで研究の最先端にいるって感じがしてなんとなくすごい……かも?


 『危なかったよ、ホントに。あと少しズレていたら参加でなかった』ってテオキマ先生は言っていた。参加できなかったのは邪竜討伐の方か、それとも学会の方か……ヤバい邪竜を倒すよりも学会参加を優先するなんてことはない……よな?


 最後に『お土産よろしくお願いします』ってお願いしたら、テオキマ先生は一瞬面食らった顔をして『お、おう……』って言ってくれた。やったぜ。


 『あの先生に冗談言えるってホントすごいよね』、『しかも終始真顔だもん』、『お前マジで大物になれるよ。いや、すでに大物だよ』ってクラスメイトからお褒めの言葉を頂いた。照れるぜ。


 夕飯食った後の風呂にて、ゼクトが『入浴剤使っちゃうぜ!』って高らかに宣言。ちょっとお高いらしいそれを贅沢に五つも風呂に投入。しゅわしゅわ感が半端なく、そして乳白色。お湯の匂いに混じって柑橘系の良い香りも。


 『よくやったゼクトぉ!』、『お前今から風呂キングね!』ってみんなからの大声援。『もっと褒めろよお前らぁ!』ってゼクトもご満悦。


 そしてお高いと言うだけあって入浴剤の効き目もばっちり。俺のお肌がちょうすべすべ。心なしツヤも増している気がする。香りにはリラックス効果があるのか、なんとなく落ち着いた気分。


 『俺の筋肉、最高に輝いてるゥ!』ってギルはマッスルポーズを披露しまくっていた。どうやらこの手の入浴剤のお風呂は左大腿筋が好んでいるらしい。『お風呂好きのちょっと照れ屋な筋肉なんだぜ!』ってわざわざ紹介もされた。俺もう頭がどうにかしそう。


 最後の方は男子一同でギルの筋肉鑑賞会を開いていた気がする。『魅力が危険すぎるだろ!』、『封印異物に指定されそう!』、『メデューサに睨まれてもここまで硬くならないぞ!』って大盛況。ヤケクソだったともいう。


 みんなが盛り上がっていたのに、ラフォイドルだけは端っこの方で静かに湯を楽しんでいた。『ふうー……っ』ってたいそう心地よさそう。


 仲間外れは可哀想だったので特別に目の前でギルにポージングしてもらったら、なぜか俺がガチギレされた。ひどい。


 風呂上がりの雑談にて、『あっ、なんか良い匂いするー!』って湯上りほかほかロザリィちゃんが俺に抱き着いてきた。うっひょう。


 で、ロザリィちゃんってば全力ですーはーすーはーくんかくんかしまくってきた。『ほほお……たまにはこういうのもいいですなぁ……!』ってうっとりした表情。なんか妙な色気があって心臓がドキドキしまくりんぐ。『……ドキドキしてるの、こっちまで聞こえてるんですけど?』って胸のあたりを小突かれて、さらにドキドキしまくってしまった。


 というか、俺以上にロザリィちゃんから良い匂いがしてヤバい。『女子も入浴剤使ってたの?』って聞いてみれば、『今日は使ってないけど……?』ってきょとんとした顔で返された。あれが素とか、ロザリィちゃんはもしかして上等な香水でできているのではあるまいか。


 気になることが一つ。『今なら悪魔王でも倒せる気がする』、『俺も』ってクーラスとジオルドの表情が大変ヤバいことになっていた。タイミング悪く、近くでアルテアちゃんとフィルラドがイチャついて(?)いたし、ギルもミーシャちゃんを肩車してイチャついて(?)いたんだよね。パレッタちゃんも、ポポルのおこちゃまぷにぷにおなかをたぷたぷして、『おっほ……すごい柔らかさなり……!』って遊んでいたし。


 普通に頼めば女子の一人や二人くらいとイチャつけると思うんだけど。現に、何人か所在なさげにお膝をぽんぽんしていたし。『だ、男子から良い匂いがするのって……思った以上に”持って”いかれるわね……!』って赤くなってクラクラしている子も結構いたのにね。


 何より、アリア姐さんが満面の笑みで腕を開いていたっていう。少なくとも主であるジオルドはあれに気づいてあげなきゃいけなかった。あまりにもアリア姐さんが不憫だからって、うちのちゃっぴぃが『きゅーっ!』って抱かれに行っちゃったくらい。単純に抱きしめてほしかっただけだろうけど。


 ギルは今日も大きなイビキをかいている。コイツからも一応入浴剤の良い匂いがするんだけど、なんか違和感が凄まじいのはなぜだろう。ギルからギル臭さがしないだなんて、なんか新手の悪魔に騙されている気がしてならない。


 ギルの鼻には……左穴に石鹸の欠片、右穴にオレンジピールを詰めておく。上手く入浴剤になってくれるといいなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] あー、ダメだ。欲が出た 俺たちのオステル先輩以外は狙ったような反応は出ないのに…… 物欲センサーが仕事するなコレは
[一言] ウチの研究室の教授もよく色んな学会行ってますね〜 というか、半年で授業3回は補講してたような? 本命:トイレへボッシュート 対抗:風呂が爆発する入浴剤完成 大穴:普通の入浴剤完成
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ